『アバウト・トゥ・エクスプロード』#1

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ジュセー @shiroboshi2

『アバウト・トゥ・エクスプロード』 #S57Ninja

2015-08-15 13:47:59
ジュセー @shiroboshi2

POW POW……POW POW……サイレンが鳴り響く。ビルから照射されるネオン光が、重く冷たい夜を毒々しく彩る。通りを歩く人々は皆、色の無い顔をしている。重金属酸性雨の降り注ぐ中を、レインコートや傘で身を隠し。ここは、ネオサイタマ。眠らない街。1 #S57Ninja

2015-08-15 13:54:36
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

サイレンとは……火事でもあったか? #S57Ninja

2015-08-15 13:54:59
ジュセー @shiroboshi2

通りを歩く人々の頭上では、マグロ・ツェッペリンが大音量で広告音声を垂れ流している。『今が安いです!購入を重点!』大半の人々はイヤホンやヘッドホンなどで、その広告音声を耳に入れない努力をしていた。それらをしていない者たちも、広告音声には全く耳を貸していない。2 #S57Ninja

2015-08-15 13:59:48
ジュセー @shiroboshi2

だが一人だけ。一人だけ、周囲と違って、ウンザリとした顔をしていた。PVCレインコートを羽織った少女だ。「……うるさいですよね」彼女は虚空に向かって呟く。当然、周囲の人々は何の反応も示さない。彼女は重い足取りで歩き続ける。「……それに、人が邪魔です……」3 #S57Ninja

2015-08-15 14:03:32
ジュセー @shiroboshi2

少女は人々の合間を縫うようにして進み、通りを抜けると、路地裏へと入っていった。あれほど騒々しく、色に溢れた街並みとはかけ離れた世界がそこにはあった。光といえば、表の通りから漏れ出る光と、壊れた電子看板の散らす火花だけだ。彼女は路地裏を真っ直ぐに進んでいく。4 #S57Ninja

2015-08-15 14:06:56
ジュセー @shiroboshi2

「待て。そこの者」声。少女は顔を上げた。そこら中に破損があり、人の気配がないバーの屋根に、人影。影は言う。「山を渡らせぬ」そして少女の言葉を待った。少女は答える。「……サンズ・リバーを渡らせようか」静寂が訪れた。やがて影は跳び、少女の前に着地した。5 #S57Ninja

2015-08-15 14:13:48
ジュセー @shiroboshi2

そしてアイサツをした。「ドーモ、はじめまして。トログロダイトです」少女はアイサツを返す。「ドーモ、トログロダイト=サン。ミリピードです」「……これは驚いた。ニンジャか、お前は」トログロダイトは興味深そうにミリピードを見た。彼女は言った。「ええ、ニンジャです」6 #S57Ninja

2015-08-15 14:20:31
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

トロクロダイト……ムテキ使いかな #S57Ninja

2015-08-15 14:21:36
ジュセー @shiroboshi2

ミリピードもまた、トログロダイトを見つめる。筋肉質だが背は低く、ミリピードより少し高いぐらいだ。5フィートほど、であろうか。黄土色の装束、トカゲじみたメンポ。この者がニンジャであることは疑いようがない。「ではお前も、何か厄介ごとを抱えているのだな」「はい」7 #S57Ninja

2015-08-15 14:25:02
ジュセー @shiroboshi2

トログロダイトはミリピードに背を向け、マンホールを開けた。そして手招きする。ミリピードは従い、彼と共にマンホールを降りた。「ネオサイタマではこういう、穴ぐらってもんがたくさんある……行き着くのは厄介ごとを抱えた奴ばかりさ」「そうでしょうね」「そうだ」8 #S57Ninja

2015-08-15 14:27:54
ジュセー @shiroboshi2

数分後。『アナゾコ・イワト』と書かれた看板が立てかけられた大穴の前に、彼らはいた。「快適とは言えないが」トログロダイトは苦笑しながらその穴へ入っていく。ミリピードはそれに続く。「ところでお前は、何やらかしたんだ」「ソウカイヤに目をつけられました」「……ワオ」9 #S57Ninja

2015-08-15 14:33:02
ジュセー @shiroboshi2

トログロダイトはわざとらしく驚いた。「ソウカイヤ。はっ、ここの奴らで一番の問題児だぜ、お前。何やらかしたんだ」「ニンジャになりました」「……アー?……まぁ……いい」トログロダイトは何かを察し、話を止めた。ミリピードのアトモスフィアに独特な物を感じたからだ。10 #S57Ninja

2015-08-15 14:40:42
ジュセー @shiroboshi2

「さっきも襲撃を受けて。なんとか逃げ切りました」「……尾けられてないよな」「大丈夫だと思います」……彼らが進む『アナゾコ・イワト』は、ミリピードの目的地であった。逃避行を続けるうちに耳に入れた、良い潜伏場所。「もし尾けられていても、殺せばいいだけですし」11 #S57Ninja

2015-08-15 14:47:33
ジュセー @shiroboshi2

「そういう問題でもないだろ」「そうでしょうか」「……」二人は進み、そして広い空間に出た。五体不満足のヤクザや、焦点のあっておらぬZBR中毒者など、不穏なアトモスフィアを漂わせる者たちが各々テリトリーを築いている。彼らはミリピードを見ても、何の反応もしない。12 #S57Ninja

2015-08-15 14:54:17
ジュセー @shiroboshi2

「こんな感じだ。自分から喧嘩ふっかけない限りは、何も問題は起きないさ」「わかりました。ありがとうございます」ミリピードは周囲を見渡した。五体不満足ヤクザの両隣が空いている。彼女はそこに歩き、ヤクザの右隣に座ると、テリトリー作りを始めた。ヤクザは無言である。13 #S57Ninja

2015-08-15 15:02:24