スルー・ザ・ゴールデン・レーン #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「「スッゾコラー、市民!」」」フロア反対側からもハイデッカー部隊が現れる。エシオはフロアの中心、一段高い場所にいる黒いウェディングドレス姿のドロイドに指輪をかざす。このフロア内で最も高機能な素体を持つオテモ社製の最高級オイランドロイド、シロウツリS-9001iが、目を見開いた。

2016-04-29 21:57:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「観賞用」「触らない」と書かれた札を蹴り飛ばしながら、シロウツリは突如全力スプリントで舞台階段を駆け下り、ハイデッカーの挟撃部隊に飛びかかった。BLAMBLAMBLAM !ショットガンの迎撃が、彼女の握る赤いマンジュ・フラワーのブーケと黒ドレス、そしてオモチ・シリコン肌を削った。

2016-04-29 22:06:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがオイランドロイドは痛みも恐怖も感じない。「カラテ!」S-9001iはジャンプカラテキックを繰り出し、2体のハイデッカーを蹴散らした。殴りかかってくるもう1体のハイデッカーを、ブーケを握った腕で連続で殴りつけて活路を開いた。エシオがその後に続く。直後、後方のガラス窓が破られた。

2016-04-29 22:11:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それは高速輸送ヘリから飛び降りたアマクダリ・アクシスのニンジャ、ブラッドチェイサーであった。彼は前転しながらニンジャソードを抜き、ヒート機構を作動させた。アルゴスに与えられた攻撃目標、エシオはフロアの奥に逃げた。前方には、生き残りのマネキンドロイド5体とハイデッカーが未だ戦闘中。

2016-04-29 22:16:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

障害を排除し、最短距離でターゲットを追う。「イヤーッ!」ブラッドチェイサーは立て膝状態から、恐るべきニンジャの瞬発力で突進斬撃を繰り出した。赤熱したニンジャソードの残光が、フロアにジグザグの線を描いた。その線の通りに、マネキンドロイドの首や胴が次々に斬り飛ばされ、火花を散らした。

2016-04-29 22:24:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブラッドチェイサーはザンシンから疾走を開始。アルゴスの誘導ナビを右のサイバネアイに受け、エシオとS-9001iを追う。エシオはスタッフ専用エリアへ逃げようとしている。「イヤーッ!」前方の回廊を走るエシオを足留めすべく、ブラッドチェイサーは低姿勢で駆けながら3枚のスリケンを放った。

2016-04-29 22:33:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エシオを狙う鋼鉄の星の飛来を察知したS-9001iは、並走を止め、両手を広げてスリケンとエシオの間へと割り込んだ。スリケンの1枚が彼女の胸に、もう1枚が彼女の腹に突き刺さって止まり、残る1枚は傷だらけの黒いドレスを突き抜けて、その先にあるエシオの脚を切り裂いた。エシオは転倒した。

2016-04-29 22:39:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

S-9001iはエシオの手を握って立ち上がらせ、すぐ前方のL字路を左へ。回廊を追跡するブラッドチェイサーの視界外へ。だがアクシスに死角無し。アルゴスが監視カメラ映像を即座に送る。曲がった先でS-9001iが待ち伏せている。エシオはやや脚を引きずり、その先のスタッフルームに入った。

2016-04-29 22:45:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アマクダリの走狗、コンクリート色の都市迷彩装束ニンジャ、ブラッドチェイサーは、素早くL字の角を曲がった。『硬い素体』『切断困難』の追加情報がアルゴスから届く。黒ドレス姿のオイランドロイドが彼を待ち受け、強烈な蹴りを繰り出した。「カラテ!」S-9001iの電子音声が、回廊に響いた。

2016-04-29 22:50:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ブラッドチェイサーはその重い蹴りを回避しながら、ニンジャソードを右手で握り、左掌で柄を押しこんで、S-9001iの心臓部に過たず突き立てた。「ピガーッ!」電子音声の絶叫。赤熱した刃が背中側に突き出た。マイコ回路が焼き切られ、オイランドロイドは表情を失って崩れ落ちた。

2016-04-29 22:54:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ターゲットは前方、スタッフルーム。もはや袋の鼠だ。ブラッドチェイサーはザンシンを行いながら、廊下に吊るされた監視カメラと、その先にいる偉大なるシステムの監視者アルゴスに対して小さく頷き、敬意を示す。そして再び、ニンジャの瞬発力で前進し、鍵の掛けられたスタッフルームの扉を破った。

2016-04-29 22:57:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

次の瞬間、ブラッドチェイサーはニンジャソードを構えながら戸口で踏みとどまり、眉根を寄せた。そう広くはない、雑然としたスタッフルーム。窓は閉められている。ニンジャでもないエシオが、ここからどこかへ脱出できたはずが無い。だが気配、呼吸音、心音、サイバネ機械音、いずれも察知できない。

2016-04-29 23:00:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アルゴス=サン、目標を見失った。何かがおかしい」彼は訝しんだ。エシオの血の跡は、机に置かれた事務用UNIXの前へと続いていた。だが、居ない。「俺が扉を破った瞬間、奴は確かに、そのUNIXの前にいた。一瞬だけ、確かに、見た。だが」ブラッドチェイサーはごくりと唾を飲んだ。「消えた」

2016-04-29 23:05:07