「流れ」を変えよう 「路傍の石」は憶えられない

教えるのがうますぎて分からないという奇妙な現象がある。とても分かりやすい説明だったのにいざやってみようと思うと「あれ?」とても面白い話だったのに人に説明しようとすると「あれ?」 途中の話が「路傍の石」と化してしまう。「流れ」がきれいすぎるために起きる現象だ。
11
shinshinohara @ShinShinohara

教えるのがうますぎて分からない、という奇妙な現象がある。とても分かりやすい説明を聞いてとても感心し、納得がいったのに、さあ自分でやってみようとすると「あれ?なんだっけ?」となる。あれだけ砂に水がしむこむように入ってきた説明は、砂から水が抜けてしまうように分からなくなってしまう。

2016-03-25 23:17:29
shinshinohara @ShinShinohara

私もこれをやってしまったことがある。子どもの勉強を見ていた時、どれだけ考えても分からないと嘆いていた問題を説明したところ「すごく分かった!なんでそんな風に誰も教えてくれなかったんだろう!」と感動してくれた。その日はその問題ができていたのに、翌日になるときれいさっぱり忘れていた。

2016-03-25 23:20:22
shinshinohara @ShinShinohara

「すごくよく分かった、と感じたことは憶えている。でもどうやるのかちっとも憶えていない。」もう一度説明すると「そうだったそうだった、うん、もう大丈夫」しかしまた翌日には忘れてしまう。そこの空いたバケツの中の砂に水をまくような。よく浸み込むけどすぐ抜けてしまう。

2016-03-25 23:22:01
shinshinohara @ShinShinohara

非常に上手にプレゼンできたときのこと。聴衆の方がいたく感動し「会社に戻ったら上司に報告します!」しかしいざ上司に説明しようとすると、あれだけ分かったつもりになった内容がうまく説明できないどころか、何を分かった気になったのかさえ思い出せず、もう一度聞きに来た人がいる。

2016-03-25 23:23:57
shinshinohara @ShinShinohara

すごく面白い漫才をみて腹を抱えて大笑いし「すごく面白かったよ!」と家族に報告。「どんな内容だったの?」と聞かれて「それはねえ!・・・あれ?なんだっけ?」あれだけ面白かったのにどんな話をしていたのか、さっぱり記憶に残っていないことがある。すごく面白かったという記憶はあるのに。

2016-03-25 23:27:21
shinshinohara @ShinShinohara

これは「路傍の石」現象なのかもしれない。天気も良く、暖かで気持ちの良い日にハイキング。友達と楽しくおしゃべりしながら歩いて、ふと思い返すと、途中にどんな景色があったのか覚えがない。とても道中が楽しかったことははっきり覚えているのに、路傍の石のごとく具体的なことが思い出せない。

2016-03-25 23:29:46
shinshinohara @ShinShinohara

人間はどうやら「空気の流れ」が変わった瞬間のことは具体的なことを覚えられるけども、「空気の流れ」の最中には具体的なことに目がいかないものらしい。「流れ」の全体を意識して、「流れ」の中の具体的な事象は路傍の石のごとく、景色の中に消えてしまうものらしい。

2016-03-25 23:33:18
shinshinohara @ShinShinohara

ハイキングでおしゃべりをしている最中に誰かが「あ、チョウチョ!」と叫ぶと、後になってもチョウが飛んでいた情景を思い浮かべることができる。おしゃべりを楽しむという「場の流れ」が断ち切られ、別の「場」が出現したことで、何の「場」が発生したのか理解しようと意識したためだろう。

2016-03-25 23:36:02
shinshinohara @ShinShinohara

とても分かりやすい教え方、あるいはプレゼンは「流れ」が最初から最後まで淀みない。あまりにスムーズなので「え?なんのこと?」と疑問に思うことがない。だから何の記憶も残らない。楽しいハイキングの、路傍の石のように。

2016-03-25 23:38:29
shinshinohara @ShinShinohara

記憶に残る話やプレゼンは、立ち止まって考えさせられることが多い。「流れ」が滝になったり乱流になったり水しぶきを上げたり。「なにこれ?」と戸惑う。理解しようと意識したことで、「意識した」ことが記憶を刻む。「何あの石!」と誰かが叫んだことで、「路傍の石」は意味のある石に変わる。

2016-03-25 23:40:47
shinshinohara @ShinShinohara

「とても気持ちよく聞ける話(プレゼン)」より「記憶に残る話(プレゼン)」をしたいなら、「流れ」を乱した方がよい。相手の脳に分かりやすく浸み込ませるのではなく、注ぐのをやめて「場の流れ」を変えてみる。「え?何ですか?」流れが変わったことで意識が動けば、記憶に残る。

2016-03-25 23:44:56
shinshinohara @ShinShinohara

私は近頃、ものを教える時、一応説明はするのだけれど最後の言葉を吐かずに「で、どうなると思う?」と相手に答えさせる。話の流れから、ほぼ結論が見えているのだけれど、あえてその言葉を相手に言わせる。「そう、その通り。」私の「流れ」が相手の「流れ」に変わっただけで、意識され、記憶される。

2016-03-25 23:47:04
shinshinohara @ShinShinohara

山の上からの景色を滔々と説明する私、その話を「はあ、はあ」と聞く人。そのままではその人に記憶は残らない。しかし「で、あなたは景色のどこが好き?」と「流れ」を向けられると、途端に景色は「路傍の石」ではなくなり、肉感のある景色となる。

2016-03-25 23:49:48
shinshinohara @ShinShinohara

ただ視界に飛び込んでくるだけの受け身の情報は「路傍の石」処理される。しかし「さあ、好きな石を蹴ってごらん!」と声をかけられると、途端に視覚は能動的なものとなり、映像は蹴るのに適当な石を探すデータベースとなり、石の大きさ、距離を目測、キック力の程度など、脳がフル回転する。

2016-03-25 23:51:50
shinshinohara @ShinShinohara

記憶は「働きかける」ときに生まれる。あまりに上手な話やプレゼンは理解するのに苦がなく、口を開けていれば落ちてくるような受け身の情報。そのために「路傍の石」処理がなされる。「働きかける」機会がないため、ちっとも記憶が作動しない。

2016-03-25 23:53:27
shinshinohara @ShinShinohara

しかし「流れ」が変わると「ん?あれ?何かあった?」と注意力が機能する。「働きかける」が作動する。このとき、物事を理解しようとする。新しい「流れ」を知り、それに順応するために。この「変動」の瞬間、記憶が刻まれやすくなる。

2016-03-25 23:55:27
shinshinohara @ShinShinohara

人間は「場の流れ」「空気の流れ」を読む。大きな変化がない場合は意識は作動しない。意識が動かないから記憶も刻まれない。しかし「流れ」が変わった瞬間は、新たな「流れ」をつかむために意識が動く。その時のことを「記憶」して、経験値を積み上げようとする。それが多分、記憶のメカニズム。

2016-03-25 23:57:24
shinshinohara @ShinShinohara

もし人に何かを教えたいのなら、あまりきれいな「流れ」で話さないようにしよう。肝心なところほど「流れ」を変えよう。「で、あなたならどうしますか?」話す側ばかり「働きかける」をやるのではなく、聞く側の人が「働きかける」をせずにいられないようにする。すると、記憶は刻まれやすくなる。

2016-03-25 23:59:23