『ハピネス・ディペンズ・アポーン・アワセルヴ』

ミリピード編。短編な。
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ジュセー @shiroboshi2

『ハピネス・ディペンズ・アポーン・アワセルヴ』 #S57Ninja

2015-08-06 19:35:36
ジュセー @shiroboshi2

……「ノノミ=サン、これ食べてみてよ!」……「ワースゴーイ!食べちゃった!ウェー」……「何その目?何か文句あるわけ?」……「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」……「アバーッ!ゆるし」…………「ドーモ、はじめまして。アソシエーテです」……。 1 #S57Ninja

2015-08-06 19:40:51
ジュセー @shiroboshi2

……アケシ・ノノミは、ミリピードは、目を開けた。『終焉が近いです』『宇宙とわれわれ』などと書かれた看板が壁にコラージュめいて打ち付けられた高層ビルの屋上に彼女は居た。アグラ・メディテーションを終えたのだ。神秘的な時間であった。本能的な回復手段であった。 2 #S57Ninja

2015-08-06 19:45:09
ジュセー @shiroboshi2

ミリピードは隣に無造作に置いたスシパックを開き、合成スシを無心で口に運ぶ。「……味がわからないですね。これは美味しいのでしょうか?それとも、不味い?」彼女は虚空に語りかける。その声は、吹きゆく風に乗って消えていってしまいそうだ。彼女はスシを咀嚼する。 3 #S57Ninja

2015-08-06 19:49:52
ジュセー @shiroboshi2

以前から独り言の多い彼女であったが、ニンジャとなってからは更に多くなっている。当然、彼女に宿ったニンジャソウルは他の例に漏れず、溶けきっており。意思はない。それでも、ミリピードにとってニンジャソウルは、ヤスデ・ニンジャは、唯一の身近な存在だった。 4 #S57Ninja

2015-08-06 19:54:02
ジュセー @shiroboshi2

「ドーモ……カッカッカ……ヤスデ・ニンジャです……解放だ。私は貴様になり、貴様は私になるのだ」数えきれぬほどの脚を持ち、異臭を放っていた異形のニンジャ。嗄れた声は、老婆のようだったことを、ミリピードは記憶している。フシギな空間での、ゼンめいた出来事であった。5 #S57Ninja

2015-08-06 19:58:48
ジュセー @shiroboshi2

スシを無心で食べ続けるミリピード。驚くほどに体力が回復していく。「合成スシじゃなければ、どれほどになるんでしょうか」彼女は食べ続けながら、ニンジャとなったあの日の出来事を繰り返し繰り返し、頭の中で再生させていた。ジョック達。アーマンド。ソウカイヤ。そして。 6 #S57Ninja

2015-08-06 20:02:49
ジュセー @shiroboshi2

「ドーモ、はじめまして。アソシエーテです」……あの男の声が頭の中を揺らす。ミリピードは片手でスシを口に運びながら、もう片方の手で頭を抑えた。あれが、ソウカイヤのニンジャなのだ。最初に戦ったソウカイヤのニンジャ、アーマンドより何枚も上手のニンジャ。 7 #S57Ninja

2015-08-06 20:05:45
ジュセー @shiroboshi2

「……コワイ……ですね、少し」彼女はスシに手を伸ばした。何もない。ゆっくりとスシパックへと視線を向ける。空っぽだ。ミリピードは空のスシパックを投げ落とした。それは真っ逆様に地上へと堕ちていく。彼女はその様を無感情な目で見つめていた。空っぽのスシパックを。 8 #S57Ninja

2015-08-06 20:10:05
ジュセー @shiroboshi2

真っ逆様に地上へと堕ちていくスシパックは、みるみるうちに小さく小さくなっていった。ニンジャ視力は、それが完全に地上に堕ちるまでをしっかりと捉えていた。歩く人々は空から落ち来たスシパックに何ら注意を持たぬ。一人のサラリマンの頭部にそれが当たった。 9 #S57Ninja

2015-08-06 20:14:55
ジュセー @shiroboshi2

かなりの高度から落ちたそれは並々ならぬ衝撃をサラリマンの頭部に与えたようで、彼は即座に蹲った。だが、そんな彼を見る者は誰一人として居ない。声を掛ける者など、当然いない。ここはネオサイタマ。閉塞的な個人たちが、個人として集まり、形式的な社会を営む都市。 10 #S57Ninja

2015-08-06 20:18:26
ジュセー @shiroboshi2

ミリピードは立ち上がった。PVCレインコートに身を包み、猫背気味で、その上独り言の多い彼女の姿は、見る者に不気味な印象を与えるだろう。彼女は俯きながら、屋上出入り口へ向かおうとした。その時。「「スッゾコラー!」」クローンヤクザが扉を突き破って現れたのだ! 11 #S57Ninja

2015-08-06 20:22:13
ジュセー @shiroboshi2

「……面倒ですよね、あなたたち。みんな一緒の身体と顔、声。私、嫌いです」ミリピードは言い、手にクナイ・ダートを精製した。「「ザッケンナコラー!」」クローンヤクザの一斉銃撃。「イヤーッ!」ミリピードはこれを鬱陶しそうに回避すると、クナイを投擲した。 12 #S57Ninja

2015-08-06 20:26:12
ジュセー @shiroboshi2

「イヤーッ!」更に投擲。「イヤーッ!」投擲。「イヤーッ!」投擲。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」投擲!「「アババーッ!!」」ナムサン!クローンヤクザ全滅!ミリピードは溜息を吐き、破られた扉を抜けて下階に降りようとした。「イヤーッ!」「ンアーッ!?」 13 #S57Ninja

2015-08-06 20:31:48
ジュセー @shiroboshi2

ミリピードは咄嗟に腕を前でクロス字にし、防御姿勢を取った。その腕に巻きつくロープ。そのロープを放った主は、ミリピードを危険な目つきで睨みあげる!「ドーモ、胡乱な野良ニンジャ=サン……クリミナーレです!」「ドーモ、クリミナーレ=サン。ミリピードです」 14 #S57Ninja

2015-08-06 20:35:31
ジュセー @shiroboshi2

ミリピードはクリミナーレを侮蔑的な目で見下ろし、苦しげにオジギをした。彼女の腕に尋常ではない圧力で巻きつくロープ。「っかーはっはっは!女のニンジャ、それも少女とは……っ珍しい!捕らえて俺様の舎弟にしてやろう。色々と楽しめるでなァ!」「……お断りします」 15 #S57Ninja

2015-08-06 20:39:59
ジュセー @shiroboshi2

答えながらミリピードは、クリミナーレのトレンチコートじみたニンジャ装束に刻まれたクロスカタナのエンブレムを注視していた。ソウカイヤのニンジャ。「存外踏ん張りおるわ!だがこのニンジャロープはカラテ精製よ!それに俺様のカラテが加わり性能は実際三倍にもなる!」 16 #S57Ninja

2015-08-06 20:47:47
ジュセー @shiroboshi2

ギリギリとロープを手繰り寄せるクリミナーレ。ミリピードは耐える。床に重圧がかかり、蜘蛛の巣状の亀裂が入っていく。「ヌゥーッ!さっさとへこたれんかイディオットめが!俺様の給与査定に関わってくるのだ!さぁ早く」「……イヤーッ!」「グワーッ!?」 17 #S57Ninja

2015-08-06 20:49:39
ジュセー @shiroboshi2

クリミナーレがバランスを崩し、後方へ転倒した。ミリピードが敢えて手を抜いたのだ。耐えるミリピードとそれを引っ張るクリミナーレ。その力の均衡が崩れたが為に、クリミナーレの引っ張る力だけが過剰になってしまった!状況判断一つで、ニンジャのイクサは激変する! 18 #S57Ninja

2015-08-06 20:56:05
ジュセー @shiroboshi2

「イヤーッ!」勢いをそのままに、ミリピードが髪を靡かせながらトビゲリを放つ。「グワーッ!」クリミナーレの首が120°曲がる!彼のロープを握る手が緩んだ。瞬間、ミリピードの両腕を今にも圧し切らんと巻きついていたロープも緩んだ!「バカなー!?三倍なのに!!」 19 #S57Ninja

2015-08-06 21:01:33
ジュセー @shiroboshi2

クリミナーレが驚愕し、叫ぶ。このニンジャロープは、カラテ密着ツールであるが故に、使用者のカラテが鈍ると即座に能力を無くしてしまう!「イヤーッ!」ミリピードは跳躍し、彼の頭部を両腿で挟んだ!「グワーッ!」「イヤーッ!」そして勢いよく旋回、彼の首を捻った! 20 #S57Ninja

2015-08-06 21:05:31
ジュセー @shiroboshi2

「アバーッ!」鈍い音と共にその首が折れ曲がり、全身が痙攣しだす。ミリピードは跳び離れた。直後、「サヨナラ!」クリミナーレは爆発四散した。舞い散るニンジャ装束の端切れ、何らかの書類……その中に、ミリピードがアケシ・ノノミであったころの顔写真も含まれていた。 21 #S57Ninja

2015-08-06 21:08:21
ジュセー @shiroboshi2

ミリピードはそれに手を伸ばそうとした。だが写真は爆発四散に巻き込まれ、消えた。彼女は俯き、立ち尽くす。そんな彼女の耳が、ニンジャ聴力が、数多の足音を捉える。増援のクローンヤクザであろう。それに、ニンジャの気配も感じる。下に降りるのは得策ではないだろう。 22 #S57Ninja

2015-08-06 21:13:51
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