【Голубй крейсер-空色の巡洋艦】

初霜×グラーフという珍しい組み合わせ
1
前へ 1 ・・ 11 12 次へ
葛葵中将 @katsuragi_rivea

滴る血で滑りそうになる鎖を無我夢中で繋ぎ止めながら初霜はすぐさま次の行動へと移る。 片手に握る主砲の基幹部を体に押し当て―――九◯方に向け発砲。反動を利用した急速旋回を開始。 遠心力に全身の体重を預け… ―――このまま船体をぶつける!…少し、強引ですけどね

2016-10-29 00:05:13
葛葵中将 @katsuragi_rivea

通常の思考であるとするならば、この選択はしない。 艤装同士の衝突は損傷を避けられず最悪の場合、沈没にまで至る。 それでも相手は今、速力も失いバランスを崩している。ここで足を止めるにはこの選択肢しかない―――初霜は腹を括る

2016-10-29 00:07:04
葛葵中将 @katsuragi_rivea

―――きっと、うまくいきます、よね…。でも 死角からの決死の体当たりを仕掛ける合間に初霜は…近づく空色の外套の色を目にし、一瞬だけ躊躇した。 ―――下手をすれば、彼女を沈めてしまうかもしれない。 彼女は敵。頭では理解はしていても心がそれにまだ追いついてはいない。

2016-10-29 00:09:13
葛葵中将 @katsuragi_rivea

例え敵であろうと、その存在にも大事な人がいて帰りを待っているのかもしれない… ―――その一時を奪う権利が…私に? 相手は人間だ。それも自分やグラーフと同じ…艦娘。 そうであったとしても…こちらにも護るべき者がいる。守るべき物がある。

2016-10-29 00:10:20
葛葵中将 @katsuragi_rivea

残酷な現実が世の常であり真理、自身の心を欺き、出した結論に従い…邪念を振り払い、決定打となる一撃を放った。 ようやく接近してくる初霜に気づいた目標は…受け入れるかのように笑った ―――これで、おしまいです! 初霜は目を瞑り、やがて訪れる衝撃に備えた。

2016-10-29 00:11:43
葛葵中将 @katsuragi_rivea

―――だが、 「お見事…と言いたいところだけど」 ―――それは、 えっ? ―――その瞬間は、 「惜しかったね、あと0.1秒…足りないよ」 訪れることはなかった。

2016-10-29 00:13:00
葛葵中将 @katsuragi_rivea

初霜は不意に目標が自国の言葉を口にしたことに完全に虚を突かれた。 先程まで異国の言葉を発していた目標がどういう意図があってそれを口にしたかはわからないが… その思考は直ぐに自身の置かれた状況を悟ると心層の彼方へと消えた。

2016-10-29 00:14:43
葛葵中将 @katsuragi_rivea

身体が浮き上がり、無防備な状態で宙へと投げ出されていることを知覚し、初霜は肝を冷やした。 「君は…優しい子なんだね。」 先程の戸惑いと躊躇いの一瞬は相手に対処、反撃の時間を与えたのだ。 「実に…残念だよ」

2016-10-29 00:16:45
葛葵中将 @katsuragi_rivea

何が起こったのかは全く呑み込めない。視界は反転し、落ちる自身と対照的に浮き上がる水滴がこの絶対的危機を告げる。 「初霜!」 グラーフの声が耳に届く。 ―――絶対に振り向かないで、と言ったじゃないですか… 本来なら、決死の策が上手くいって彼女と共に撤退していた筈…だったのに

2016-10-29 00:17:54
葛葵中将 @katsuragi_rivea

(お前は…優し過ぎるんだ。最後の最後で詰めが甘い。演習なのだから、相手を撃つことに躊躇するな) 姉妹艦の若葉が言った言葉を思い出す。彼女だけではない、所属する艦隊の仲間も、 司令官である葛葵も、嚮導艦たる神通も、全員が同様のことを口にした。

2016-10-29 00:18:54
葛葵中将 @katsuragi_rivea

彼らは…その自分の気質を強く責め立てることはしなかった。自身もそれに甘えてしまっていた… それが今まさに結果として自身に突き立てられる矛が刺さる瞬間へと繋がったのは言うまでもない。 空色の巡洋艦、彼女が振り抜く脚部の先端、爪先から…未知の衝撃波が放たれた。

2016-10-29 00:20:12
葛葵中将 @katsuragi_rivea

漸進的に進む光景。目に見えない’’牙"が周囲の水滴を砕きながら近づく。 ―――ごめんなさい。グラーフさん…提督…皆さん… 四肢をもがれるような激痛に襲われ金切り声をあげる初霜に空色の巡洋艦は冷徹な言葉を手向けに贈った。 「―――さようなら、君は…勇敢だったよ」

2016-10-29 00:21:06
葛葵中将 @katsuragi_rivea

Никогда не встретиться снова -安らかに、眠れ-

2016-10-29 00:21:48
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「おや?まだ生きてたんだね。君、もしかしてオリジナル?」 軽快な声が朦朧とした意識の中にフィルターがかかったような音声で耳の中で響き渡る。 「それなら丈夫なのも頷けるかな。珍しいもの見た…いい土産話になるかも」

2016-10-31 22:15:44
葛葵中将 @katsuragi_rivea

声を見上げるように重い瞼を開けるとそこには、顔を覗き込む… 争いを繰り広げていた相手が初霜を嘲笑うかのように見下ろしていた。 身体は身動きを取ろうにも言うことを聞かない、走る痛みが五体だけは満足であることを教えてくれていた

2016-10-31 22:17:07
葛葵中将 @katsuragi_rivea

どれだけ意識を失っていたかも定かでは無いが、差し込める日の角度が さほど時間が経ってはいないことを示す。戦いは相手の勝利という形で幕を引いた…。 向けられる四つ、灰色の瞳がその現実を突きつけて来る。 ―――グラーフさん…!

2016-10-31 22:18:34
葛葵中将 @katsuragi_rivea

護ろうとした、彼女…グラーフ・ツェッペリンは敵の傍らに力無く膝を海面に付けていた。 「初霜、すまない…」 グラーフはおそらく初霜が気を失った後に、激しく抵抗した。身体中いたる所に痛々しく残る生傷がそれを物語る。

2016-10-31 22:20:03
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「あぁ、安心して?君よりずっと軽傷だから、大切な同志となるから…それは当然だよね」 グラーフが睨みつけることを意に介さず空色の巡洋艦は飄々と言ってのけた 相手は目的を達した。初霜を、グラーフを屈服させ…任務を完遂したのだ。

2016-10-31 22:21:12
葛葵中将 @katsuragi_rivea

―――私に、力が無かったから… 握られる小さな拳の中に、自身の血が溜まり海へと溢れた。 「でも君も惜しいところまではいってたね。躊躇いさえしなければ危なかったかも」 目標が紡ぐ言の葉には些かも気持ちなど篭ってはいない…最初からそのつもりは無かったのだろう

2016-10-31 22:22:18
葛葵中将 @katsuragi_rivea

意識を失う寸前に見たあの未知の技と、舞う薄ら紅の花弁。 それらは目の前の敵、空色の巡洋艦が最初から最後まで初霜達を弄んでいただけに過ぎないことを表していた。 貼り付けられた偽りの笑顔。その裏には…自らの力を前に下した相手への侮蔑が込められている。

2016-10-31 22:23:35
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「えっと…初霜、だったっけ?そろそろ、お別れ。何か最後に言いたいことはある?」 ―――ここで終わるなんて…嫌だ… 自分はどれだけ侮辱されようと構わない。だがせめてグラーフだけでも、助けたい。その一心から初霜は自らの手に固定してあった主砲を握りしめた

2016-10-31 22:24:42
葛葵中将 @katsuragi_rivea

―――無駄だね。目標の口の動きを認めた瞬間。横腹に衝撃が走る 「…最初から、覚悟も無かったくせに…!ふざけんなよ!!」 激昂した目標の叫びが、怒りが、殺戮者の牙となって身体へと突き刺さった 「炸薬の入っていない弾や魚雷で私を殺せると!?止められるとでも!?」

2016-10-31 22:26:01
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「ほら!撃ってみろよ!!私を殺してみせろ!!」 ―――見抜かれて…いたんですね インターフェイスの端には残弾を示す数字が表示されていた。 コロンボ泊地、つるみだけを出る際と変化が無い"実弾の数"、 それこそが自身の甘さそのものを体現するかの如く突きつける

2016-10-31 22:27:51
前へ 1 ・・ 11 12 次へ