- Ryokansato
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ファミコン・シンドローム (メンタルヘルス・シリーズ) amazon.co.jp/%E3%83%95%E3%8… 読了。1989年の本。同朋舎のメンタルヘルスシリーズという、当時起きたメンタルヘルス関係の問題ごとにスポットを当てた論文集で、これはファミコンブームを扱っている。
2016-03-22 21:25:39ゲーム脳という言葉は当時はなかったけれども、ファミコンに否定的な言説を大人の口から聞いて育ったので、そういうのの理論的なベースが知りたくて開いた。だけど、ファミコンの害悪などは語らず、どういう需要をされているか、どのような効用があるかといった現状報告みたいなもので、むしろ懐かしい
2016-03-22 21:25:46登校拒否児童のカウンセリングをする相談室のプレイルームにファミコンを設置したところ、直接面談は抵抗があって出来ないが、ファミコンを一定時間遊んだあとなら治療者とコミュニケーションが取れるといった事例が紹介されている。
2016-03-22 21:29:21暴力衝動のある子がファミコンで一時的に解消され、ゲームで起きている事を一緒に画面を見ている治療者に実況することが感情の言語化を促し、対人コミュニケーションの助けになった、という報告は、一般的にテレビゲームで奪われると思われているものの獲得がゲームでなされているわけで、興味深い
2016-03-22 21:34:03登校拒否児童の治療者から見たファミコンとは、ファミコン以前に育成環境や発達の遅れから人とのコミュニケーションに失敗し、人との会話に正のイメージを持てない子供が、失敗を否定せず何度でも怒らず付き合ってくれる機械との対話で、コミュニケーションそのものへの信頼を取り戻すステップのようだ
2016-03-22 21:37:37そういえば昔、香山リカも児童へのカウンセリングにウィザードリィなどのゲームを箱庭療法的に使った、という報告みたいなコラムを書いていたな。今となっては彼女の現在の有り様からにわかに真とは思えなくなってしまったが、ゲームという新しいメディアに対する期待がそこにはあったんだよな。
2016-03-22 21:41:12翻って、治療を必要としない、いわゆり健常な子供にとってのファミコンはなんだったか、と言うと、東京の団地の小学校の先生が35人の生徒の間に起きた流行の変遷を半年間記録したレポートがあり、これも同世代としてリアリティががあり読み応えがあった。
2016-03-22 21:45:06子供たちの間で流行を持ち込む子供のタイプを4種類に分析していて、一つは流行に敏感で常にブームの中心にいる吉田、ファミコンに夢中で周りから友達が集まってきて流行を作る中沢、流行に敏感だが単発でしかブームを起こせない青柳、
2016-03-22 21:52:55子供達に定期的に今何が流行っていて、クラスに持ち込んだのは誰かと調査して、3月だけかみつきばあちゃん消しゴムでクラスのヒーローになった青柳の短い栄華が、論文の文章とデータだけから嫌なくらい分かるんだよなあ
2016-03-22 21:56:24ファミコンを通して友達付き合いはどうなったかという調査もしてるんだけど、ファミコンに関することでのいじめや喧嘩は無く、大半は友達も増えたという回答。ただひとり、ファミコンで友達が減ったと回答した女子がいたが、筆者から彼女の家にあるゲーム機はファミコンではないという補足が。
2016-03-22 21:59:20子供達の買っているゲーム雑誌も、昭和62年の調査ではファミマガが男子の半数以上、ファミ通を男子4名が購入。MSX関連と思われる雑誌を女子1名が購読。現実は非情である。
2016-03-22 22:02:28クラス一のファミコン少年、中沢君のゲームのチョイスがストイックすぎて、もう pic.twitter.com/lek9NJLvw0
2016-03-22 22:05:35昔、ファミコン必勝本でナムコのゲームは3ヶ月、コナミのゲームは1ヶ月しか楽しめないと揶揄されていたが、マジで結果が出てて20年越しくらいに草生える pic.twitter.com/Gh5dMGIbul
2016-03-22 22:09:16テレビゲームの子供への健康障害についても、東京女子医科大学小児科の先生が論文を書いているのだけれど、視力障害は実際には大きなものにはならないだろうとしている。それよりも運動不足による肥満への懸念を表明している。89年の本だよ、これ。
2016-03-22 22:13:58ゲームによる肥満の事例として、3歳児検診で心臓の異常を指摘されていた子供が8歳の夏休みに手術を受け、術後も良好だが、入院中に買ってもらったテレビゲームに熱中し肥満の傾向を示すように。心臓外科の先生にまず相談したが、子供の肥満はさほど気にしなくて良いと言われる。
2016-03-22 22:18:159歳の夏休みに肝臓の数値が異常をきたす。心臓外科は術後の肝炎が心配で、安静にするように勧め、子供はよりゲームに熱中し、父親もゲームが上達する息子をコンピュータの達人になると容認、10歳にははっきりと尋常じゃない肥満になり、小児科医に相談したら、肥満による肝機能の異常と診断。
2016-03-22 22:22:18その後、ゲームの時間を制限し、運動療法で肥満と肝臓は正常になるのだけれど、必ずしもゲームだけが肥満の原因ではなく、心臓手術後に安静にさせ続けなくてはいけないという判断、ゲーム=コンピュータという安易な発想からゲームに熱中する子供への甘やかしもある複合的なものと指摘している
2016-03-22 22:25:22この論文ではコンピュータに熱中する人物を3種類に分類していて、コンピュータをおもちゃのひとつとして捉えて遊んで楽しむゲーム志向型、通信の一つとして捉えるインフォマニア型、ハードウェアやソフトウェアに強い関心を示すハッカー型としている。
2016-03-22 22:28:45ゲーム志向型はあくまでも対戦などの楽しみで、インフォマニア型も高度な情報交換には他者とのコミュニケーションを求めるものなので、心配はいらないだろうという見解。ハッカー型は対人コミュニケーションを避けて閉じこもるが、コンピュータを仕事にできれば問題なかろうという。
2016-03-22 22:31:23むしろ、この先のエレクトロニクス社会で、コンピュータに拒否反応を示すもの、技能の一つであるコンピュータ教育から落ちこぼれてしまうものをどう掬い上げるか、より良いインターフェイスの開発をするべきとしている。
2016-03-22 22:33:31読んでみて、子供だった時分の僕が感じたゲームやコンピュータに対する悪感情は、当時のアカデミズム(もちろんこれがアカデミズムの全てではないけれど)ではわりとフラットに扱われていたのだなあと思った。
2016-03-22 22:35:25ファミコンが世に出て5年、ドラクエ3が社会現象になった頃の本だから、ゲームについての知見の蓄積なんてないだろうからこその、慎重にかたり、ありのままを記録したんだろうね。
2016-03-22 22:37:12