化石発掘家になる夢をあきらめ自殺した男の独白 10
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「君、それは世の中が悪いよ。僕という必死かつ誠実に生きようとしている人間を頑ななまでに拒絶し、飢え死にさせようと毒牙を向け続けているのだからね。彼らは僕に君が言うそのアルバイトの仕事すらろくろく与えてくれなかった。君、時代がね、環境が悪いんだよ」
2016-04-13 06:56:16「そんな陳腐な文句で逃げるのですか?いまどき拗ねこびた中学生だってそんな情けのない逃避はのしかたはしませんよ?」 「君などにはわかるまい。この世は間違いなく強烈な悪意を持って僕を殺そうと試みている。それは僕だけが知っている事実だ。
2016-04-13 06:57:05それがオカルトであるというのなら、あるいは『淘汰圧』という科学的用語に置き換えることもできるかもしれない。その中で誰も救いの手を差し伸べ てくれないこともわかってる。身をもって思い知っている。君達はみなどうせ自分の意志で動いているつもりなっているのだろうが、
2016-04-13 06:57:24少なくとも僕と接する際には世界の邪欲の手駒となって操られているにすぎないのだ。だから端から君の頼りは期待していないよ。君がアルバイトであろうが世界一の富豪であろうがどの道同じことだ・・・・・・そういうこともあって僕は自殺を考えた。あまりにも借金が巨大となり、
2016-04-13 06:58:01当に返済をあきらめてなおそれがさらに膨れ上がっていくわけだからね。その脇では相も変らぬ底辺労働をするためだけの底辺労働生活が続いていて、僕はもはや呼吸をすることにすら疑問を抱くようになってしまっ た。絶望が底の底まで突き抜けて、そうなると君心が死ぬんだな。命の前に心が死ぬわけだ。
2016-04-13 06:58:49そうなると実際八割がた死んだも同然だよ。何をやっても楽しいとは 思えず、何を食べても旨くはない。それどころか自分で自分の顔を殴りつけてみてもさして痛いとも感じず、最終的には死への恐怖がどんどん薄くなっていくわけだ。むしろ死んだほうがまだ何かあるかもしれなという、
2016-04-13 06:59:31根拠のない霞のような期待が目の前に広がり、その奥にある黄泉の世界にしきりといざうのだね。こうなってしまうと君人間は本当におしまいだよ。死神に取り付かれてしまったようなものさ。僕は自殺を考えた。サハリンでね。理由は今でもよくわからない。
2016-04-13 07:00:19恐らくはパラオの対極、日本国外にある北方の島で死にたかったのだろう。ある雨が降りしきる昼間、失業中にもかかわらずアルバイトの面接にすら出かけられなくなっていた僕はとうとうたまりかね、発作的に特急列車に飛び乗った。サハリンへの航空便が出ている空港へ向けてね」
2016-04-13 07:02:02