架空戦記「反反三国志」の感想まとめ

佐藤ひろお @Hiro_satoh さんが昨年のイベントで頒布した同人誌「反反三国志」がなかなか面白かったので、今さらながら感想をまとめました。
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紫電P @sidenp

なお、みんな大好き爆殺の犠牲者は司馬師一人のみだし、黄夫人は空を飛ばない。馬超は漢中攻防戦の後に劉備軍を離脱するので、華歆を焼肉にしないどころかそもそも大して活躍しない。なので某反三国志好きの方は大いに不満だと思う。仕方ないね。

2016-03-15 00:50:16
紫電P @sidenp

◇感想後半 外交戦や謀略戦については十分だと思う。ただ、コンセプトが反三国志のパロディーかつ「蜀ファンが最もスカッとする物語」ということを考えれば、不満点、疑問点も少なくない。総評としては面白いという前提を強調した上で、あえてそこを指摘してみる。

2016-03-17 01:40:17
紫電P @sidenp

まず、戦争が荊州攻防を除いてダイジェスト風味であまりワクワクしない。佐藤さん自身は戦争の描写は苦手と明言していたはずだが、特に魏が220年以降、三路・十路の遠征を計画しながら結局ほとん討蜀軍を動かせずに北伐を受けて滅んでしまうなど、小手先の策ばかり弄していた印象が残ってしまう。

2016-03-17 01:43:10

ほとん→ほとんど

紫電P @sidenp

架空戦記の戦闘面における醍醐味は「あいつが生き延びてあの戦いに出たら」「あの戦いにオールスターが揃ったら」「史実ではなかった対決、あるいは夢のタッグ」などがあるだろう。私はこの三点を徹底して意識して戦闘シーンを考えた。五虎将揃い踏みはできなかったが、張趙馬黄魏+α対ボスはやれた

2016-03-17 01:44:36
紫電P @sidenp

反三国志ベースの蜀視点なら、三兄弟再会や五虎将の揃い踏みと魏のオールスターの対決が該当するだろうか。残念ながらそれはなく、どう料理するか問われる馬超は曹操没後の220年にあっさりフェードアウトしてしまう。黄忠も途中退場だがあれは許容範囲か。五虎将で唯一戦死・負傷引退が許されるし。

2016-03-17 01:45:28
紫電P @sidenp

必要だったのは、中盤過ぎに魏の大攻勢からの蜀軍オールスターによる返り討ちだろう。例えば曹真の蜀攻めや駱谷の役の強化版だとか。また、魏延の長安急襲や成長した馬謖による街亭死守もシーンもある。これもIFの定番だが、肝心の長安攻めがダイジェストなので今ひとつカタルシスがない。

2016-03-17 01:47:07
紫電P @sidenp

曹丕八十歳でもそうだったが、強烈なKOパンチの打ち合いができる大勢力の魏が、ちまちま謀略・計略というジャブ「しか」打たないのは読者にフラストレーションを与えてしまうだろう。ボクシング漫画で例えるなら、ファンが一度は見たいのは一歩vs千堂のような戦いだ。スカッとしたいのだ。

2016-03-17 01:47:51
紫電P @sidenp

戦争とはやや離れるが、もったいないのは曹操の死の場面が明確に描かれなかったこと。原作でもまあアレだが、曹操と劉備の死というのは作者の腕の見せ所である。後者はある意味で劉備が劉協に殺される形で描いたが、「歴史が狂った世界」で曹操がどう死を迎えるのかが見たかった。

2016-03-17 01:48:29
紫電P @sidenp

これに関しては「おめーもすっ飛ばしただろ」と言われるので、完結一周年の5月下旬をめどにそういうものを出してあのシリーズ関連を打ち止めにしたいと思う。

2016-03-17 01:48:44
紫電P @sidenp

作中ではたびたび「歴史の流れが狂っている」というニュアンスの発言を各国の軍師たちが口にする。これは特定の誰かが1、2回言うならまだしも、何度も出てきてやや首をかしげた。こういう台詞は、歴史を知っている人間の介入があると認知してはじめて出てくるものだと思う。神視点がないならば。

2016-03-17 01:49:49
紫電P @sidenp

もう一つは、蜀が勝ち進むことにより、劉備の例の遺言のせいで簒奪リスクが拡大し続ける諸葛亮のジレンマについて。後半のテーマの一つだった。劉禅が病弱なため、史実でも仕掛け人をやった李厳を軸に、それに従った蜀の幕僚グループらが諸葛亮に「君、自ら取るべし」の実行を迫るのだが……。

2016-03-17 01:50:34
紫電P @sidenp

史実の230年ごろと違い、この世界線では関羽・張飛(と趙雲)が健在である。徐庶もいる。夷陵に相当する呉との戦いで大功を挙げた黄権も、晩年の劉備の近くにいた。李厳の地位は史実で諸葛亮に九錫・王位を勧めた時よりかなり軽いのだ。

2016-03-17 01:51:26
紫電P @sidenp

尚書令として劉禅を連れてきて託孤の臣になるのはまだしも、劉禅が病気がち(後に統一前に死去)とはいえ、関張の両翼健在の段階で劉氏からの簒奪を迫るのは自殺志願者のように見えてしまう。ちなみに別方面で戦っていたため、最後まで生き残る関張はこの運動についてリアクションはない。

2016-03-17 01:52:04
紫電P @sidenp

せめて馬超と同じく早々にフェードアウトさせた法正が仕掛け人なら、格や巧みさの面でまだ納得できたのではなかろうか。彼なら劉氏ではなく劉備個人に忠誠を誓っていたという理屈も通るし、徐庶の活躍で寿命が延びたとかで死なずに済むことができた。

2016-03-17 01:52:57
紫電P @sidenp

また、他の方も指摘されたとおり、ページ数に対して登場人物が多すぎたのか引っ張った割りに出番がいまいちという人物もいる。曹丕の野望を長く阻止した楊修は関羽に一喝されて終わり(楊氏は外戚として残る)だったが、せっかく生き延びたのだからもう少しその思想や視点が欲しかった。

2016-03-17 01:53:42
紫電P @sidenp

個人的には、もう100ページくらいあったら駆け足にならず、戦も充実させられてもっと綺麗に畳めたかなーとは思う。1100ページというのはキリが悪いが。

2016-03-17 01:54:09
紫電P @sidenp

とはいえ、架空戦記という良くも悪くも荒唐無稽さは曹丕八十歳の方があるにしても、フラストレーションの溜まりにくさ、物語の巧緻さという意味では今作の方が上だと思う。ただ、これだけ書けるのだから反三国志の枠を取っ払ったIFが見てみたくもあった。

2016-03-17 01:55:45
紫電P @sidenp

ちなみに反三国志の特徴である、現代政治や軍閥、旧弊や過去の政治などへの批判要素はない。動機だけあって原作のそれはやたらとくどい代物だが、あれがあってこそ反三国志という声もある。ただ、そこまでトレースして中国ないし日本の政治と絡めると可燃性が増すのでそれは簡単ではないだろう。

2016-03-17 01:57:06
紫電P @sidenp

とりあえず一区切り。面白かったからこそ感想も疑問点も長く書ける。後漢流離譚視聴者だと、感想で私がだいたい何を言いたかったかわかるはず。

2016-03-17 01:57:59

コアなファンなら、再販時に買うチャンスがあったら買って損はしないと思います。作者との個人通販に抵抗ある人も多いので、少数部で難しいとはいえ委託などがあるとなお良いんでしょうが。