原発停止の仮処分で、「逆転勝訴した場合に」申し立てた住民側に損害賠償することについての法律家の検討

まとめてみました。
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penben @penben2020

@holmesdenka ところで、手続き上違法な場合、というのはたとえばどのような場合が想定されるものでしょうか。極端な話、必要な授権の欠缺とか、要審尋事件で審尋を開かなかった等は手続違法だと思いますが、実体上の不当との関係で微妙な判断を要するようなケースがあり得ますか。

2016-03-19 13:41:08
papadenka @holmesdenka

@SakawaH 明らかに保全要件を欠いているのにあえて出しちゃった場合は実体論と重なる場合があり得ますが、保全命令の構造上、そこまで踏み込んで違法論が展開できるケースはほとんどないでしょうね…

2016-03-19 13:51:09
penben @penben2020

@holmesdenka なるほど…。そこで、結局、手続き上違法は明確なごく限られた範囲に留まる一方、実体上不当であれば原則として損害賠償に結びつくという形で、基本的に「不当」を問題にすればよろしいということになるのでしょうか。

2016-03-19 13:55:46
papadenka @holmesdenka

@SakawaH です。で、その場合は、保全を認めた裁判所ではなく、申立人が相手方になるのは当然のことで、少なくとも専門家がこれに異議を唱えるのはあり得ない…

2016-03-19 13:57:17
papadenka @holmesdenka

@SakawaH 条文読んでから言え、って書こうとしておいた条文にはないことを思い出したりしてw(立法時に学説判例上争いがあるので、解釈に委ねることにした、と明記されているので、最高裁説を採用したから条文不要、というわけではないのですが、もう忘れられているようなw

2016-03-19 14:11:40
penben @penben2020

下記、誤記発見…。最後の「債務側で」は「債権者側で」ですね…とほほ twitter.com/SakawaH/status…

2016-03-19 15:33:29
penben @penben2020

(続)この最高裁の立場は、「無過失責任」説と「過失責任」説の折衷的な立場ととして、「本案で逆転した場合、債務者による損害賠償請求を認めるには、債権者に過失がなければならないが、その過失は本案で逆転したことで事実上推定され、債務者側で相当性を立証しなければならない」と(続)

2016-03-19 12:59:58
penben @penben2020

(補足)なお、何点か補足しておきます。判例は前掲のとおり昭和43年の最高裁判決以降、基本的には一貫して「本案で逆転→原則として債権者に過失あり→債権者に「特段の事情」があれば過失なし」という枠組みできていますが、具体的な事案で「特段の事情」を認めて過失を否定した例は割合多く(続)

2016-03-19 15:37:51
penben @penben2020

(続)その典型的な例は、昭和43年最判のように、不当な仮処分がなされる前提として債務者側で債権者を誤信させるような行動があった場合や、最判平成2年1月22日の「相続させる」旨の遺言の解釈のように法的な評価が分かれるものであるような場合があるとされています。(続)

2016-03-19 15:40:47
penben @penben2020

(続)この平成2年最判では、過失責任の一般論を述べた後、「仮処分命令の本案訴訟において原告敗訴の判決が確定したとしても、その一事をもって、直ちに右過失が存すると断ずることはできない。」と判示しています。これが昭和43年最判と同旨なのかは、今ひとつ理解しかねます(続)

2016-03-19 15:46:10
penben @penben2020

(続)が(なお、さしあたり執行・保全百選第2版212頁[小粥])、いずれにせよ、公刊された裁判例の半数は、昭和43年最判を含め「特段の事情」を認めて過失を否定したという分析があり(本間・前掲書521頁、527頁)、(続)

2016-03-19 15:50:18
penben @penben2020

(続)過失の推定があるからといって必ずしも「逆転判決→直ちにイコール損害賠償」という図式ではないことも読み取れます。これに対し、学説上は今日も原則として無過失責任で債権者に責任を負わせるのが筋であるという主張のほうが有力であるように見えます。(続)

2016-03-19 15:51:55
penben @penben2020

(続)確かに、権利実現の本筋を本案訴訟におき、保全はこれをいわば必要に応じて「暫定的に繰り上げる」制度に過ぎないと考えれば、それを積極的に利用した債権者が、誤った(不当な)保全命令によって生じる損害というリスクを負担するのが一般論としては妥当なようにみえます。(続)

2016-03-19 15:54:29
penben @penben2020

(続)しかし他方で、あまりに重いリスクを債権者側に負わせると、かなりの萎縮効果を発揮してしまうことになり、保全の利用が難しくなります。(これは本件のような原発差止め等ばかりでなく、普通の、貸金請求権で不動産を仮差押えするような場合にも通用する一般論の話です。)(続)

2016-03-19 15:56:21
penben @penben2020

(続)ただ、純然たる過失責任では債務者側の負担が重く、そこのバランスを取ろうとするのが折衷説だということになるわけで、それはそれで一つの落ち着き先として妥当なところではないでしょうか。いずれにせよ、損害を誰が分担するかは問題になってくるのですね。(続)

2016-03-19 15:59:13
penben @penben2020

(続)なお、この点、じゃあそんな間違った決定をした裁判官に責任はないのか、国家賠償はどうだ、ということですが、この点については、裁判官がする判決などの司法作用については、裁判官が違法・不当な目的をもって裁判をしたなど、付与権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使した等の(続)

2016-03-19 16:03:37
penben @penben2020

(続)特段の事情がある場合に限って国賠法違法とするのが判例です。判決が上訴等で是正された(たとえば一審と控訴審で判決が異なりうるのは当然で、そのような場合に国賠というのは無茶ですよね、という話ですね。保全と本案にも同じ関係が成り立ちます。(続)

2016-03-19 16:05:25
penben @penben2020

(続)というわけで、基本的に(よほどの例外を除き)国賠の問題が生じることはなく、あくまで当事者間の損害分担の問題になります。(続)

2016-03-19 16:07:20
penben @penben2020

(続)ところで、ここまで「担保」の問題に全然触れずにきましたのでこの点も補足します。保全は前述のように暫定的なもので、それが後から理由のない違法なものであったとなる(本案で逆転するのが典型例)ことも当然に予測の範囲に含まれています。そこで(続)

2016-03-19 16:10:51
penben @penben2020

(続)仮差押えや仮処分を発令する際には、債権者に「担保」を立てさせるのが一般です。たとえば仮差押えする不動産の価格のなん10%かに相当する金銭を供託させておく等の方法で担保を立てます。無担保で発令が受けられるのはかなり限られた事例です。(続)

2016-03-19 16:12:41
penben @penben2020

(続)これが担保の一般論ですが、ここから先は、具体的な類型に応じて、保全命令の与える影響の大小、必要性の性質の違い、担保の現実味、等を考えていく必要がああるように思います。たとえば、典型的な、貸金返還請求権を被保全権利にして不動産を仮差押えするとか(続)

2016-03-19 16:18:40
penben @penben2020

(続)建物賃貸借契約を解除して明渡しのための占有移転禁止の仮処分をするといったケースでは、保全命令があってもすぐに追い出される等というわけではなく、影響は比較的小さいものに留まります。(続)

2016-03-19 16:20:22
penben @penben2020

(続)ところが、たとえば、日照権侵害を主張して隣地に建築中の高層マンションの工事を止めるための建築(工事続行)禁止の仮処分のような場合、仮処分があると工事がストップして債務者への影響も大きいですが、ストップしないで完成してしまうと債権者が本案で勝っても(続)

2016-03-19 16:21:46
penben @penben2020

(続)一回建ってしまったものをまた壊すのかという話になってしまって、社会経済的にもよろしくありません。こういう場合にどういう担保を立てるのがよろしいのか、担保を積むことは債権者にとってかなりの負担であり、悩ましいところです。(続)

2016-03-19 16:24:41
penben @penben2020

(続)そして、では本件のような類型ではどうか。一つには、もし生じることのある損害を相当の確度で見込み、これを担保させるとすると、担保の額は莫大になる可能性があります。そうすると、事実上、この種の(たとえば公害系など)事案では、保全は無理で本案一本で行くべき、というのも一つ(続)

2016-03-19 16:32:52