ア・グレイト・ディスカバリー・オブ・ファッキン・シリアス・ニンジャ・パワー #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

机で作戦を立てていたマナブは突然、バネじかけめいて立ちあがり、護身用金属バットで携帯IRC端末を殴った!「ファーック!」SMAASH!「ファック!」SMAASH!「ファック!」SMAASH!木っ端微塵に破壊!「黙ってろ!ARRRRRGH!」鈍っていた攻撃的で危うい心が蘇っていく!

2016-04-12 00:07:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ARRRRRGH!ファック!ファック!ファック!」SMAAAAASH!ドラムセットを何度も何度も殴りつけ、破壊してゆく!衝撃が腕に伝わる!暴力。暴力。暴力の血が、全身を駆け巡る!興奮でアドレナリンが湧き出す!アスファルトの上で死んだヨタモノの父親から授かったヨタモノの血が騒ぐ!

2016-04-12 00:10:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

もうダメだ。導火線に火がついてしまった。冷静な判断ができなくなるまで秒読み寸前。最後の理性で装備を整える。チーム・イディオットをナメるな。マナブは完全にキレていた。ここ2、3年は荒事とは無縁だが、若い頃は仲間のために無謀なケンカに挑み、刺された事3回、相手を半殺しにした事6回。

2016-04-12 00:14:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

誰もが将来はヤクザと思っていた。裏社会のツテもそのためだ。それが数年前、元同級生のギークと組んで、おかしなTシャツを売り始めた。カネを稼いでまっとうな家庭を持ちたいと思ったからだ。幼馴染のオチヨと。マナブは30。後が無い。道が絶たれれば暴力のみ。だが暴力の世界には戻りたくない。

2016-04-12 00:19:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ARRRRRGH!」バットを振り回し、割れた鏡の中を覗く。己の眼を見る。売り物の違法薬物メン・タイを持ってストリートを駆けずり回る最低のクズの目。縄張り争いでスモトリ崩れのヨタモノを半殺しにするまで殴り続ける時の目!違う、もっとだ!もっとだ!「もっとだ!ブッ殺すときの目だ!」

2016-04-12 00:25:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スゴイヘッド待ってろ!全員ブッ殺す!ちくしょう!助けてくれ!オレがまたおかしくなっちまわないように!マナブは机の上のTを手に取り、それを覆面状に被った!刹那、ニューロンに電撃が走った!「ARRRRRRRRRRGH!」彼は狂ったように叫ぶ!「ファキン・シリアス・ニンジャ・パワー!」

2016-04-12 00:32:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マナブは完全にキレていた。もう何も聞こえなかった。彼は人とは思えぬほどの低い唸り声とともに、シャッターを上げ、ガレージから出撃した。暗闇。渋滞。人の群れ。ストリートの連中よりも野次馬が多い。邪魔者達を押しのけ進む。誰かが呼び止め服を引っ張る。そいつを殴りつけた。鼻血が噴き出した。

2016-04-12 00:35:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バーガーを食いながら写真を撮るスモトリ崩れの膝を後ろから蹴りつける。くずおれた巨漢の背中を踏み台に、して停車中の車に飛び乗る。走る。ボンネット、屋根、またボンネット。跳び渡る。横にズラリと並んだ砲列と砲兵たち、リアルオイランパブ『砲撃(バテリー)』の色褪せたネオンカンバン目の前。

2016-04-12 00:39:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

テンサイ・ヨコみたいに3ポイント決める。ヘルゲートみたいに徹底的に叩きつける。BSCVATMみたいなグルーヴで。ジェット・ヤマガタや暗殺者トウゼンのようにブチのめす。パーカーの下の色あせたTよ、守りたまえ。マナブは車の屋根から飛び降り、ハイデッカーの頭に金属バットを振り下ろした。

2016-04-12 00:46:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア……ア……ちっくしょう……」オチヨは喉を押さえ苦しげにもだえる。サフォケイトが笑う。「次はこの客が死ぬぞ?」「そいつ…は…やめろ……」「ア……ア……ナブ……助けて…う……」スゴイヘッドが泡を吹く。「やめろ……アタシを……殺しな…」「ダメだ」サフォケイトが手をかざした、その時!

2016-04-12 00:54:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」階段を転げ落ちるハイデッカー!「何」サフォケイトが顔を。「ウオオオアアアーーーーッ!」CRAAAAAASH!暴力が来た!階段下のガラス戸を血塗れの金属バットで叩き割り、暴力が現れた!見よ!その者が纏う赤いフードパーカーを!その口元を覆う禍々しき「忍」「殺」メンポを!

2016-04-12 01:01:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(そんな!)サフォケイトの視線は、敵の眼とメンポに釘付けになった!マナブの顔を覆うのは、最初に作られた「忍」「殺」T。その文字がメンポの如く口元を隠す!(まさか……)露出するのは暴力に輝く双眼のみ!その上からさらに正体を隠すべく、赤いフードパーカを頭巾めいて目深に被る!(奴は!)

2016-04-12 01:09:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マナブとサフォケイトは睨み合った!(こいつは……ニンジャスレイヤー=サン!!)「アイエエエエエ!」サフォケイトが……ニンジャが……怯んだ!ゴウランガ!鬼気迫るアトモスフィアにより、彼はマナブを、金属バットを構えた狂人を、ネオサイタマの死神と誤認したのである!

2016-04-12 01:11:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マナブは生死不明のスゴイヘッドとオチヨを認め、金属バットを掲げ怒りに燃えて叫んだ!「ホウアアアアーーーッ!」その睨み!咆哮が!サフォケイトを突き刺す!都市伝説的恐怖が、ニンジャの心臓を掴み上げパニックに陥れる!「た……退却せよーッ!」逃げた!サフォケイトは連続側転を打ち、逃げた!

2016-04-12 01:15:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」サフォケイトは地上のハイデッカービークルに逃げ帰り、発進!現在アマクダリ・ニンジャには、ニンジャスレイヤーと単独遭遇した場合、即時の撤退とアクシスへの即時通報が推奨されているのだ!「アクシス!アクシス!応答せよ!ニンジャスレイヤー=サンに遭遇!アクシス!応答せよ!」

2016-04-12 01:21:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハッ!?」マナブは正気に戻った!今目の前にニンジャがいたのでは?狂気と脳内薬物によって塗りつぶされていたニンジャ・リアリティ・ショックが、奇妙な残響となって彼のニューロンをざわめかせた。だが今はそれより重要なことがあった!「おい!スゴイヘッド!生きてるな!オチヨ!大丈夫か!?」

2016-04-12 01:26:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ……?その声……」「アンタまさか……マナブ……!?」二人は息を吸いしながら目を疑った。つい先ほどまで、二人の目からマナブはサフォケイトと何ら変わらぬニンジャに見えていた。いや、それよりも遥かに禍々しいニンジャに。だが、今は違った。「黙れ!今のうちに逃げるぞ……!」

2016-04-12 01:33:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハイデッカーの退却を知り、熱狂した店員やヨタモノ客が店内に雪崩れ込む。火花が散り、店内のタングステンボンボリ灯はそこかしこで明滅。その混沌に紛れながらスゴイヘッドはスケッチブックを小脇に抱えてオイランドロイドの手を引き、マナブは足を負傷したオチヨを連れ、しめやかに店外へ脱出した。

2016-04-12 01:37:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「「ワオオオオーーーッ!」」」「ハイデッカーが撃退された!」「信じられねえ!」「一体誰がやったんだ!」「全員に決まってんだろ!」「今から花火あげようぜ!」「車を燃やそうぜ!」凄まじい熱狂だ!二人は人の波に押され二手に!「ナブ、俺、証拠隠滅して逃げる!ナブはオチヨを!」「おう!」

2016-04-12 01:42:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マナブはオチヨを背負い走った。オチヨの高い体温と、片腕サイバネ義手の冷たさが、マナブに触れていた。マナブはまだ喜ぶ暇も無かった。ストリートのルール。最後まで気をぬくな。今にも焦げ付きそうな頭をフル回転させ、監視カメラ地図を頭に思い浮かべ走った。オチヨのナビで、近くのアパートへと。

2016-04-12 01:48:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」カラテを振り絞り階段を駆け上がる。何階かも解らない。エレベータを使う頭も無い。だがそれがエレベータ監視カメラを避けるサイオー・ホースをもたらす。オチヨが鍵代わりのサイバネ義手で家のドアを開ける。洗濯物が干された薄汚いワンルームへ。安全な避難所へ。

2016-04-12 01:51:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オチヨは背中から降りる。電気はつけない。窓の外から差し込むネオン光が、暗い部屋の中で二人を照らす。「逃げ切ったか……」マナブが息を吐き、汗だくのTシャツメンポを脱ごうとした。だが、オチヨがその手を止めた。マナブが見たことのない目をしていた。「アタシ今、体温何度あるんだろ」「ア?」

2016-04-12 01:58:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ねえナブ、前後しよう」「……ファック?」マナブは己の耳と、オチヨの正気を疑った。少し様子がおかしかった。ニンジャの熱狂が何らかのケミカル反応を起こしているのだろうか。解らぬ。マナブの目の前に、オチヨの肉感的な唇とピアス。舌。そして、汗の匂い。「……今することか?」「今すること」

2016-04-12 02:04:33