ニンジャカタナ!Location#A.D2399 Chapter 4 『世界』
こんばんは!予告通り間もなくニンジャカタナ!の最新話投稿を行います。しばしの間TLをお借りしますが、どうぞラジオやテレビ感覚でごゆるりとご覧下さいませ!
2016-05-13 19:28:52現在ニンジャカタナ!全話はカクヨムにて保管しております。既存の話はぜひこちらでご覧下さいませ。 kakuyomu.jp/works/11773540… それでは、しばしTLをお借り致します。約一時間、なにとぞ宜しくお願いいたします。 pic.twitter.com/c4pNV2tQrw
2016-05-13 19:30:41――世界は凍った。 地球は、真っ白になった。 コロニーに逃げられなかった人達はみんな死んだだろう。動物も、草も木も全部死んだに違いない。 白い地表は光と熱を反射して、寒さはもっと厳しくなる。一度凍った地球が元通りになるには、きっと数万年かかる。 その間、僕は――。
2016-05-13 19:32:28「――オハヨウゴザイマス。カミサマ」 閉じた視界。僕にかけられる無機質な声。まぶた越しに青い光が飛び込んでくる。 重いまぶたを開けると目の前には天井のレールにぶら下がるアーム、の先端に掴まれた丸い目玉。僕が作ったこの場所の管理人『ビッグ・ビーンズ』。大きな豆だからB・Bだ。
2016-05-13 19:34:10「今日の予定は?」 「キョウノゴヨテイハ、ダイサンエリアノシサツデス」 「また第三? この前も回ったじゃないか」 「ハイ。デスガ、エリアハナナツシカアリマセンノデ!」 代わり映えしない朝。このやりとりも、もう何度目だろう――。 気付いたら、あれから600年経っていた……。
2016-05-13 19:36:23僕が閉じ込められた研究所の装置は、奥に小さな部屋と操縦室があった。それと、人が生活するためのスペース。 最初に備蓄があった食べ物は多くなかったけど、その間に僕はこの装置の使い方を理解することができた。 おかげで、ひとまず生きるための問題はなくなった――。
2016-05-13 19:37:54最初の100年。 僕はずっと閉じ込められたまま漂流した。この装置は定期的に次元を飛び越え、色んなところに逃げていた。 僕は、それをじっと窓から眺めて過ごした。軽く千以上の次元を見たけど、人の住める次元は一つもなかった。 物理法則が、僕達の次元とはあまりにも違いすぎるんだ。
2016-05-13 19:40:03次の100年。僕は装置の拡張を始めた。 外に出ることは出来なかったけど、外に充満するエネルギーや、近くの資源を利用することは簡単だった。そしてそれと一緒に、僕はこの装置の解析も始めた。 この頃になると、何かをしてないと頭がおかしくなりそうだった。ずっと、一人だったから――。
2016-05-13 19:41:37次の100年。拡張を受け続けたこの装置は、元々の数十倍の大きさになっていた。 調べてわかったことだけど、この装置の名前はラピスというらしい。父さん達は、これを多次元を行き来する船にするつもりだったみたいだ。 結局、小さな実験区だけの状態で僕と一緒に放り出されたわけだけど――。
2016-05-13 19:43:21この数百年でラピスのシステムを把握した僕は、何度も元の世界に戻ろうと思った――。 けど無理だった。怖かったんだ。 ニンジャがじゃない。もちろんニンジャは怖いけど――。 それより怖かったのは、父さんと先生がもういないっていうことを、元の世界で現実として突きつけられること――。
2016-05-13 19:45:32――結局、僕は元の世界に戻るのを止めた。 何百年もかけて少しずつ元気を取り戻したつもりだったけど、全部気のせいだった。 僕の心はとっくの昔にぽっきり折れてしまっていたんだ。 僕は、色々な次元をラピスで移動しながら、変わることのない毎日を無為に過ごすようになった――。
2016-05-13 19:47:00「エンジンの上にホコリがついてたぞ! ちゃんと掃除してるのか!?」 「スミマセン、カミサマ。スグニソウジシマス」 「こっちの窓枠にも――この跡、僕が前見たときに触った跡じゃないか!」 「スミマセン、カミサマ。スグニソウジシマス」 「役に立たないガラクタだな! ちゃんとしろよ!」
2016-05-13 19:50:21僕はビーンズの進化も止めさせた。 それどころか、退化させた。 今のビーンズは、音声も記録映像に出てくる出来の悪いロボットみたいな声になって、言われたことも満足に出来ない。 僕はそんなビーンズをガラクタと罵って優越感に浸るんだ。 ははっ――自分のことだけど、本当に最悪――。
2016-05-13 19:51:56ビーンズの進化を止めた理由は簡単。 僕の創り出したビーンズは、放っておけば勝手に増えて、自分たちで勝手に改造をしあって進化する。壊れたりしても仲間同士で修復できる。でも、何百年もかけて進化されたら、いつか僕を追い越すに決まってる。 そんなの、僕のちっぽけなプライドが許さない。
2016-05-13 19:54:03「全く、今日もお前達のせいで僕が働くはめになったじゃないか!」 「スミマセン、カミサマ!」 「許さないぞ! 何回目だと思ってるんだ!」 「アッ! ヤメテクダサイ! アタマヲボールニスルノハヤメテ!」 「うるさい! こうしてやる!」 僕はピコピコ光るB・Bの頭を蹴り飛ばす。
2016-05-13 19:55:50「アーッ!」 「いい気味だ! 僕はもう寝るから、ちゃんと片付けておけよ!」 僕はベッドに潜りこんで目を閉じた。自分が最悪だってことはわかってる。けど、一度ねじ曲がった気持ちはどうしようも……。 薄れる意識の中、肌寒さを感じる僕の上に、そっと、毛布が掛けられるのがわかった――。
2016-05-13 19:57:54「うわあああ!?」 「カミサマタスケテー!」 突然の横揺れ。大きく揺れたラピスの船内で、壁に叩き付けられる僕とB・B。 船内の異常を教えてくれる赤いランプが点いたり消えたり。僕の視界も真っ白になる。 「いっつつ――馬鹿! なにがタスケテだよ!」 「スミマセン、カミサマ!」
2016-05-13 20:00:51今の衝撃で非常灯に切り替わった船内。薄暗い通路の中を、小さなビーンズが何個かコロコロと転がっていくのが見えた。 「B.B、わかることは?」 「ナニカト、ショウトツシタヨウデス。バショハ、ダイナナブロックデス」 「七番――Ⅶを作ってるところじゃないか!?
2016-05-13 20:02:17僕はB.Bには目もくれず立ち上がると、薄暗い通路の中を一目散に駆けだした。 第七ブロックには作りかけの船があるんだ。このラピスは僕がむちゃくちゃに改造したから原形なんてとどめてないけど、データの中にあった、父さんと先生が描いていた船の設計図――。 それを元にした船が。
2016-05-13 20:04:28僕だって、どうしてそんな物を作ろうと思ったのかはわからない。ただの暇つぶしだったのかもしれないし、そもそも意味なんてなかったのかもしれない。 走りながら作業用のスーツを掴む。もし衝突で大穴でも空いていれば、生身でいくのは自殺行為だ。確か、この次元の特性は――。
2016-05-13 20:05:51薄暗い通路と明るい通路を交互に走り抜けながら、スーツを手早く身につけていく。途中、何体かのビーンズが僕を止めるように前に出てきたけど、そんなの知ったことじゃない。ここの神様は僕だ。ここでは誰も僕の邪魔はできないんだぞ! 大体、なんで邪魔なんてしようとするんだ!
2016-05-13 20:07:30僕は自分でも驚くほどの速度で準備を済ませ、第七ブロックに通じる隔壁を開放、何体かの戦闘用ビーンズを連れて中に入っていく。 さっき第六ブロックの端末で中の様子は確認済み。たしかに一度穴は空いたみたいだけど、その場に居合わせた作業中のビーンズがすぐに修復したみたいだ。
2016-05-13 20:09:18