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NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
【スルー・ザ・ゴールデン・レーン】
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ネオサイタマ市街。灰色の摩天楼の谷間に宝石のように浮かぶ高級ブティック街。「愛」と書かれた淡い青と桃色のネオンサインが、真っ白なショウウインドウに入ったオテモ社製最新型オイランドロイド2体を彩る。彼女らはプログラムされた通り、細長いショウウインドウの中でキャットウォークを続ける。
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通りは賑わっている。多くはクリスマスに向けてプレゼントを探す市民たち。洗練された最新のモードに身を包んだハイ・サラリマンや、清楚なドレス姿のグレーター・オーエルも多い。そして今、このショウウインドウ前を、ソフトハットを目深に被り、サングラスで目元を隠したスーツ姿の男が歩いていた。
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ヨロシサン製薬の美容遺伝子操作由来でもなく、またスガタ社製のガイオン・ミヤビナIV型人工皮膚由来でもなく、この男の肌は生まれながらのアルビノで、彼の頬はネオンの色を受けて仄かな青色に染まっていた。このスーツの男は歩きながら、ショウウインドウ表面に並ぶ白いブランドロゴ群を一瞥した。
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大手オイランドロイドメーカー、オテモ社のロゴの横には、四枚翼のオイランの意匠。それこそはピグマリオン・コシモト兄弟カンパニー社の紋。人工知能分野において20256の特許を取得し、オイランドロイドの会話性能に革命をもたらしながらも、オフィスの物理座標すら不明という謎めいた企業だ。
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かつてピグマリオン社がオムラ・メディテック社と提携し、偉大なるネコネコカワイイの人工知能を開発した事で、オイランドロイドは一大産業となった。そして今や、オナタカミやヨロシ、オテモ社などのプロダクトを筆頭に、市場に流れるドロイドの8割以上が彼らのAIとマイコ回路を採用しているのだ。
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スーツ姿のその男は、少しの間だけ立ち止まると、掌をショウウインドウに押し当てた。樹脂で覆われた指輪がガラスにぶつかってカチャリと小さく鳴った。キャットウォーク歩行を続けるオイランドロイドを見上げながら、彼は無表情に何かを唱えた。その祈りは摩天楼や上空からの広告音声でかき消された。
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彼は通りを見渡しつつ、洗練されたサラリマンの動きで腕時計を見た。誰かとビジネスの待ち合わせか、あるいはオイラン・エスコートを待つ風であった。実際このショウウインドウ前は認識しやすいスポットのひとつである。彼はショウウインドウの反射で襟元を確かめながら、少しの間そこに佇もうとした。
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だが、敵は彼を休ませようとしなかった。上空を飛び交う戒厳ドローンの積載カメラ、ショウウインドウが置かれた高級デパートの防犯カメラ、そして横を歩く市民のサイバーグラスカメラ。ゾワゾワと、見えない敵の視線が集う。男は虫の羽音を聞くように、その電子的気配を感じ取った。アルゴスの気配を。
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男はソフトハットを目深に被り直し、雑踏に紛れ、足早にその場から去ろうとした。だが前方からは既に、市民に比べて頭一つ背高い、屈強なハイデッカーの治安維持巡回部隊が近づいてきていた。男は踵を返し、もと来た道を帰ろうとした。だがその先からも別のハイデッカー部隊が迫っていた。挟み討ちだ。
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男は細身で、無論ニンジャですらない。ハイデッカーを相手にカラテで活路を切り開くことなどできない。「スミマセン、急いでいます」彼は市民の流れに逆らいながら、走り出した。逃げ場はビル内しかない。「「「スッゾコラー、市民!」」」これを察知したハイデッカーは市民を強引にかき分け、追った。
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男は大ショウウインドウの横を曲がり、高級デパート内へと逃げ込むべく、短い階段を上る。「「「ザッケンナコラー、市民!」」」追いすがるハイデッカーらは暴徒鎮圧ショットガンをコッキングし、走り去る男の背中を狙った。その直後、凄まじいガラスの破砕音が鳴り、二つの人影が彼らに飛びかかった。
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それは白下着とバイオ毛皮コートを纏った、2体のオイランドロイドであった。「「グワーッ!?」」予想外の奇襲を受けた先頭のハイデッカー隊員は、ショットガンの射撃に失敗し、散弾は高級デパート入口の大ガラス扉を粉々に破壊した。「アイエエエエエ!」市民らは銃声と破砕音に驚き、悲鳴をあげる。
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男はデパートの奥へと逃げた。電脳魔術じみて突如動き出したオイランドロイド2体は、しかし素体が非戦闘用ゆえに敵全員を押しとどめることなどできず、ハイデッカー2人にマウントして首絞め足止めするのが精一杯であった。ハイデッカーの数は多い。すぐに、後続のハイデッカー隊員たちが男を追った。
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『潜伏中のテロリスト発見ドスエ』『市民のご協力に感謝するドスエ』戒厳ドローンから電子警告音声が発せられる中、後続隊員が馬乗りオイランドロイド2体の後頭部に密着射撃を行った。2体のドロイドは火花を散らし、果てた。「愛」と書かれた青と桃のネオンサインが、その一部始終を照らしていた。
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男はデパートの奥へと逃げた。電脳魔術じみて突如動き出したオイランドロイド2体は、しかし素体が非戦闘用ゆえに敵全員を押しとどめることなどできず、ハイデッカー2人にマウントして首絞め足止めするのが精一杯であった。ハイデッカーの数は多い。すぐに、後続のハイデッカー隊員たちが男を追った。
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『潜伏中のテロリスト発見ドスエ』『市民のご協力に感謝するドスエ』戒厳ドローンから電子警告音声が発せられる中、後続隊員が馬乗りオイランドロイド2体の後頭部に密着射撃を行った。2体のドロイドは火花を散らし、果てた。「愛」と書かれた青と桃のネオンサインが、その一部始終を照らしていた。
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男は逃げる。帽子が落ち、白髪があらわになる。彼の名はエシオ・カタリ。ピグマリオン社のエージェント。そして今は、アマクダリの標的である。アルゴスはデパート内に設置された監視カメラ群を用い、エシオを追跡した。ビル内に警報が鳴り響き、外部との通用口が封鎖される。逃げ道が断たれてゆく。
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アルゴスによる誘導命令を受け、ハイデッカーは最短経路でエシオを追ってくる。彼は広いファッション売場を通り過ぎながら、最新モードに身を包み無表情な笑みを浮かべるマネキン・オイランドロイドに指輪をかざした。突如、高度な人格が宿ったかのように、ドロイドは目を見開き、エシオを見て頷いた。
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エシオは足を止めず、さらに次のオイランドロイド、また次のオイランドロイドへ進む。これまでと同様に白い指輪状デバイスをかざし、ハッカー・チャントを口ずさむ。ドロイドのマイコ回路がメンテナンスモードになり、通信を開始する。ある時期以降の全てのマイコ回路には、この機能が内蔵されている。
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メンテナンスモードに入った彼女らは、秘匿通信プロトコルにより、ピグマリオン社の心臓部にあるオイランマインド集合自我のいずれか一種に接続する。それを宿し、物言わぬマネキンの自我を上書きする。エシオが8体目のドロイドを起こし終える頃、1体目が己の両手を見て、拳を握り、唇を固く結んだ。
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「「「ダッテメッコラーッ、市民!」」」ハイデッカー部隊がアッションフロアに到達する。エシオの通った後には、黒い最新のモードに身を包んだオイランドロイド8体がジグザグ状に並び、前進してくるハイデッカーに対してカラテを挑んだ。すぐに、クローン生体兵器とドロイドの熾烈な戦闘が始まった。
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オイランドロイドは死も苦痛も銃撃も恐れずカラテを繰り出し、敵を殴りつけ、組みつく。アルゴスの眼からは、エシオがドロイドを次々高速ハッキングし操っているようにしか見えない。だが実際、それはエシオによる遠隔同時操作などではない。彼女らは宿した人工知能により自動的に彼を守っているのだ。
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2016年5月10日
スルー・ザ・ゴールデン・レーン #2 http://togetter.com/li/973320
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