『トライ・トゥ・ホールド・オン・タイト』#1

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ジュセー @shiroboshi2

『トライ・トゥ・ホールド・オン・タイト』 #S57Ninja

2016-03-18 21:28:49
ジュセー @shiroboshi2

重金属酸性雨が降りしきるネオサイタマ。喧騒の声やサイレンの音、欺瞞に満ちた広告音声、ネオンの光……そうしたものから隠れるようにして、周囲を鉄柵や塀で囲んだ奇妙な一帯があった。一般人は無論、アナーキーであってもそこには近づかない。1 #S57Ninja

2016-03-18 21:37:37
ジュセー @shiroboshi2

塀の内部には幾つものボロ屋と、東西南北に設置された櫓がある。それぞれの見張り番は退屈そうに……だがその双眸はいずれもギラついている……塀の外の世界を睨みつけている。この奇妙な一帯の名は『アナゾコ・イワト』。社会からドロップアウトした者達の集まりだ。2 #S57Ninja

2016-03-18 21:43:19
ジュセー @shiroboshi2

元々はソウカイヤ健在の時期に生まれたものだった。当時はマンホールの下、廃棄された地下下水路に住処を作りマッポや暗殺者から逃れる、ごくごく小さなコミュニティであった。だが年月と共にその規模は大きく膨れ上がっていった。今では一街ほどの大きさとなっている。3 #S57Ninja

2016-03-18 21:50:26
ジュセー @shiroboshi2

「ファーア……」東の櫓に待機しているミガタが欠伸を漏らす。アナゾコ・イワトの成立に、当然政府は関わっていない。そのため、制圧部隊がいつ来てもおかしくない。実際何度かそういった事態があり、それをニンジャが……然り、アウトローのニンジャだ……が撃退してきた。4 #S57Ninja

2016-03-18 22:01:15
ジュセー @shiroboshi2

「オーイ、交代だ。降りてこいよ」下から聞こえてくる女の声に、ミガタは身体を強張らせた。「アッハイ、今すぐ!」彼は慌てて身支度を整え、梯子を下りていく。それを下から見上げていた女が跳躍し、梯子を使わずに櫓を登っていく。彼女の名はファルカタ。ニンジャである。5 #S57Ninja

2016-03-18 22:15:03
ジュセー @shiroboshi2

「フゥーッ……」頂上部にたどり着くと、ファルカタは一度眼を閉じ、息を吐いた。そしてキッと眼を開き、外の世界を睨みつけた。決戦の日は近い。「アー、やだやだ……めんどくさいのはさ」紫のメッシュが入った髪を弄りながら、気怠そうに言う。6 #S57Ninja

2016-03-18 22:26:34
ジュセー @shiroboshi2

数時間前。アナゾコ・イワト中心部。元々はバーであった建物。室内にはチカチカとした照明。「……集まったな」小柄な男が、席に座る六人のニンジャを見渡しながら、声を発する。ニンジャ達は無言だ。小柄なニンジャは数秒の間をおいたあと、机にマキモノを置いた。8 #S57Ninja

2016-03-18 22:51:38
ジュセー @shiroboshi2

「そりゃなんだい、トログロダイト=サン」ファルカタがマキモノを見ながら問う。トログロダイトと呼ばれた小柄なニンジャは彼女を、そして他のニンジャの顔をもう一度見渡した。「降伏勧告……のようなものだ。アマクダリ・セクトからのな」9 #S57Ninja

2016-03-18 23:00:17
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

トログロダイト、ゴブサタだ。やはりニンジャが集まっているとアマクダリに目をつけられやすい #S57Ninja

2016-03-18 23:01:18
ジュセー @shiroboshi2

トログロダイトが言い終えると、室内に張り詰めたアトモスフィアが充満した。「……それは。また。難儀な。ことだ」メタルスネイルが荒々しい息を吐きながら声を発する。その隣でオウルベアが腕組みをしながら何度か頷いた。「それで?どうするんだい」ファルカタが言う。10 #S57Ninja

2016-03-18 23:05:32
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

メタルスネイル、オウルベア、ファルカタ。三名のニンジャの名が出たぞ #S57Ninja

2016-03-18 23:06:31
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

キーンタスク、カームクロウ……名前が出ていないのはあと一人か? #S57Ninja

2016-03-18 23:13:04
ジュセー @shiroboshi2

「それは無論、抗戦であろう!」キーンタスクが机を叩き、大声を出した。その隣でカームクロウはウンザリとした顔をし、耳を抑えながら、口を開いた。「……私としては抵抗をしたいと思います。相手の戦力がどれほどかはわかりませんが」11 #S57Ninja

2016-03-18 23:13:30
ジュセー @shiroboshi2

直後、カームクロウの言葉にかぶさるようにしてストロングジョーが叫んだ。「殺す!殺す!殺せばいい!」「……」トログロダイトは俯き、思案した。アナゾコ・イワトには彼を含めると、ニンジャが七人いる。ニンジャ戦力には問題ない。「……七人か」「アン?」12 #S57Ninja

2016-03-18 23:22:19
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

ストロングジョーの脳まで筋肉感すげえな #S57Ninja

2016-03-18 23:22:55
ジュセー @shiroboshi2

感嘆としたトログロダイトの声に、ファルカタは片眉を吊り上げる。トログロダイトはどこか遠い眼をしながら口を開く。「元々、アナゾコ・イワトにニンジャは一人だった。俺だけだった。まぁ、ほんの僅かな期間、ニンジャが二人になったことがあったがな」13 #S57Ninja

2016-03-18 23:27:24
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

ミリピード……それはそれとしてずいぶん増えたものだ #S57Ninja

2016-03-18 23:27:50
ジュセー @shiroboshi2

「なんだ。昔話。か」メタルスネイルは相変わらず荒々しい息を吐いている。構わずトログロダイトは続ける。「いけすかねぇ小娘だったよ、そのニンジャは。ケリが得意で」「アー、トログロダイト=サン。その話長くなりそうですか?」カームクロウが割り込む。14 #S57Ninja

2016-03-18 23:31:42
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

トログロダイト、いまいち尊敬されてないのか率直にものを言われるくらい親しまれているのか #S57Ninja

2016-03-18 23:32:38
ジュセー @shiroboshi2

「ムッ……すまんな。話を戻そう」「それがよい」オウルベアが頷く。トログロダイトは言葉を紡いだ。「俺はこの勧告には屈さない。ただ」「ただ!?」「ただ、なんだ!」ストロングジョーとキーンタスクが涎を飛び散らしながら叫ぶ。カームクロウは露骨に嫌そうな顔をした。15 #S57Ninja

2016-03-18 23:39:02