【ミイラレ! 目玉のこと】

オカルト存在に好かれる少年のよもやま話。
0
前へ 1 ・・ 3 4
@hiiragi_r_t_d

やめてあげて!!!いくら実害のある怪異に慣れてるからってその視線はダメージでかいよ!!!鬼!!! #4215tk

2016-05-05 20:17:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

がたがたと揺れ出した笊の中から、何かが湧き出るように出現する。ピンポン球ほどの大きさの、白い粒の山。「……ひっ!?」空木が小さく悲鳴を上げる。その粒の正体に気づいたからだろう。それは眼球だった。様々な色の瞳を持った眼球が、せわしなく辺りを見回している。50 #4215tk

2016-05-05 20:20:07
@hiiragi_r_t_d

ヒエッ……ざるより明確に目が多い! #4215tk

2016-05-05 20:22:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季は眉間のしわをさらに深くし、その眼球の山を睨みつけた。目玉の群れが一斉に見返してくる。そして四季よりも高く山が盛り上がり、さらに数を増して視線を彼に投げかける。空木が息を呑んだ。四季は目玉の山と睨み合いを続ける。空気が硬く張り詰めた。51 #4215tk

2016-05-05 20:24:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

何分間続いただろうか。どこからともなく、溜息のような風が吹いた。『……あはぁ。負けた』目玉の群れがてんでバラバラの方向を向き始める。山が振動し、溶け出し、人型となる。目玉を生み出していた笊がほどけ、そのシルエットを包み込んだ。「全然ビビんないだもんなぁ!」52 #4215tk

2016-05-05 20:28:39
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

快活な声。真っ白な裸体を網目の細かい竹製の装束で包み込んだ女がそこにいた。長い白髪のようななにかを手でいじり、困ったような笑顔で四季を眺めている。顔の目だけでなく、髪に浮かんだ目玉模様や網目から覗く無数の目とともに。「あんた人間だろ?久方ぶりに見られたよ」53 #4215tk

2016-05-05 20:32:37
@hiiragi_r_t_d

あらあら……これはお美しい…… #4215tk

2016-05-05 20:35:42
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

気安い様子で笊の怪異が歩み寄ってくる。震え上がった空木を背中に隠しながら、四季は怪異を見つめた。「あなたが最近ここにやってきたっていう怪異?なんて名前なの?あとその辺で止まってくれるかな。ちょっと連れが怖がってるから」「おお、おお、そりゃ失礼」54 #4215tk

2016-05-05 20:36:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季の後ろに隠れた空木を楽しげに見やってから、笊の怪異は足を止めた。「あたいはイジャロってんだ。人間風の名前は名乗ってないから、まあそう呼ぶがいいよ。お察しのとおり流れの怪異さね」「イジャロ、さん」「そ。で、あんたはあたいにだけ名乗らせるつもりかい?人間さん」55 #4215tk

2016-05-05 20:40:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

その問いかけに、四季は逡巡した。怪異にむやみに名前を教えるものではない。幼い頃、御影に散々注意されたことだ。「そんな警戒しないでおくれよう。あたいはほら、ちょっと出てきて驚かすしか能のない怪異なんだから」イジャロがどこか媚びるように言う。56 #4215tk

2016-05-05 20:44:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

その顔の目を見つめていた四季は、ややあってから口を開いた。「……日条 四季。で、こっちが空木」「四季?あんたが?へええ!」感嘆の声。次の瞬間、イジャロの姿は四季のすぐ前にあった。目にも留まらぬ速さでにじり寄ってきたらしい。「こんなところで会えるとは!」57 #4215tk

2016-05-05 20:48:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

思わず仰け反る四季。その手がイジャロに握られる。竹細工の硬い触感越しに伝わってくる異様な柔らかさと、なにより圧力さえ感じさせる熱視線に彼はたじろいだ。「な、なに?俺のこと知ってるの?」「そりゃアもちろん!あんた目当てにやってきたんだから」58 #4215tk

2016-05-05 20:52:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

嬉々とした表情でイジャロは四季を覗き込む。彼を覆い隠さんばかりの勢いだ。「最近、山ン本組の頭領になった人間ってあんただろ?しかも組員を募集してるそうじゃないか!これは乗り遅れちゃならんと思って」「ま、待って待って待って!もうそんなことまで噂になってんの!?」59 #4215tk

2016-05-05 20:56:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

必死に四季はイジャロを押し返す。当の怪異はキョトンと彼を見つめた。「噂にしてるんじゃないのかい?もう潰れちまったとはいえ、山ン本組の名前はまだ伝説だ。そこへ前々から評判の人間が頭領に据えられたとくりゃ、そりゃ見物せずにゃいられないだろ」60 #4215tk

2016-05-05 21:00:20
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

そして彼女は思い出したように四季の手を強く握りしめる。「ここで会ったも何かの縁。あたいもぜひ山ン本の一員に加えちゃくれないかい?」「え、えーと」彼は困ったようにイジャロの熱視線から目を逸らす。背後からは、空木の驚きとも賞賛ともつかぬ視線が突き刺さる。61 #4215tk

2016-05-05 21:04:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

たしかに穏便には済みそうだが、それ以上に面倒な事態になっているのは気のせいだろうか?「わ、わかった。とりあえずそれはあとで検討させて?今は少し用事があって」「そうなのかい?邪魔しちまったか。どんな用が?」「えっと。この子の付き添いというか」62 #4215tk

2016-05-05 21:08:28
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季の言葉に、イジャロが首を傾げた。そのまま覗き込まれた空木は、慌ててその視線から逃れようと四季の影に移動する。「そんな子どものお使いみたいな仕事を頭領直々に?大変なんだねえ」「いや、そういうわけでは」当の付き添いの原因にそう言われても、どう反応したものか。63 #4215tk

2016-05-05 21:12:19
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

言い淀む四季。イジャロはそれを気にせずなにか考え込んでいたようだったが、ややあってから思い立ったかのように手を打った。「よし!それならあたいも憑いてくよ」「へ?」「目の数には自信があるからね。変な奴が近づいてきたら教えるくらいのことはできる。どうだい?」64 #4215tk

2016-05-05 21:16:28
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

どうと言われても。四季は思わず空木と顔を見合わせる。一つ目小僧もまた、単眼に困惑の色を浮かべていた。「さ、そうと決まったらさっさと行こうじゃないか。で?目的地はどこなんだい?」二人の困惑に気づいた風もなく、イジャロが張り切った声を上げた。65 #4215tk

2016-05-05 21:20:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……ええと……仕方ないな……行こうか、空木」「う、うん……こっち、です」空木が四季から離れ、目から光を放ち先導する。その後に四季が、そしてイジャロが続く。なんとも奇妙な空気の中、三人は夜の山道を往くのだった。66 #4215tk

2016-05-05 21:24:26
@hiiragi_r_t_d

オツカレサマドスエ!イジャロさん、なかなか押しの強い方だ。噂を聞いてやってきたにしては行動が不審なのが気になるが、果たして……? #4215tk

2016-05-05 21:28:24
前へ 1 ・・ 3 4