【Голубй крейсер-空色の巡洋艦】

初霜×グラーフという珍しい組み合わせ
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葛葵中将 @katsuragi_rivea

吹き飛ばされ海面に叩きつけられながらも体勢を瞬時に戻すも、相手の攻勢は更に続く… 距離一◯◯◯―――距離を取ったかと思えば次には鼻先をかすめるような攻撃を見舞ってくる。 砲撃、雷撃、更には近接戦闘、対処―――対処、対処。 目まぐるしく襲って来る状況に身体は悲鳴をあげる。

2016-10-28 23:25:12
葛葵中将 @katsuragi_rivea

手を休めることはない相手に防戦一方へと追い込まれた初霜であったが、先程の決意に偽りなど、無い。 ―――絶対に、負けない。絶対にグラーフさんと一緒に…帰ります! 降りしきる豪雨のような猛攻に晒されながらも戦意は一筋も衰えさせず、決して諦めることはしなかった。

2016-10-28 23:27:42
葛葵中将 @katsuragi_rivea

そんな中だった。目標は速力の維持に注力しているのか、 撃ち落とされたグラーフ攻撃隊、その一機が自身の側の海面に落ちているのを見逃した。 足元の側面に触れたその時、彼女が体勢を僅かながらによろめかせるのを初霜は目ざとく…見逃さなかった。 ―――これしか、無い。閃きが走る。

2016-10-28 23:28:59
葛葵中将 @katsuragi_rivea

残された勝算は…一つだけ、訪れるその瞬間に全てを賭けるより他ない。二度目のチャンスは、存在しないだろう。 魚雷次発装填は完了している。滲む汗を掌に初霜は手に持つ主砲を強く握り、構えた。 一度のミスが文字通り命取りとなるやり取りに全てを委ねる覚悟を決め、肝を据える。

2016-10-28 23:30:19
葛葵中将 @katsuragi_rivea

目を離せば次の瞬間には既に目標は別の方角へと移動している。 こちらから肉薄し近づくにも距離は遠ざけられる一方。―――ならば、 「逐次回頭!…戦線を離脱します!」「!…了解した!!」 初霜の号令にグラーフは了承の意を返す。多少の怪訝そうな表情が一瞬彼女の顔に貼り付けられた。

2016-10-28 23:31:28
葛葵中将 @katsuragi_rivea

逃げることを選択したところで追いつかれることは目に見えている。 それを初霜も承知の上であることをグラーフは察していた。それでも彼女は 「わかった。君を、信じる。」言葉では無い言葉を瞳に乗せ、視線を送ると身を翻す。背に刻まれる信頼を初霜も真摯に受け取った。

2016-10-28 23:33:04
葛葵中将 @katsuragi_rivea

―――任せて下さい。貴方は、私が…護ります 「両舷強速!」 ―――だから決して、振り向かないで下さいね。小さく口にした言葉は波の音にかき消された。 グラーフの背を追い、舵を切った初霜は瞼を静かに閉じ、高まる鼓動に意識を預け精神を一点のみに集中させる

2016-10-28 23:34:22
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「Не избежать!」-逃さない!- 初霜達の急な転舵に気づいた目標も後を追跡するために進行方向を変える。 敵にとってそれはある意味、好都合でもあった。 グラーフだけを連れ去るのに障害となる初霜のみを狙えることとなる背後を容易に取れる状況は目標に取って非常に有利。

2016-10-28 23:36:57
葛葵中将 @katsuragi_rivea

直線上に並び、後は砲の仰角のみを調節し発砲するだけで邪魔者は排除出来る。 ―――おそらくそう考えているでしょうね。 初霜は想定通りに背後に回る空色の巡洋艦を流し目で強かに睨みつける。これは一か八かの賭け…

2016-10-28 23:38:06
葛葵中将 @katsuragi_rivea

ふと見た視界の端に肩の上に乗る艤装妖精の姿が映る。彼女は初霜の決断…意思を総員に伝令が終わったことを耳打ちで告げた。 「機関長以下、了解」「雷撃準備完了。いつでも行ける」「一蓮托生!乗員は貴方と共にある」 同時にインターフェイスに表示される文字。彼らの総意が初霜の背中を押した

2016-10-28 23:39:26
葛葵中将 @katsuragi_rivea

―――みんな…ありがとう。 自らの考え、戦法を実行するには…おそらく彼女達の犠牲も少なからず伴う。それでも快く了承した彼女らに感謝の言葉を小さく口にした初霜は踵を返した。 波を軽快に滑るように身を預け、艤装後部のハッチを一つ開放した。―――煙幕缶、解放。

2016-10-28 23:40:43
葛葵中将 @katsuragi_rivea

視界の撹乱、艦の姿を隠蔽することを目的とした紫煙は初霜の後方から風に巻かれる形で流され… 相手目標前方の視界を塞ぐ形で発生した煙は瞬く間に目標をも包み込んだ 「сумрачный」-あぁもう、鬱陶しい!- ―――今しかない!目標が一瞬怯むのを機に、初霜は行動を起こした。

2016-10-28 23:41:59
葛葵中将 @katsuragi_rivea

進行方向、速度をそのままに慣性に身を委ね、180度体を捻り回転。 「主機、逆回」の文字が眼前に表示される。 足元艤装、その主機が軋む音が船体に伝わる。一気に機関に負担をかけたため危険回転数に達したことを示すALERT音も鳴り響く。それに意識を移す余裕すらも初霜には無かった。

2016-10-28 23:43:04
葛葵中将 @katsuragi_rivea

―――…転覆…してたまるものですか! 崩れそうになる安定性を開脚と片手を海面に付くことで堪え、目標と正面から向かい合う形を…必死で作り出した。 "スイッチバック"、演練の際に嚮導の神通が一度だけ見せた神業にも近い妙技を初霜は経験の層が積み重なる記憶から引き出し実行に移した。

2016-10-28 23:44:45
葛葵中将 @katsuragi_rivea

通常、艦のブレーキ機能というのはスクリューの逆回転に依存している なるべく早く速力を落とすために通常回転同様、逆回転にも同じ規模の駆動力、馬力を有している。 これを通常回転から瞬時に逆回転へと転換。

2016-10-28 23:48:29
葛葵中将 @katsuragi_rivea

逆回駆動力を背面航行に用いることで速力を前方方面に向かうことを維持したまま正面からの撃ち合い、"引き撃ち"と呼ばれる戦法が可能となる 元々、背面航行という技術自体が高練度を必要とする航法であり 加えて急激な体勢変更を行うことは船体の安定性に支障をきたす可能性が非常に高い

2016-10-28 23:49:05
葛葵中将 @katsuragi_rivea

(実戦で使うには…少々、難しいでしょうね) 嚮導である神通の真似事をしてみてこれまで成功した試しは…一度も無かった。この土壇場において成功したことで一時の安堵を得る。 冷や汗が頬を伝う…顔には苦笑が浮かんだ。

2016-10-28 23:50:32
葛葵中将 @katsuragi_rivea

初霜の目論見は相手に背後を取ったという優位性にあえて立たせることで、油断を誘いその意表を突く、ということ。それに加えて… (相手が速ければ速いほどそれが裏目に出て不利になる状況、それは…真正面からの撃ち合い、かな) 司令官である葛葵がかつて提示した一か八かの戦法がある。

2016-10-28 23:52:00
葛葵中将 @katsuragi_rivea

(相手のほうが速いなら、後ろに付かれるほうが不利。だったら思い切って正面からの撃ち合いに臨んでしまえっていう考えだ もちろんデメリットが存在しないわけではない。正面切っての撃ち合いに臨むため 自らの身をも危険に晒す。互いに同じ条件に身を置いての攻防は一瞬で勝負を決するだろう)

2016-10-28 23:54:04
葛葵中将 @katsuragi_rivea

…恐れを抱かないわけではない。だがそれでもこの場を凌ぎグラーフを守るためには、彼女の信頼に応えるには…これしかない 目標の周囲が再び熱を帯びた歪を作り出すのを確認した瞬間に初霜は意を決する。 あの超加速を発動するには僅かのラグが存在している。そのタイミングに併せ…

2016-10-28 23:55:47
葛葵中将 @katsuragi_rivea

―――全力となる一手を、打つ!

2016-10-28 23:56:14
葛葵中将 @katsuragi_rivea

圧搾空気が甲高い音を響かせる。 脇に抱えた発射管から放たれた魚雷は相手の速力と目標へとまっすぐに向かう。相対的に高速で接近、相手が速力に優れれば優れるほど回避が非常に困難な攻撃となる。 射線をなるべく多く…多方向に雷撃を撃ち出し、策略が成功することを必死に祈った。

2016-10-28 23:58:36
葛葵中将 @katsuragi_rivea

目標は…敵はおそらく"横揺れ"に弱い。先刻、空色の巡洋艦が体勢を崩したことから推測した初霜はその一点に望みを賭けた。 撒かれた紫煙に隠れ、相手は魚雷をまだ確認出来てはいない… ―――この攻撃で間違いなく目標は体勢を大きく崩す。その確信は現実へと変わる

2016-10-28 23:59:47
葛葵中将 @katsuragi_rivea

向かう魚雷を視認した空色の巡洋艦は苦虫を噛み潰した顔を顕にする。 「О оснастке!неизбежный」-これは…!ちょっと予想外…っ!- 策の成功は読み通りに目標、空色の巡洋艦がバランスを崩し蛇行することに現れた。

2016-10-29 00:00:49
葛葵中将 @katsuragi_rivea

一度、発動しかけていた目標の特殊な艤装周りには空気の歪みも無い。―――好機! 煙の中に隠したもう一つの"手段"を目一杯の力を腕に込め、引き寄せた。 それは、魚雷発射と同時に下ろした主錨の鎖。その重みが表皮を抉る痛みを掌に伝えてくる

2016-10-29 00:03:41
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