ニンジャカタナLocation#225 Last Chapter『Home.02』

カクヨムにて連載している『ニンジャカタナ』Twitter連載分まとめです。以前投稿していたLocationNo.93はプロト版となっており、現行連載との繋がりは一切ありません。その他、本編は下記より!カクヨムURLhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054880208335
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りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

今からTLで公開する 『ニンジャカタナ!』 は、カクヨム上で公開している作品の最新話部分になります。全話URLはこちら! kakuyomu.jp/works/11773540… pic.twitter.com/G7RQzpXFO3

2016-04-25 21:23:47
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りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

現在連載中のLocation#225に関しては、今回と次回の更新で完結予定です。 また、#225の完結後は、本来のTwitter連載用アカウント、 @NJkatana  にて、連載を継続する予定です。

2016-04-25 21:25:26
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

それでは、しばしTLをお借りします。 どうぞラジオ感覚で気軽に流し見していただければ光栄です!

2016-04-25 21:26:26
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

ニンジャカタナLocation#225 Last Chapter Home.02 ――――――――――――◆

2016-04-25 21:27:17
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

――光る海。 225番コロニー外れの浜辺。薄手の外套をまとった一組の男女が、降り注ぐ緑光の中で輝く波間に目を向けていた。 「わあ――見て、母様! ミドリムシがこんなに沢山!」

2016-04-25 21:28:59
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

まだ子供と呼べる年頃の少年が、その双眸をきらきらと輝かせて振り返る。 蒼い髪、蒼い瞳のその少年は、周囲を舞い踊る緑光の粒子に手を伸ばしては、手の平をすり抜ける光を見て屈託のない笑い声を上げる。 「そんなにはしゃいで、転んだりしないようにね?」

2016-04-25 21:30:48
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

母親とおぼしき女性は少年のその様子に苦笑しつつも、優しげな表情で少年を見守っていた。 純白の長い髪を一つにまとめ、機械的な程に整った美しい容貌。しかし彼女の両目はしっかりと閉じられ、足が不自由なのか、特殊な形の杖をついている。

2016-04-25 21:33:18
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

「これが、ぼくの兄様の力なんだね。いまのぼくにはとても真似できない――」 「いいのよ。あなたには、あんな力よりももっと素敵な力がある」 ふと、残念そうな顔を見せる少年をなぐさめ、励ますように、母と呼ばれた女性はまぶたを閉じたまま少年の側に歩み寄り、少年の蒼い髪を優しくなでた。

2016-04-25 21:35:09
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

「うん――わかってる。ぼく、兄様に勝てるように頑張るから」 「焦ってはダメよ。あなたまで失ったら、私は生きていけない」 「はい、母様」そう返事をする少年を優しく抱きしめたあと、母は浜辺に背を向けて歩き始めた。 「――先の話ではないわ。あなたが、アレを倒せるようになるのは――」

2016-04-25 21:37:47
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

先ほどまでの穏やかな声色から一転。 明確に殺意と憎悪をはらんだその声に、少年は僅かに怯えた表情を見せる。だが、少年はすぐに気を取り直して笑みを浮かべると、母の後を追い、その手を握った。 「ぼくがやるよ。母様の代わりに、ぼくがなんでもやってあげる」

2016-04-25 21:40:09
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

呟くように言った少年はしかし、ふと何かを思いついたように握った母の手を離すと、背を向けた浜辺を振り返り、笑みを浮かべて声を上げる。 「せっかく兄様の側に来たんだ。記念に少しだけ持って帰ろっと!」 空に向かってかざされる少年の手。その手には、刀身のない漆黒のブレード。

2016-04-25 21:42:23
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

次の瞬間、ブレードを中心に赤色の放射が正円に広がる。その場に形成される小型のエネルギーフィールド。 その場を楽しげに舞い踊っていた緑光がフィールドに触れ、次々とその色を変えていく。緑から、赤へと――。 「もしかしたら、これで気付いてくれるかもしれない。兄様、また今度ね――」

2016-04-25 21:45:08
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

「気は済んだ? さあ、行くわよ。カタナ」 「うん、母様」 そのまま、二人の姿は夜の闇に消える。後に残されたのは少年の作った小さな円――。 あらゆる色を失い、黒と白、そして灰色のみとなった、小さな死界であった――。

2016-04-25 21:47:41
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

クランの襲撃から一夜が明けた。 オールセルを構成する島々。 そこに点在する街の各所で、建物や施設を修理する音と、それに伴う白い煙が立ち昇っている。 人々は昨日の災禍など忘れたかのように笑顔を浮かべ、街は活気に満ちていた。

2016-04-25 21:50:11
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

クランの、特にフォートレスの攻撃では多くの被害が出たが、攻撃によって出た死者は驚くべきことにゼロ――。否、恐らく、それはゼロに『なった』のだ。 なぜなら、救出された者の中にはリーゼ達が戦い、容赦なく撃墜したクランのメンバーすら混ざっていたのだから――。

2016-04-25 21:52:44
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

人的被害が出なかったとは言え、盛大に破壊された建物まではどうしようもない。だが、こちらもオールセルは商魂たくましい商人の街――。 物が壊れれば、次は彼らの出番。災禍は商機。既に多くの商人が今回の損害と、それによって生まれる利益の計算を導きだし、多数の物資を運び込んでいた。

2016-04-25 21:55:40
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

そんな活気溢れる街の上。 どこまでも広がる青空と寄せては返す青い海。 いま、それらの青に複数の影を落とし、ユニオンの大船団が、225番コロニーに寄港しようとしていた――。

2016-04-25 21:58:06
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

「お兄様!」 「オルガ――。無事でよかった」 225番コロニー、軍事用メインドック。 オルガはタラップから降り立った金髪の青年に勢いよく抱きつく。その青年の背後には銀髪の少年と少女。二人はやや不満げな表情でオルガと青年を見つめた。

2016-04-25 21:59:51
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

「お久しぶりです、オルガ様。第二基幹艦隊、要請により入港完了しました」 「キアラン提督。突然お呼びだてしてしまい、すみませんでした」 オルガは兄と呼んだ金髪の青年――メダリオンから離れると、姿勢を正して見事な髭を蓄えた壮年の男性、キアランに対して頭を下げた。

2016-04-25 22:01:52
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

見れば、オルガの着衣は汚れたまま。彼女自身も随分と煤をかぶっている。彼女がこの島で受けた苦労は、キアランだけでなく、その場に居合わせた全員が容易に推しはかることができた。 「メダリオン猊下。キアラン提督。第四基幹艦隊所属。ラジャン・シン。及び、アニタ・グランツェールです」

2016-04-25 22:03:43
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

「うむ。二人とも、この度はご苦労だった。貴官らの働きが無ければオールセルはより大きな被害を出していただろう。今回の貴官らの活躍は、盟父にもお伝えすることになる。――また勲章が増えるな」 「身に余る光栄。感謝します」

2016-04-25 22:06:07
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

後方に控えていたラジャンとアニタがすかさず最敬礼を行う。それに対し、キアランは労をねぎらうように二人に頷いた。 「しかし今回の件、我々が受けた要請では、フォートレスと――」 「はっ! しかし、フォートレスは……」 「ニンジャによって撃破された……そうですね? オルガ」

2016-04-25 22:08:35
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

そこで、メダリオンはその穏やかな瞳をオルガに向けそう言った。その言葉に彼女は一瞬驚いたように目を見開くが、すぐに兄の持つ超越者の力に思い至ったのか、気まずそうに目を逸らす。 「――そういうことでしたか」 オルガのその様子に、キアランは後方に控える神経質そうな青年に目配せする。

2016-04-25 22:11:40
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

青年は一歩前に進み出ると、その手に持ったモニターボードをキアランに手渡した。 「実は、我々も一週間前にニンジャと交戦したのです。遭遇した位置から考えて同一人物の可能性があります。詳細はこれから確認しますが、まずは盟父にご報告を、と」

2016-04-25 22:14:00
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

そこには間違いなく、崩壊した会場でオルガ達を守るために戦った蒼髪の少年の姿。そして画像に重ねて表示される『討伐対象』の文字――。 「ま、待って下さい! あの方は、お父様やお兄様が言っていたような、恐ろしい方ではありませんでした!」

2016-04-25 22:16:10