バロック・スコラ哲学研究会 × 西洋中世学会若手セミナー「西洋中世哲学研究において、なぜ写本を読まないといけないのか」
どういうふうに新論理学がでてきたのか、というのについては写本のリストはでてきていたが、校訂がいつまでたってもでてこない。自分でやるしかないんではないのかと思うようになった。
2016-03-26 16:18:18研究の過程で Grabmann 大先生でも maneria と materia として誤って読んでいることをみつけて、大きなショックをうけた。こういう過程で、写本をよまないといけないなといっそう思うようになった。
2016-03-26 16:20:21日本の博士課程をでるまでは思っていてもなかなかできなかったが、デンマークに一年半留学できて、写本を参照する論理学研究に本格的に取り組むことに。
2016-03-26 16:22:51デンマークにいってこのテクストやりたいといったら、いきなりヤン・ピンボーグが紙焼きの写本の写真をどさっとおかれて、「これ読みな」と。
2016-03-26 16:25:59ある日ピンボーグがやってきて「これ読め」ってきた。それが、もとの写本がそれまでの研究の写本紹介からはごっそり抜けている部分(我々の意見に対する異論 Instantia の部分)だった。それを山ほど読むことになった。
2016-03-26 16:30:32その instantia 自体は、推論上の誤謬等をたくさん含んでいる。 instantia はそもそもそういうものである。しかし、そのなかに後の論理学の発展のもとになるものが少なからず含まれている。これまでこういう instantia というものは無視されていた。
2016-03-26 16:33:59ただ、マイクロフィルムの紙焼きでは確認できない部分があるのでパリのBNFに写本の現物をみにいったのだが、BNFの写本カタログをみると、そうすると De Rijk がリストアップすらしていない関連写本がいくつかあることがわかった。
2016-03-26 16:38:35写本目録(カタログ)といってもものすごくアラっぽくて logica (論理学)としかかいていない。でも、それを目当てに写本を確認していくと、だれもしらなかったテクストがでてくる。それをやってきた。
2016-03-26 16:40:38校訂版をまだだせていない大物があるのは、テクストの言葉面はわかっても、そこでの議論のなかがよくわからない。それは当時の人たちが暗黙の前提としていることがわからないから。そして、それがわからないのは自分だけではなくて誰もわかっていないことがわかってきた。
2016-03-26 16:42:16極端な唯名論を提出したロスケリヌスと極端な実念論を主張したアンセルムスを折衷したのがアベラールといった今でもしばしば見る考えではまったく、アルス・メリドゥナは理解できない。
2016-03-26 16:45:591992年に Traditio 誌 (47) にでた Vocales, or Early Nominalists 論文で一定の解決を提出。
2016-03-26 16:48:21ポルフェリウスの意図 intentio としては vox (nomenではない) を扱うのか res を扱うのか、というのが12世紀の議論だったのを後代の図式に落としこんだ(vox 派 vocales =唯名論派 nominales と考えた)のが従来の理解。(ちょっと自信ない)
2016-03-26 16:56:09これが12世紀前半。12世紀後半になると5学派(Abelard, Alberic of Paris, Adam of the Petit Pont, GIlbert de la Poreés, Robert of Melun) が対抗する。
2016-03-26 16:59:24これまで岩熊先生があつかってきた12世紀の論理学関係の写本はすべて一点しか残っていない。シャンポーのウィリアムのものだと考えられるテクスト(これにも異論はあるだろう)は 7程度あるが、これは例外中の例外。
2016-03-26 17:04:0113世紀に大学ができたときに、12世紀のテクストの伝統が絶えた。現在のこっているのは12世紀当時にかかれたものがたまたま残っただけ。
2016-03-26 17:05:19質疑: オッカム以降は唯名論の輪郭がはっきりするが、アベラールまで遡るのはおかしい。唯名論 nominates というのは pejorative としてのみ使われていた。それをオッカムがむしろそれでなんでわるい、といいはじめた。その内実は12世紀の唯名論とは違う。
2016-03-26 17:22:26しかし、ラテン語かじってて良かったな……という感じのイベントであったな。岩熊先生、テクストのラテン語を諳んじておられるんだが、訳を伝えないし、内容はちっともわからないが、すごいことはなんかわかる、みたいなコンテンツであった。
2016-03-26 22:50:35私自身の発表に関しては反省点が色々ありましたが・・・、写本セミナーの方は岩熊さんと関沢さんが(私が想定していたものをはるかに超える)本当に素晴らしいお話をしてくださり、大変熱い企画になりました。発表者、関係者、参加者の皆様、本当にありがとうございました。
2016-03-27 06:58:05