「福島の子供たち:医療検査が招く問題」(シカゴトリビューンの社説"Editorial: The children of Fukushima: When medical tests mislead"をざっと訳してみた
- gomataro555
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5年前、福島原発事故によって陸と海に極めて有害な放射線がまき散らされた。以来、日本も他の国々も、原子炉が機能しなくなった理由と、同じような災害を防ぐ方法について、多くの教訓を得ている。
2016-04-17 21:35:59日本の公衆衛生当局は、1986年のチェルノブイリの核事故後、ロシアの子供に甲状腺癌が増えたことを意識していた。そこで、研究者らは、福島地域の30万人を超える18歳以下の子供たちに対して、甲状腺癌につながる怖れのある甲状腺異常のスクリーニングを実施した。
2016-04-17 21:36:28科学者が最初に得た知見は不安を呼んだ。検査によって、福島の子供には、原子炉の放射線に曝されていない日本の他の地域の子供に比べて約30倍の初期甲状腺癌の症例が見つかったのだ。
2016-04-17 21:36:56多くの子供が生検を受け、さらにその一部は甲状腺を摘出された。この手術はリスクがある上、生涯に渡る甲状腺ホルモン剤の服用が必要になることを意味する。
2016-04-17 21:36:59疫学者は次のように説明している。癌の所見の大半は、放射線リスクが増したためではなく、何万人もの子供に対して高感度の超音波機器を使って甲状腺癌のスクリーニングが実施されたためである。通常、こうした子供に対するスクリーニングは行われないので、異常は見つからない。
2016-04-17 21:37:49当初、科学者は福島の子供の結果を日本全国の子供と対比していた。しかし、同じ高感度の超音波機器が日本の他の地域の子供のスクリーニングにも使用されるようになると、多数の甲状腺癌が同様に見つかり、30倍の違いはなくなってしまった。
2016-04-17 21:38:07つまり、スクリーニングの規模を大きくすれば、福島の子供に限らず、より多くの初期甲状腺癌が見つかるのである。韓国の医療当局は、政府が1999年に超音波による癌の広範なスクリーニングを導入してからの同様の知見を報告している。
2016-04-17 21:38:17甲状腺癌はまれな病気であり、通常はゆっくり進行する。福島の子供に超音波検査で見つかった異常の多くは、治療の必要な癌に進行することはないだろう。
2016-04-17 23:17:10原子炉のメルトダウンのせいで子供の甲状腺癌死が異常に増えることはありそうにない。甲状腺を摘出された子供の中には、しばらく経過観察したほうがよかった例があるかもしれない。
2016-04-17 21:39:20福島の子供たちから得られた教訓は、徹底したスクリーニングを行えば、より多くの病気が見つかるが、必ずしも治療すべき病気が増えるわけではないということだ。
2016-04-17 21:39:29この現象を過剰診断と呼ぶ。スクリーニングによって治療する必要のない癌が見つかる。もしあったとしても進行が遅いからだ。放置しておいても、おそらく問題は生じない。だが、些細な異常と最終的に病気になるものを区別するのは困難なこともある。
2016-04-17 21:39:41検査によって命が救われることもある。だが、検査が過剰診断につながり、最悪の場合には過剰治療につながることもある。医師に相談することだ。なぜなら、知らなくても無害なこともあるけれど、知るのが有害なこともあるからだ。
2016-04-17 21:40:06