【ミリマスSS】アンナの日記 #2-1
(これまでのあらすじ:望月杏奈はネトゲ好きのおんなのこ。ある日杏奈は、ネトゲで知り合ったlilyknightとのオフ会をすっぽかしてしまう。激しい自責の念に駆られ一時はネトゲから遠のく。しかし復帰した時、元のギルド仲間は杏奈(vivid_rabbit)を快く迎え入れた)
2016-02-11 00:06:22(lilyknightを無意識に避けていた杏奈だったが、ギルド仲間の計らいにより、lilyknightと久々に対面することになる。その会話のぎこちなさは目に余るものがあったが、突如現れた強敵との死闘を経て、二人の間には友情が取り戻された!そして二人は新たなるクエストへ!)
2016-02-11 00:10:16某月某日 学校をそそくさと出てまっすぐ家に帰ってきた。ゲームのスイッチを入れ、うさぎのもふもふパジャマに着替えて寝転んでる。ゲームの起動にやたらと時間がかかっちゃうから、待ってる間、暇で暇で……あ、言ってる間に、ゲーム、起動したみたい。今日もたくさんあそぼ( ・ x ・ ) 01
2016-02-11 00:18:35某月某日 授業が終わったときに、梨丘先生に茶室に呼ばれた。なんだろうと思いながら、茶室に入る。茶室には、梨丘先生が茶を点てながら正座していた。書き忘れてたけど、梨丘先生は茶道部の顧問でもある。「お座りなさい」梨丘先生の目の前の座布団に、いちおう正座で座った。 02
2016-02-11 00:27:15先生はこう言った。「最近寝顔がよくなりましたね」耳を疑う。「以前の貴女はうなされていましたからね。何かから逃げているような。私は見る度苦笑する他ありませんでした」先生は茶菓子を差し出す。「何があったのかは知りませんが、朗らかな寝顔を取り戻してくれて、私は安心しているのです」 03
2016-02-11 00:39:14先生がそんなこと言っていいんだろうかって思ったけど、梨丘先生はニコニコと笑うだけだった。私は首をかしげながらお茶と茶菓子をもらった。すごくおいしかった。お礼を言って茶室を出て、家に帰ってきた。……今考えても、梨丘先生が結局何を言いたかったのか、よくわからなかった。 04
2016-02-11 00:42:11某月某日 授業中に眠ってたら、梨丘先生に廊下に立たされた。この前の茶室での話はいったいなんだったんだろうか。梨丘先生の態度は、全然変わってないみたいだった。ただ、起こすときの笑顔が、より明るくなったくらい。もしかして梨丘先生、S?うわぁ……それやだ。 05
2016-02-11 00:46:11某月某日 lilyknightさんと一緒にチキチータ海岸に遊びに行った。綺麗な貝殻やモンスターがいっぱいいて、それを眺めてるだけでもすごく楽しかった。その貝殻やモンスターは高価買取される素材じゃないんだけど、そういうのは問題じゃないみたいだった。とにかく綺麗だった。 06
2016-02-11 00:52:11どうやらこのゲームには花火みたいなアイテムがあるみたいで、それを燃やして遊んでた。一つだけ、「虹色ハナビ」っていうの、これが、めちゃくちゃデカい爆発して、私たちは二人とも10mくらい吹っ飛ばされた。虹色の煤がこびりついたお互いの身体を見ながら、二人で爆笑した。 07
2016-02-11 00:56:26大きな大きな岩の上で、紫色の水平線を見ながらだべった。どうやらlilyknightは明日用事があるらしく、ログインできないらしい。明日は私も七尾百合子ちゃんの握手会があったから、ちょうどよかった。七尾百合子ちゃん、生で見たらきっともっとかわいいんだろうなあ。 08
2016-02-11 01:05:10某月某日 ちょっと、今日は絶対に日記に書いておかなきゃいけない気がしたから書く。昨日書いたばっかりだけど、そんなことは関係なくて、むしろそれが大事っていうか……。とにかく、順を追って書いていくね。なんだかちょっと頭が混乱してるから、所々おかしいかもしれないけど。 09
2016-02-11 01:08:33まず、今日は日曜日。私は、七尾百合子ちゃんの握手会に行くために、電車に乗ってた。そしたらさみちゃんに会った。さすがにもう5月だからマフラーは着けてなかったけど、後ろ姿ですぐに分かった。さみちゃんはどこか違うとこに行くみたいだったけど、途中までは一緒だったから、少し話した。 10
2016-02-11 01:14:59そしたらここで驚愕の事実1。さみちゃんは、私のギルド仲間でありこの前共闘してくれたメンドスさんその人だったのだ!逆ネカマ、ってやつらしい。さみちゃんはすごい驚いてたけど私も驚いた。さみちゃんとは途中の駅で別れたけど、またゲームで会えるんだ。こんな偶然、ありえるんだろうか。 11
2016-02-11 01:20:53驚愕の事実の興奮が醒めないまま、私は握手会会場に到着した。会場にはもう何人も人がいて、奥の方を見れば、列整理が始まってるみたいだった。私は事前に書いてきた手紙とチケットをカバンから取り出して、列に並んだ。男女比は8:2くらいだった。 12
2016-02-11 01:24:31一人また一人と、握手を終えたファンの人たちが満面の笑みで帰っていく。私は、係員の人にもらった使い捨てハンカチを何度も手のひらに押し付けていた。どうやら握手会では、少しの間七尾百合子ちゃんと会話できるらしくて、私の心臓の鼓動は速まるばかりだった。 13
2016-02-11 01:29:48そしてついに私の番が来た。私は、笑顔がこわばってなかったかな……微笑みながら握手した。七尾百合子ちゃんの手はすごく柔らかくて、こんな柔らかい身体であんなにまっすぐな歌を歌ってるんだ、これはもはや百合子さんって呼ぶべきかな、なんてあすの方向に思考を巡らせて、鼓動を減速させた。 14
2016-02-11 01:34:52「えと、そういえば……百合子さんって、ネトゲ……ゲームとか、好きだって話を聞いたんですけど」私はいつの間にかそう口走ってた。普段から気になってたことだったから、思わず口に出ちゃったんだろう。七尾百合子ちゃんは嫌な顔もせず頷いた。「はい。ネトゲ、好きですよ!」かわいい。 15
2016-02-11 01:41:20七尾百合子ちゃんは私の手紙を受取り、続ける。「昨日も、仲良しの子と一緒にゲームやってたんですよ」「……それって、どういうゲーム、ですか?」七尾百合子ちゃんは一瞬考え込むような表情を見せた。「まあ、モンスターを倒したり、素材を集めたりする、アクションゲームですけど……」 16
2016-02-11 01:46:24「昨日は、モンスターも倒さなかったし、素材を集めなかったんですよ。ただのんびりしてただけで」「……へぇ……」私の昨日のプレイスタイルと似ていて、私は親近感を覚えた。「それくらい自由度のあるゲームなんですよ。花火みたいなアイテムもあるんですよ!ホントにすごいんです」 17
2016-02-11 01:51:09「花火……」「はい」百合子ちゃんが頷いた。私は、そのあたりで、もしかして、と思い始めた。もしかして、目の前の七尾百合子ちゃんがlilyknightさんなんじゃないか、と。だけどそんなの、偶然にしてもありえなさ過ぎる……。「昨日、それで遊んだんですよ」ありえなさ過ぎる。 18
2016-02-11 01:55:33「……」「『虹色ハナビ』ってアイテムがあって、それがすごい強力で!二人で虹色の煤まみれになっちゃって、爆笑しながら海岸で転がったんですよ!」もう疑いようがなかった。百合子ちゃんは……目の前にいる七尾百合子ちゃんは、lilyknightさんだったのだ。これが驚愕の事実その2。 19
2016-02-11 01:59:51途端に私は恥ずかしくなって、百合子ちゃんから手紙を奪い取った。その手紙には、 lilyknightさんのことも少しだけ書いてあったからだ。『勇気を与えてくれた人』の一人として、百合子ちゃんと並べて。「ど、どうかしましたか?」私は耐えきれなくなって、握手会会場を後にした。20
2016-02-11 12:31:25……もしかしたら違うのかもしれない。lilyknightさんと百合子ちゃんは、偶然同じようなプレイをしてた別人かもしれない。そう考えることも出来たけど、考えれば考えるほど……二人の普段の物腰や喋り方とか、そういうのが、同一人物のソレに思えて仕方がなくなった。 21
2016-02-11 12:34:25……でも、そんなのは、lilyknightさんに訊いて、確かめればいいだけの話だ。lilyknightさんが七尾百合子ちゃんなのか……。教えてくれるかどうかは分からない。だけど、今の私の好奇心は、抑えようがなかった。明日。明日、必ず訊こう。もう逃げたりしない。 22
2016-02-11 12:36:35