【「成長」「変節」のない思想④】空体語を口にしつつ実体語で行動する日本人/~西欧人から見て日本人が偽善者・嘘つきに見える理由とは~

イザヤ・ベンダサン『日本教について~あるユダヤ人への手紙~』/「成長」「変節」のない思想/言わせておいて片づける/113頁以降より抜粋引用。
1
山本七平bot @yamamoto7hei

①東京神学大学が警察官によって「片づけられた」事は前便で申し上げましたが、これで全てが終った事は『教団新報』の次の記事を見れば明らかです。 それは元東神大自治会委員長からキリスト教団総会議長に宛てた質問状です。 次に引用してみましょう。<『日本教について/イザヤ・ベンダサン』

2016-04-30 22:09:14
山本七平bot @yamamoto7hei

②【貴方は学生と教授会のどちら側にも立たれず、提起された問題に誠実に関わろうと努力されていたように思ってきたのですが…「関係者の努力によって一応の解決を見た」と書かれた事によって、事柄の本質を弁えず、力によって混乱状態を無理に解決した現象面のみを肯定する立場を明らかにされました】

2016-04-30 22:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

③【一体、提起されていた問題の何が解決したとお考えなのですか。 教授会が機動隊を導入して作りあげた既成事実を全てお認めになったのですか。 確かに、今共闘の組織はなくなり、学校の構内における混乱もなくなりました。 しかし、それで問題が解決したのですか。】

2016-04-30 23:09:10
山本七平bot @yamamoto7hei

④【何一つ正式な話し合いが行なわれず、旧全共闘の学生を追い出す事によって、事柄が終ったとしているだけではありませんか。 …今、権力を用いて行なわれている「正常化」をもって問題が一応解決したと判断される時、貴方は…神学校の形や組織を温存する事だけに努力されているとしか思えません。】

2016-04-30 23:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤引用はこれで終りますが、彼はさらに続けて、一部の神学生が除籍という形で片づけられており、これは「直接手を下さず(その)学生が自らやめていくのをまっている」という形で行なわれている事に言及しています。 実をいいますと、この方が日本における基本的な「片づける」方式なのです。

2016-05-01 08:09:11
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥警察官の導入等という過激な方法はむしろ例外であって、通常はこの方法がとられます。いわば「本人の意志」で「自分自身を片づけさせる」訳です。 これは、いわば間接的な方法による自殺強要に似ていますが、この方法は昔から非常に広く行なわれていたようで「つめばら」という…用語があります。

2016-05-01 08:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦字義通りに訳せば「間接的・暗黙的に強要された切腹」の意味です。 切腹はあくまでも自殺ですから、その死に対して誰も責任を負う必要はないが、実質的には「片づけられた」という状態です。 これこそ、本当の「片づけ」で、これですべては「完結」です。

2016-05-01 09:09:20
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧では、この元委員長の抗議の手紙は、何の効果もないのでしょうか。 何かこの手紙によって事態が変るでしょうか。 もちろんそういうことは起りません。

2016-05-01 09:38:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨彼の言葉がいかに「理」があろうと天秤皿の空体語はもう消え去っているのですから影響の仕様がありません。空体語は人間を支点として実体語とバランスをとって初めて実体語に作用し得るのですから、そうでなくなれば何物への「応」もないのです。 pic.twitter.com/Xp1bWNmdSn

2016-05-04 12:25:24
拡大
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩もちろん彼の手紙には返事が書かれるでしょう。 その文面に何が書かれるか私は知りませんが、一つだけ確信できます。 何かを「祈ります」という言葉で終っている筈です。 前便で申し上げましたように、物理的な力の後には祈りが来るのが日本教の儀式ですから。 そしてそれで終りです。

2016-05-01 10:38:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪ではこの元委員長はどうすれば良いのでしょう。天秤皿に新しい空体語が載ってから「思想的に成長した」新しい空体語でこれに応ずれば良いのです。この故に安保教授は次々と新しい「思想」を取上げて「成長し」「お前のお前」になって、即ち「認められ」それによって「存在」し続けて来たのですから。

2016-05-01 11:09:16
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫このため日本人は、時としては「ジキル博士とハイド氏」のように見えます。 すなわち、空体語を口にしつつ実体語で行動し、さらにこの空体語が、実体語とバランスをとるため、常に「思想的に成長する」ので、二重にそう見えるわけです。 pic.twitter.com/KrcZyeIv14

2016-05-01 17:49:59
拡大
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬「偽善者」「嘘つき」「うす気味悪い」といった批評はハリス以来多くの人が口にし、またあるアメリカの国務長官のように 「私は絶対に日本人を信用しない。昨日までの攘夷論者が今日は開港論者となり、昨日までの超国家主義者が今日は民主主義者となる、これを信用できるわけがない」(続

2016-05-01 17:50:34
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭続>という意味の言葉をはっきりと口にした人は少なくありません。 しかしこの日本人の行き方は、西欧の「偽善」とは別のことでしょう。 日本教には、西欧で意味するような「善」「悪」といった概念はないからです。

2016-05-01 17:51:10