【青い軌道に口づけ】福間健二　#k2fact140

福間健二 @acasaazul

青い軌道に口づけして、どうしたい実験の途中なのか。三月の、この世。どんな風でもいい。吹いて、見る快感の先端を占領して、一瞬の、炎の線が向かうのは、いきなり開かれた手の、湿った土と幼虫たち。曇った空に打ち明けたい愛と打ち消したい愛がある。（青い軌道に口づけ１）#k2fact140

福間健二 @acasaazul

忘れていた。なかよし姉妹という食堂に通うこと。そのスープの味。よじれる時間を受けとめる。名詞よりも動詞の、逃げ込む通路を見つけられない数分のためらいを引き裂いた指を苦しませないように。姉の欲しがるもの。妹の侮蔑するもの。ベルが鳴って。（青い軌道に口づけ２）#k2fact140

福間健二 @acasaazul

「人間、みだりに坂は上ってはいけない」と井川さんは言う。では、下る。老いる前輪と香る後輪、無関係を劇にする陽気な自転車とすれちがう坂。いつまでも途中の「絶望が足りない」とその反転。人間、である必要もないと言わないための、ロッキン・オン！（青い軌道に口づけ３）#k2fact140

福間健二 @acasaazul

何をもらったか。霧の流れる夕暮れを裁断する意地悪なハサミとの一体感。手術台を拒み、自分の意志で壊れ、それでも人として人を傷つけることがある。軽快なステップを楽しんだ代償というわけでもなく、首を切りそこなった容疑者が周囲をまわりつづける。（青い軌道に口づけ４）#k2fact140

福間健二 @acasaazul

残りものを活用して四月に入る。嘘でも本当でもこの軌道に熱を生むようにだれかが語ることはジャンプしない。黙って聞きながら、まどろむ姉妹に閃光を走らせる。パスタとコーヒー、ごちそうさま。水もおいしかった。いつかとおなじ夢を裏返して見ている。（青い軌道に口づけ５）#k2fact140

福間健二 @acasaazul

明かりのスイッチが壊れて切れない。電気と何を消費しているだろう。星たちの溺れる川を渡って、鳥の声で話す子どもたちに会う。おじさん、このジュースおいしいよ。虚構と実体が入りくみ、考えてきたことが待ちかまえていた。思い出せなくなる色と形で。（青い軌道に口づけ６）#k2fact140

福間健二 @acasaazul

具体性を要求する椅子の下はいつも薄闇。跳びはねるもの、音を出すもの、卵を産むもののための小さな国。もう一度口づけをしてそこから人になる。ただ想像するのではない。説明抜きの切りとり作業。切りとられずに残る部分にも圧力とざらつく舌が必要だ。（青い軌道に口づけ７）#k2fact140

福間健二 @acasaazul

甘いものを食べながら山を見る。距離の錯覚をほどかずに無理しているやさしさ、もうこの窓の内側にはない。わからないこと、善意の説明でさらにわからなくして、どこに行きたいというのか。小さな王様を飼ってきた。チョコレート嫌いだなんて知らなかった。（青い軌道に口づけ８）#k2fact140

福間健二 @acasaazul

もう死んでいる胸に風が吹き、どんな体位も可能な夢の奥地に高崎線の通る鴻巣がある。詩人で古本屋の小峰くんが軌道を修正しに来てくれる。この実験は「実」が足りないのでは。彼も得意なはずはないリアルワールド。甘いものなしで川とチューリップを見る。（青い軌道に口づけ８）#k2fact140

福間健二 @acasaazul

スピリット、内側にない。着るのか。さまざまな孤独の詰まった森に入ってびしょびしょになって出てくる。着て、濡れて、脱ぐのだ。仲よし姉妹。山と川と昨夜の雨でよみがえった人生への闘志をふるえる線で描く。当然のことだ。わたしたちは天使じゃない。（青い軌道に口づけ10）#k2fact140