新生児搬送母体搬送シリーズ

北里大学産婦人科教授の海野信也先生がまとめられた新生児搬送、母体搬送の始まりと現状、それから現状の抱える問題点の指摘をまとめてくださいました。
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海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送1 新生児医療の勃興期、課題は早産未熟児と正期産重症仮死児の救命方法だった。少数の病院に専門家がいて、自施設内の出生児と他施設から搬送された重症児の治療を行っていた。

2011-02-04 07:46:17
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送2 他施設から搬送された児は到着時の状態が悪く、院内出生児より明らかに予後が不良だった。新生児医療の専門家の一部は出生した施設まで児を迎えにいくようになる。これが発展して新生児搬送専用の救急車 NICU車となった。

2011-02-04 07:53:10
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送3 NICU車は今のドクターカーのはしりのようなものだが、基本的にそれを運用している新生児専門施設がボランティアベースでやっていた。今でも診療報酬上の評価は全く不十分なままだ。

2011-02-04 08:04:15
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送4 それまで出生した児の状態が悪ければ、産科医は新生児専門施設に電話で相談し、受け入れ先を決め、救急車を呼んで、医師が同乗して治療を続けながら、NICUに送っいた。電話一本で来てくれるNICU車は大歓迎だった。

2011-02-04 08:11:52
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送5 次第に新生児専門施設が増加し新生児医療を専門とする医師も増えていき、新生児の予後は改善していった。しかし院内出生児の方が院外出生児より予後が良いという状況は変わらなかった、特に早産未熟児で院外出生児の予後が悪いことから早産児への搬送ストレスが問題視された

2011-02-04 08:28:02
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送6 出生体重1000g未満の超低出生体重児では院外出生の方が頭蓋内出血や肺出血の発生率が高い。このような児の出生が予測される場合は出生直後から搬送ストレスなしに高度な医療を集中的に行うことのできる専門病院での出産が最も合理的と考えられた。

2011-02-04 08:42:10
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送7 このような経緯で、新生児搬送よりは母体搬送を、という考え方が専門家のなかで広まり、それまでは産科がなくて新生児科が院外症例だけを診ていた小児専門病院でも、産科を併設し周産期センターとして母体搬送中心の体制へと移行していった。神奈川、兵庫、長野などです。

2011-02-04 12:41:13
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送8 母体搬送が周産期搬送のデフォルトになることで、早産未熟児の予後はさらに改善した。この方向で全国の体制をさらに整備し、質の向上を図っていけばよいかと思われたが、経過とともに問題点が表面化しつつある。

2011-02-04 12:48:47
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送9 さてここからが本論です。問題点1.母体搬送が中心になりそれだけでNICUが満床になってしまうため新生児搬送受け入れが困難。2.34週以後の比較的大きな早産児の具合が悪い場合の受け入れ困難。

2011-02-04 12:58:33
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送10 問題点3. 一部地域では、新生児搬送のNICU車の数が減少。4,早産は予測して母体搬送を選択することが可能だが、それが困難な分娩時仮死の児の迎え搬送が困難に。

2011-02-04 13:10:09
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送11 当然のことだが、周産期救急には母体の救急と胎児新生児の救急、両者の複合がある。今取り上げているのは胎児新生児救急の範囲のことです。難産になりそうな予感がするから事前に周産期センターに母体搬送というやり方ができるほど周産期センターにも余裕はない。

2011-02-04 13:32:15
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送12 今東京23区内には新生児搬送専用車を有する施設がない。スーパー周産期センターもできているが、新生児迎え搬送体制には大きな問題を抱えている。新生児蘇生法普及事業は現場の新生児蘇生の技術水準を大きく向上させたと思われるが、重症児の蘇生には専門家が必要。

2011-02-04 15:23:59
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送13 NICU車がない場合、分娩施設から受入依頼が来るとそのNICUでは救急隊に出動を要請し、救急車に来てもらって、機材を載せてから依頼施設に向かう。この間直接行く場合に比べて相当余分の時間がかかることになる。

2011-02-04 15:29:32
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送14 NICU車がアクティブに活動している県では、迎え搬送依頼の電話が入れば、すぐに出動できる。余分な要素が少ない分、連絡上のトラブルも起こりにくい。一番医療資源が豊富な東京でなぜそれができないのか。システムの問題と考えるしかない。

2011-02-04 21:15:29
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送15 結局新生児搬送も母体搬送もどちらも必要。病態に対応し地域の実情に応じた体制の整備を現場のイニシアチブで構築することが大切。

2011-02-04 21:23:47
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送16:34週未満の早産は母体搬送、34週以降の状態の悪い時は新生児迎え搬送、母体救命救急は、救命救急センターで新生対応ができる施設に搬送という仕組みができればいいのだが、新生児迎え搬送を支える制度がないので、今はボランティアベース。

2011-02-06 08:48:03
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送17:対応方法でコンセンサスができていないのが常位胎盤早期剥離、重症度次第で母体も胎児も危ないし、救命対応が必要かもしれない。各地域の医療リソース次第で個別にシステムを作る必要がある。喫緊課題の一つ。

2011-02-06 08:50:02
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送18:すべての分娩施設で挿管し呼吸循環を安定させる処置を完了できる人員をそろえられれば新生児迎え搬送は重要性が少なくなる。それには新生児の挿管技術等、高度な研修が必要だが、シミュレーションだけで緊急時に一発で決められる能力を全施設で確保するのは無理だろう。

2011-02-06 08:53:38
海野信也 @NobuyaUnno

新生児搬送母体搬送19:日常的な分娩の現場で必要とされる新生児蘇生技術と重症新生児仮死児に対してその場で適切かつ確実な蘇生を実施できる能力との間には大きな懸隔がある。日本のように小規模分娩施設が多数存在する国では、新生児迎え搬送システムの整備は必要と考えざるを得ない。

2011-02-06 08:56:35