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そこなき愛情

祖父へ向けたお話です #妄想なので、ご注意ください
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ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story①】 「私の許可なく、勝手に遠くに行ったらあかんよ?」 そう約束したのに… 貴方はもう、ここには居ない ___ 初めて会ったのは一体いつだろう 「今日も暑いなぁ」 厳しい日差しの中 小さな子供を背負い、いつものように畑を耕す

2015-03-13 12:29:58
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story②】 『こんにちは!』 汗を拭い顔を上げると、一人の青年が立っていた 「隆ちゃん、こんにちは」 最近良くこの時間に立ち寄る彼 『今日も1人で頑張ってんねんな』 他愛もない会話が 「私の仕事やもん 笑」 いつの間にか楽しみになっていた

2015-03-13 12:30:03
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story③】 『たまには休まなあかんよ?』 私より歳上の彼 『いくらお母ちゃんやいうても、まだ17やんか』 早くに結婚・出産した私 「やっぱり私頼りないんかな?笑」 共通点はほとんどない 『そんなことないけど…旦那さんと上手くやれてるん?』

2015-03-13 12:30:07
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story④】 だけど心配してくれてる彼の優しさに、いつも心が軽くなる 「お父ちゃん、仕事忙しいみたいやわ 笑」 朝早くに出て行って、夜遅くに帰ってくる主人と顔を合わす時間は短い 『そっか…しんどなったら言うんやで?』 「いつもありがとうね、隆ちゃん」

2015-03-13 12:30:10
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑤】 ギュッと手を握って 『じゃあ、また明日』 立ち去っていく 友達の様な関係のまま過ぎていく日々 「行ってらっしゃい!」 大きくなった2人の男の子と1人の女の子 「お母ちゃん、行ってきまーす!」 学校に向かう背中を見送る

2015-03-13 12:30:14
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑥】 「さぁ、今日も頑張らなきゃ」 畑仕事の用意をして田んぼに向かうと 『今日も気合い入ってんなぁ 笑』 すでに彼が居た 「隆ちゃん、早いね 笑」 毎日の家事や畑仕事 『なぁ、大丈夫なん?』 主人が手伝ってくれる事はなく溜まる疲労

2015-03-13 12:30:19
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑦】 「大丈夫やって 笑」 頑張っていれば、きっと振り返ってくれだろうから 『それならええんやけど… あ、今日な、これ持ってきてん!』 手渡されたおかずの入った包み 『お裾分け♪』 「ありがとう!晩ご飯に戴くね」

2015-03-13 12:30:23
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑧】 彼と別れて、畑仕事して、子供たちを迎えて 「今日も遅いんかなぁ…」 時計の針は12時をまわっていた 「お帰りなさい」 『ただいま』 素っ気なく返された返事 「晩ご飯は?」 『食べてきた』 脱いだ上着を渡すと、寝室に向かってしまう

2015-03-13 12:30:27
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑨】 「これ…」 ほんのりと上着から漂ってきた見知らぬ香りと、ポケットに入っていた女物のアクセサリー 「…浮気…?」 見ないふりをしていたけれど、何となく…ずっと感じていたこと… 「…っ!」 実際に突きつけられた現実は、思っていたより辛い

2015-03-13 12:30:30
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑩】 「…っく、うぅ…っ」 溢れ出る涙が頬を伝う 居間で1人朝を迎え、主人と顔を合わさないようにそっと家を出る 『…おはよ』 畑の前に佇む影 「隆、ちゃん…」 居ると思ってなかった人が、そこに居た 『…出て行くん?』

2015-03-13 12:30:34
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑪】 私の傍に歩みよる彼 『子供らはええの…?』 「あの子達は、もう大丈夫やもん 笑 一番の下の子は、隆ちゃんと出会った時の私の年齢になったし」 力なく笑う私の手を握り 『それやったら…俺と一緒に行かへん?』 真っ直ぐな視線を向けられる

2015-03-13 12:30:39
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑫】 「え…?」 『俺…転勤になってん 家を出るんやったら…俺と一緒に行こうや』 突然の事で頭が回らない 『ずっと…好きやってん』 何年も傍で励ましてくれていた 『駆け落ち…しよ?』 そんな彼からの告白 「私なんかで、ええの…?」

2015-03-13 12:30:44
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑬】 きっと私も気付かないうちに 『君やないと、あかんねん』 彼に恋していたのかもしれない 「…連れてって?」 嬉しいって思ってしまったんだから 『…じゃあ行こっ』 彼についていこう、そう決めて2人歩き出す

2015-03-13 12:30:47
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑭】 あれから月日が流れ 主人の会社が倒産したことを知る 借金の取り立てに息を潜める日々だった子供たち 主人は浮気相手と家を出て、成人した子供たちも社会へと出ていく その頃から、また子供たちと連絡を取り合う様になった

2015-03-13 12:30:50
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑮】 結婚の報告をもらい 『その男、ホンマに大丈夫なんやろうな?』 家に連れてくるという娘に 『お前が大丈夫や言うんやったら…』 何度も信用出来る人かを確かめる彼 「この子が決めたことなんやから、認めてあげなね」 例え血が繋がってなくても

2015-03-13 12:30:54
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑯】 『分かった…連れて来ぃや』 自分の子供として接してくれて 『娘を頼むわ…』 父親として相手の男性にも頭を下げ 「ほら、そないに泣かんでも 笑」 式当日には号泣してしまっていた 『産まれたかっ!』 孫が出来ると嬉しそうに抱きかかえ

2015-03-13 12:30:57
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑰】 『ホンマ可愛ええな…』 初めての内孫に顔を緩める 「おじいさん、構い過ぎやわ 笑」 2年後に二人目の孫が出来 『ええやん、こんな可愛ええ子他に居らんわ』 孫娘たちを甘々に可愛がっていた 『誰やっ!この子ら泣かすやつはっ!』

2015-03-13 12:31:01
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑱】 孫娘たちに何かあると飛んでいって 『テレビ見ながらご飯食べたらあかんっ!』 マナーは厳しく教え 『今日泊まってくか?』 変なところで寂しがり屋 『俺、もうあかんわ…』 孫娘の妊娠中 『探さんといてな…』

2015-03-13 12:31:10
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑲】 病気や経済面が上手くいかず、意気消沈して行方をくらましたこともあった 『最後にお前に会いたかってん』 孫娘に会いに行った彼を、孫娘が引き止めてくおかげで失わずに済んだ 『やっぱりこの子が産んだ子は可愛ええなぁ』

2015-03-13 12:31:18
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story⑳】 孫娘の結婚式は見れなかったけれど、ひ孫の顔を見れたこと 『生きてて良かったわ』 また生きていく楽しみが出来た日 『あの子らいつ来るん?』 ひ孫たちが遊びに来る日を心待ちにして 『おじいちゃんとお散歩しよか』 来た時は笑顔が絶えず

2015-03-13 12:31:21
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story 21】 『もぉ、知らんっ』 たまに、ひ孫と本気で喧嘩をする 「おじいさん、大丈夫?」 病気が段々と元気を奪い 「甘いもんは身体に良くないから、我慢しよな?」 好きな物を食べる機会を減らし 「また家に帰れる様に頑張ろね」

2015-03-13 12:31:24
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story 22】 大好きな家からも引き離した 「そんなん付けなくてもいいです…」 自分で呼吸することも出来なくなって、勧められた人口呼吸器 『家に帰れるんやったら…付けたい』 声を失うことよりも、家に帰ることを願っていた

2015-03-13 12:31:26
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story 23】 「おじいさん、私の許可なく勝手に遠い所に行ったらあかんよ?」 手術前にかけた言葉に、しっかりと頷いた彼 「お疲れさんやったね」 無事に手術が終わり 口を塞いでいたチューブがなくなった 「そんなに嬉しいの 笑」

2015-03-13 12:31:29
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story 24】 満面の笑みで大きく口を開け、何も塞ぐものがなくなった口内を見せてくれる 「これで家に帰れるなぁ」 そっと腕を撫で 「また明日くるからね」 頷くのを確認してから帰宅した 「はい、もしもし」 お風呂を準備していた時に掛かってきた電話

2015-03-13 12:31:32
ゆずなぎ @yuzukinagi_you

【ryuuhei story 25】 「っ!今すぐ行きますっ!」 容態が変わった、その言葉に鍵をかけるのも電気を消すのも忘れて駆け付けた 「隆ちゃんっっ!」 口から泡を吹いてベッドに横たわる彼 「勝手に遠い所行ったらあかんって言うたやん…っ」

2015-03-13 12:31:34