SCPとインセインとCreativeCommons: 情報社会論の側面から

「インセインSCP」に絡むCCライセンス問題について、主にCCの成り立ちやTRPGとオープンライセンスの関係史などを。
23
tricken @tricken

ただ、その中でほぼ唯一、ソースコード再頒布に近い思想で……つまり1980年代のGNUにおける「ウイルス条項」に近い形での「〜〜するなら派生利用していいよ」があります。それが、Share Alike、つまりSAなんですね。

2016-04-06 11:44:17
tricken @tricken

つまり、CCLは、思想的源泉のひとつであるGNUそのもののような挙動はしないけれども、(ほにゃらら)-SAを選んだ時のみ、GNUにおける「ウイルス条項」的な著作権効果が発動する。「自分の著作から派生したものが少しでも混じってるなら、それは再頒布その他の再利用を積極的に認める」。

2016-04-06 11:46:17
tricken @tricken

逆に言えば、CCL(BY-SA) をいちどつけた作品を、他の作者が少しでも利用したなら、その作者が利用した作品それ自体は、「(利用した部分も含めて)ぜーんぶ、クレジットも抹消して、俺のもんだい!」とはできなくなる、ということです。

2016-04-06 11:47:19
tricken @tricken

文章やイラストや動画で、いきなり「ぜーんぶ、俺のもんだい!」を言い出したら「何言ってんだこいつは……」と炎上必至ですが、元々が1980sのソースコード著作権に関する運動だったことを念頭におく必要があります。

2016-04-06 11:48:44
tricken @tricken

実は、このコピーレフト系の問題では、たとえば6箇所のAll Rights Reserved なプログラムが残っちゃっただけで、その後10~20年単位の法廷闘争に発展したりもしてます。

2016-04-06 11:51:18
tricken @tricken

ともあれ、ひとまずはそうした「ソースコード」に関する著作権思想史、著作権法(廷闘争)史の流れが、急に僕らの知っている「コンテンツ全般」に切り替えられる潮流がきたのが、おおよそ10年前からで、Creative Commons Licenseというのはそこから来てるんですよね、という

2016-04-06 11:52:36
tricken @tricken

そういう話でした。50分も使ってしまった。ここまでの質問/解釈間違いのツッコミなどお待ちしております。もし続きができたら、「BY-SAの、RPGルールブックにおける具体的な運用例」について少し書きたいと思います。

2016-04-06 11:53:54
tricken @tricken

昼は基本的な背景の話(ソースコード著作権からWebでの創作全般の著作権としてのCreative Commons)という話を補完しました。つづきとして、RPGのライセンスで似たようなのはなかったのか、という話をいくつかします。

2016-04-06 17:31:37
tricken @tricken

まず、D&Dが第3版になった時に、Wizards of the Coast社が、「Open Game License」(以下「OGL」と略)を出しました。これは、『ダンジョンズ&ドラゴンズのルールやデータを、エンドユーザに対して、(伝統的なやり方より)使いやすくするよ、というもの

2016-04-06 17:33:12
tricken @tricken

DnDに詳しい方はTLに沢山いらっしゃると思うので、D&D内でOGLがどうなっていったかは解説を譲りますが、ともあれそのOGLが、{商用,非商用}ともにD&D3.Xe以降のユーザの遊びの適法性を拡張したことにより、「d20システム」という市場が成立した、という歴史があります。

2016-04-06 17:34:29
tricken @tricken

(ただ、OGLそれ自体と、OGLの具体的なデータキットであるSRD(System Reference Document) と、それらを活かしたD&D派生活動のうち「d20 System」とロゴをつけられたもの」とは、また微妙に違うようなので、史的に考証された説明が面倒ですね)

2016-04-06 17:37:21
tricken @tricken

また、Wiz社のOGLやSRDという試みが「完全にGNU(のGPL)のようなもの」と言っていいかにはやや難しい所がある気もしています。ここはGNUとD&Dの両方に詳しい人に尋ね買った。特に同じD&DのOGL的なものでも、3eと4eと5eのSRDは全部扱いが違いますしね。

2016-04-06 17:40:47
tricken @tricken

「そういう試みをしているのは、D&Dみたいな大手だけなんですか?」というと、実は、今流行っているCoCの元であるRuneQuestの一時期の開発を請け負っていたMangoose社版RuneQuestを元にした、「OpenQuest」というものがあります(ややこしい)。

2016-04-06 17:43:56
tricken @tricken

OpenQuest II drivethrurpg.com/product/127007… ただ、このOpenQuestのOGL/SRDが、現Chaosium社の版権とどういう関係にあるか、といったことは、ちょっと良くわからない(自分も調べている最中)。Chaoisum社は昨年お家騒動があったし。

2016-04-06 17:45:16
tricken @tricken

ただ、版権的にもしクリアできれば、未訳ながら、(BRP)CoCのd100下方&能力値判定の仕組みに近い、CoCファンタジーみたいなものが遊びやすくなるので、このOpenQuestのOGLとSRDとが日本語圏でも生きているといいんだけどなー、と個人的には思っています。

2016-04-06 17:46:39
tricken @tricken

ほかにも、国内外問わず、各社ごとに公式Webサイトで「この文面を表示していれば、非営利に限ってはハウスルールを公開したり追加データを創ってWebサイトに掲載してもいいよ」という許諾を個別に出している例は沢山あります。CCでいうとBY-NC的な感じですね。

2016-04-06 17:49:02
tricken @tricken

さらに、2010sになると、SF-RPGの”Eclipse Phase”というシステムが、Creative Commons License 3.0 (BY-NC-SA) で、ルールの再配布/派生作品/改造を認める試みをしています。eclipsephase.com/cclicense

2016-04-06 17:50:59
tricken @tricken

ただ、国内では、翻訳でも国産でもない、“基幹システム”からCreative Commons Licenseを採用したRPGルールというのは、たぶんまだ出てないですね。

2016-04-06 17:54:21
tricken @tricken

(少なくとも、わかりやすく商業流通で出ているものとしては)。そこに来て、インセインSCPは、基幹システム(=『インセイン』第一巻)は変わらずAll Rights Reserved ですが、第3巻については、CC 3.0 (by-sa) を採用している、という仕組みになってます。

2016-04-06 17:55:52
tricken @tricken

このインセインSCPの ”Some Rights Reserved” ぶりは、実際に派生利用する際に戸惑うと思いますが、(1) インセイン基幹部分(サイコロフィクション)については既存の同人ルールの範囲内で、(2) SCP関連ルールについてはCC (by-sa) で、となる。

2016-04-06 17:57:22
tricken @tricken

これは、「一冊の本」に対して Creative Commons が掛かってると考えると(それは一面ではそうとも言えるんですが)混乱しやすいはず。そうではなく、「1冊の本はあくまでハコであって、中に、著作権の扱いの異なる複数のファイルが直列&マダラで並んでいる」と考えるといいです。

2016-04-06 17:58:20
tricken @tricken

その上で、『インセインSCP』が巻末で何をやっているかというと……ニコニコ動画等でMMD動画が投稿された時の、最後の方で出てくる「お借りしたもの」クレジットの数分間、あれに該当するものをしっかり書いている。p254-255がそうです。

2016-04-06 17:59:37
tricken @tricken

もちろん、MMD動画のすべてが、あらゆる明文法(および対応する文化における法慣習)を全てホワイトに守り抜けているかどうか怪しいのと同様(「ゆっくり」とか、常に危ないですよね)、そもそもSCPの「彫刻」は、画像に関していえばBY-“NC”-SA に当たる。

2016-04-06 18:01:49
tricken @tricken

個別の画像を見ていくと“BY-NC-SA” に該当するものさえ混ざっているものをトータルに “BY-SA” と扱うのは難しい。だから、派生創作を手掛ける側が、「お借りしたもの」一覧表を丁寧に書いていくことが、CC利用者に求められるわけです。映画のクレジットみたいに。しんどいけど。

2016-04-06 18:03:14
tricken @tricken

ですから、Creative Commons の実運用というものを考えるなら、2010sなら、まず「ニコニ・コモンズ」を見たほうが、わかりやすいんだろうなとは思います。著作権史としては、Creative Commonsの方が先で、ニコニ・コモンズの方が後続なんですけどね。

2016-04-06 18:04:29