シネマ

DVD映画鑑賞記録
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Saori Watanabe @wsary

【シネマ60】『霧の旗』。倍賞千恵子が「山田洋二監督ともう一度やるとしたら」と唯一挙げる1965年の作品。すさまじい鋭利さと冷徹さ、かつ娯楽作品としての完成度。検察問題、裁判員制度、自白、証拠、今日の司法の矛盾のど真ん中を、松竹モノクロ映画が照射する。埋もれたラディカル、ド迫力!

2011-10-11 16:21:23
Saori Watanabe @wsary

【シネマ59】『ライフイズミラクル』。旧ユーゴ紛争の寓話の傑作「アンダーグラウンド」のエミール・クストリッツァ監督、04年作品。鉄道、ロバ、国連、映画、戦争、女、NATO、男、犬、サッカー、猫、ヒロシマ、一瞬たりとも息つけぬ笑いの嵐がすべてを連れ去る。ただ、単純に。すばらしい。

2011-09-24 22:34:35
Saori Watanabe @wsary

【シネマ57】『終着駅 トルストイ最後の旅』。ジェイ・パリーニの伝記小説を映画化。ロシア映画ではなくハリウッドの王道、画面は軽快。教科書の中の「アンナ・カレーニナ」「戦争と平和」、文豪の秘密。尊敬や愛を求め拒む人のエゴの狭間で、最後に辿り着く名もない駅。82歳、最晩年の<家出>。

2011-09-03 18:20:00
Saori Watanabe @wsary

【シネマ56】『ヴェラ・ドレイク』。04年ヴェネツィア金獅子賞。1950年代のロンドン。「家族」の風景の奥。中絶、母、娘、DV、医療、女性たちをめぐる「秘密」。50年前の優しき<主婦>が抱えた圧倒的矛盾を、娯楽作品として暖かく画面に映し出す。イメルダ・スタウントンの演技が圧巻!

2011-08-08 18:58:55
Saori Watanabe @wsary

【シネマ55】『延安の娘』。ドキュメンタリーとして手法は古典的、カメラが入ることで被写体の人が変わる、振る舞わせる要素も感じなくはない。「革命の聖地」延安の農村。1960年代の「下放」の傷跡。文革を意外なまでに率直に語る姿は、監督が「異邦人」ゆえかもしれない。恋愛の裏話がいい。

2011-07-31 18:00:03
Saori Watanabe @wsary

【シネマ54】『サンシャイン・クリーニング』。アメリカの地方の街。ウエイトレス、シングルマザー、"Fuckin loser"の美人姉妹が追い詰められて始めた稼業は「現場清掃」。自殺、孤独死、死人の部屋のクリーニング。摩訶不思議な爽やかさ、アメリカ社会の深い闇を軽快にポップに描く!

2011-07-02 17:23:28
Saori Watanabe @wsary

【シネマ53】『セラフィーヌの庭』。1910~30年代のフランス。家政婦として半生を暮らし、ただ絵を描いた女性の生涯。戦争や恐慌は背景に流れる音で、セラフィーヌの小さな世界に魅かれる。洗濯、食べ物、食器、シーツの質感、生活のディテールの再現が非常に丁寧。中島京子さんの小説のよう。

2011-06-08 19:07:37
Saori Watanabe @wsary

【シネマ52】『A2』。95年のもう一つの大きな傷、あの事件のその後。人と人は、なぜ袂を別つのか。オウム信者の青年たちと、立ち退きを迫る住民との不可思議な融和。右翼団体の街宣車の中。そこに映るのがただの人だからこそ、他者との亀裂の深さに立ちすくむ。今日なお褪せぬ、森達也の到達点。

2011-05-27 16:04:05
Saori Watanabe @wsary

【シネマ51】『アフター・ウエディング』。06年デンマーク映画。インドで孤児のNGOを運営する「元ヒッピー」が、コペンハーゲンの大企業CEOに突然資金供与を持ちかれられる、という設定から展開する家族劇。脚本は凡庸だが不思議な魅力に満ちる。デンマークの緑が、目にしみるような鮮烈さ。

2011-05-20 20:21:00
Saori Watanabe @wsary

【シネマ50】『ANPO』。アメリカ、そのアンビバレントなボーイフレンド。日本人アーティストが描いた1960年代の作品群を、映画で見事に蘇らせる。圧巻の美しさ、ゆえに矛盾の深さ。監督は日本生まれのアメリカ人女性@lhoaglund。中村宏の絵に、DVDの画面なのに息がとまった。

2011-05-09 17:07:15
Saori Watanabe @wsary

【シネマ49】『カティンの森』。70年を経なければ「話せる」ようにならないこともある。戦後のポーランドを分断した「傷」を、アンジェイ・ムラルチクの原作小説をもとに、ポーランドを代表する映画監督のアンジェイ・ワイダが映画化。東欧の果てない翻弄を描く。映画というより、慰霊碑に近い。

2011-05-01 17:00:09
Saori Watanabe @wsary

【シネマ48】『善き人のためのソナタ』。1984年、東ベルリン。東西冷戦下の「壁の中」を支えた、シュタージ(国家保安省)の機械のような官僚の彼。ある日彼の心の壁が崩れる、盗聴器の向こうのソナタから。ベートヴェンとブレヒト、東ベルリンの苦悩を丁寧に描いた作品。ラストシーンがいい。

2011-04-26 18:38:26
Saori Watanabe @wsary

【シネマ47】『誰がため』。ナチス占領下、デンマーク語で「炎」と「レモン」を意味する実在した2人の「英雄」。レジスタンスとして「正義」のために銃を取り、ひたすら自らの行動の矛盾に苦悩する。ほんとうは、誰のために、何のために。当時の欧州でスウェーデンが果たした機能が興味深い。

2011-04-13 17:05:26
Saori Watanabe @wsary

【シネマ46】『そして、ひと粒のひかり』。ラテン映画の底力はすごい。コロンビアの地方の町、17歳。底辺の労働者、そして妊娠。彼女は胃で麻薬の塊を運ぶ"mule"になる。テーマの重さを感じさせない、いい作品。主演のカタリーナ・サンディノ・モレノのひたすら生きる姿は邦題そのもの。

2011-04-08 22:14:28
Saori Watanabe @wsary

【シネマ45】『闇の列車、光の旅』。アメリカ国境へ向かう列車の上。ホンジュラスから不法移民として脱出する少女と、メキシコ南部のギャングの泥沼に生きる青年の、一瞬の出会い。中南米からアメリカへ向かう「移民」の姿を描くとともに、せつなく、やさしく、心に光がバトンのようにともる映画。

2011-04-03 16:41:54
Saori Watanabe @wsary

【シネマ44】『バッド・エデュケーション』ペドロ・アルモドバル監督の半自伝的作品。アルモドバルは「passion=情熱」を反復する。それはどんなライフルより強い武器。監督の、そんな宣戦布告のような作品。女性の役者は殆ど出てこない。嫉妬したくなるような、なんたるセクシー。

2011-03-06 19:00:02
Saori Watanabe @wsary

【シネマ43】『ミリオンダラー・ベイビー』イーストウッド作品中、なかなか観る気になれなかった一本。ようやく今頃。「正しき」「善き」「強き」アメリカの苦しみ。アメリカン・ドリームのピリオドのよう。画面の中の老いた主人公に、語りかけたくなる。そんなに苦しめあわなくても、いいからと。

2011-03-02 20:00:03
Saori Watanabe @wsary

【シネマ42】『ボルベール〈帰郷〉』06年ペドロ・アルモドバル監督作品。ペネロペ・クルスが見事にうたいあげる、カルロス・ガルデルのタンゴの名曲「Volver」。観れば「ブラボー!」と涙し拍手するしかない。都会とラ・マンチャ、なぜか寅さんが思い浮かぶ。スペイン版「女はつらいよ」。

2011-03-01 20:10:02
Saori Watanabe @wsary

【シネマ41】『抱擁のかけら』。ペドロ・アルモドバル監督の「映画」へのオマージュのよう。ペネロペ・クルスの役者としての底力に拍手したくなる。視力と自らを喪った、1人の映画監督の再生の物語。自身も同性愛者であり、スペイン社会の女性やゲイを描き続けてきたアルモドバルの、表現への賛歌。

2011-02-25 19:27:33
Saori Watanabe @wsary

【シネマ40】『瞳の奥の秘密』。昨年のアカデミー外国語賞。アルゼンチン映画が熱い。ブエノスアイレスの裁判所。ある強姦殺人事件をコアに、綿密な小説の如く「過去」と「今」が紡がれる。決して目新しい作風ではないが、ラテン系の「情熱」が映画の奥行きを深くする。長い空虚と、瞬間の愛情。

2011-02-24 20:00:03
Saori Watanabe @wsary

【シネマ39】『海を飛ぶ夢』。04年のスペイン映画。四肢麻痺の実在の人物を描いた作品。死の自由を求めるラモンと、神経系の進行難病を抱える女性弁護士の、一瞬の人生の交差。『潜水服は蝶の夢を見る』のようなリアルな感慨はわかない。肉体の感覚が画面にない。ただスペインの海は、きれい。

2011-02-15 20:20:02
Saori Watanabe @wsary

【シネマ38】『ザ・ロード』。米ベストセラーのコーマック・マッカーシー原作小説を映画化。この主人公「男」はヴィゴ・モーテンセンしかいない、と思った。滅びゆく世界で、死の欲求にひきずられながら、ただひたすら<南>をめざす父と息子の物語。「善きもの」がhopeかどうかはクエッション。

2011-02-10 19:50:02
Saori Watanabe @wsary

【シネマ37】『男はつらいよ寅次郎夕焼け小焼け』久々の、寅さん。1976年、シリーズ第17作。もうダダ泣き。宇野重吉と寺尾聰が親子で出演している時点で胸がキュンキュンする。「ルンペン」はもう差別用語だが、こういう「すき間」の余地が東京にもあったんだよなあ。寅さんはやっぱりいい。

2011-02-06 21:16:56
Saori Watanabe @wsary

【シネマ36】『息もできない』http://ow.ly/1s0xin 韓国社会の矛盾の姿。主人公が人を殴り続けながら、次第に葛藤し変化していく様が胸に刺さる。悲劇が悲劇をひたすら生産し「どうして」と泣き叫び、ただ立ちつくす。でもやさしさがよりそいますように、そう願いたくなる作品。

2011-02-01 19:30:03
Saori Watanabe @wsary

【シネマ35】『第9地区』 http://ow.ly/1s0ewS ヨハネスブルクの空上に突然「エビ」型宇宙人難破船が漂着するというC級設定。難宇宙人キャンプや宇宙人権、宇宙人差別、宇宙人軍需産業民営化、エビの仁義等についてかんがえさせられた。しかしやはり画面はマンネリ感。

2011-01-26 20:10:02