「クレイドル・スウェイング・イン・ザ・ストックヤード」

揺り籠は揺れる。ゴミ溜めの中で。 これは、母親の物語。
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ザッケンナコラー!」ワ級Bは6インチ連装連射砲も起動し、迫り来る3つの影を狙う!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!今度は4つの水柱が立つ!影が巻き上げられた海水の中に紛れる。「モシモシ!モシモシ!」ワ級Aの声が空しく響く。「通信ハマダ繋ガラナイノカ!」「全ク駄目ダ!」 5

2016-06-19 20:37:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「応答シナイナラ放ッテオケ!」ワ級Bは水煙の奥から躍り出る3つの影を睨み付けて吼えた。「来ルゾ!」「分カッテイル!」ワ級Aは通信を諦め、砲を構えた!「「ザッケンナコラー!」」BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!砲撃の雨が降りしきる!影の一つがハチドリめいた軌道で回避! 6

2016-06-19 20:45:31
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

鋭い回避を繰り出したその影は、一瞬足を止めたほか二つの影を置き去りにし、最大船速で吶喊!「何!」ワ級Aは狼狽えた。「ハヤイダゾ!アイツ!」「構ウモノカ!撃チマクレ!」ワ級Bは照準を合わせ直そうとした。影は緑色の光の軌跡を描き、恐ろしい速さでワ級Bに跳びかかった!「イヤーッ!」 7

2016-06-19 20:49:11
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「グワーッ!?」影が繰り出したトビゲリはワ級Bの鉄仮面の右半分を蹴り砕いた。影は着水し、180度反転し、ワ級達を睨み付けてアイサツをした。「ドーモ、艦娘・吹雪です。生きて帰れると思うなよ」「チィーッ!」ワ級Bは拉げた鉄仮面の奥から青黒い血を零し、体勢を立て直した。 8

2016-06-19 20:52:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「スッゾオラー!」ワ級Aは負傷したワ級Bをカバーするために、吹雪めがけ牽制6インチ連装連射砲砲撃!BLAM!BLAM!「イヤーッ!」「何!?」ワ級Aは目を剥いた。砲撃は吹雪に命中することなく、空中で静止していた。「馬鹿ナ、ゲン・ジツカ!?」「違うよ!」背後から声! 9

2016-06-19 20:56:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ワ級Aは首を動かし、背後を見た。そこには片手を翳し、不敵に笑う銀髪の艦娘。「ドーモ、清霜です!」「貴様!」ワ級Aは砲を清霜に向けた。原理は分からぬが、何らかのジツであることに相違なし!「アバーッ!」突如として、ワ級Bの悲鳴が聞こえて来た。「エッ」ワ級Aは咄嗟に真横を見た。 10

2016-06-19 21:01:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「アバッ…アバッ…」そこには、拉げた鉄仮面の隙間に艦娘の主砲を突き立てられたワ級Bの姿。「隙だらけね」ワ級Bの頭部に組み付き、主砲を突き立てた銀髪サイドテールの少女はそう呟き、引鉄を引いた。BLAM!「アバーッ!」ワ級Bは断末魔の悲鳴を上げた!「サヨナラ!」そして爆発四散! 11

2016-06-19 21:07:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

アンブッシュでワ級Bを始末したその艦娘は静かに着水すると、アイサツをした。「ドーモ、朝潮型9番艦・霞です…アンブッシュで倒せるだなんて、大したことないわね」「コイツ…!」「洗いざらい話して貰おう」吹雪がジゴクめいた声で言った。「貴方達がここで何を企んでいるのかを」 12

2016-06-19 21:12:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ちょっと吹雪」霞が吹雪を見て言った。「この子の前であんまりスプラッタなのは止めてよね」吹雪はチラッと清霜を見て頷いた。「善処しましょう」「善処って」霞はイライラと脚で海面を複数回叩いた。「この子が変なこと憶えたらどうすんのよ」「えっと、霞ちゃん」「清霜はちょっと黙ってて」 13

2016-06-19 21:17:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

暫し、吹雪と霞は睨み合った。否、霞が一方的に吹雪を睨み付けていた。吹雪はただ泰然と見返すばかり。ワ級Aは蛇に睨み竦められた蛙めいて動くことができず、清霜はただハラハラと状況の推移を見守った。やがて、吹雪は目を閉じ、軽く溜息を吐いて言った。「分かりました。穏便にしますよ」 14

2016-06-19 21:27:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「本当ね」「えぇ、えぇ」吹雪は降参だ、とばかりに両手を上げた。「子煩悩なお母さんには敵いませんよ」「誰がお母さんよ、誰が」「…自覚無しですか」吹雪はまた溜息を吐き、そしてワ級Aにインタビューするためにカラテを構えた。ワ級Aは震えていた。「馬鹿ナ」恐怖ではなく、驚愕に。 15

2016-06-19 21:33:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「何?」吹雪は咄嗟にワ級Aの視線の先を、オートロ島上空を見た。微かに黄色い光を放つ、高速で迫る幾重もの機影。よもや、敵の新型艦載機か!「裏切ッタノカ…深界ヲ裏切ッタカ!集積地棲姫!」ワ級Aの絶望の声を尻目に、吹雪は自身の第六感に従い全速で離脱を図る!だが、新型も速い! 16

2016-06-19 21:41:38
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「二人とも、退避を!」吹雪はそう言うのがやっとであった。霞は咄嗟に逃げる体勢を整えた。「えっ」清霜はワ級Aに背を向け、退避する吹雪を見た。一瞬事態を飲み込めなかった。それが致命的であった。「イヤーッ!」「ンアーッ!」背部ユニットをパージしたワ級Aが清霜に組み付いたのだ! 17

2016-06-19 21:49:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「清霜!」霞は悲鳴を上げ、清霜を助けようとした。「ハ、ハハハハ!コウナッタラオ前モ道連レダ艦娘!」「ちょ、離し…」彼らの背後から敵の新型艦載機の姿がはっきりと見えるほどに近づく。ガゴン!ガゴンガゴン!ガゴンガゴンガゴン!「ハーッハハッハッハ!神ヨ!我ガ魂ヲオ傍ニ!」 18

2016-06-19 21:54:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

KABOOOOM!KABOOOOM!KABOOOOM!KABOOOOM!KABOOOOM!KABOOOOM!KABOOOOM!KRA-BOOOOOOOOOOM!猛烈な量の爆撃がワ級Aの周囲に降り注いだ。「ンアーッ!」霞が爆風に煽られ、吹き飛ばされる。「清霜!」霞は叫んだ。 19

2016-06-19 21:56:30
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

清霜とワ級がいた場所は、濃い黒い爆煙によって何も見えなかった。「清霜、今助けるわ!」霞は爆煙の奥へ進もうとした。吹雪が霞の腕を掴んで静止した。「離して!」「離しません!」「まだ清霜が!」「敵の次の攻撃が来ます!」吹雪が強く言い放った。「逃げなければ私達が死にます!」 20

2016-06-19 22:01:17
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

霞は空を見上げた、煙の向こう側、夥しい数の黄色い光が迫って来ていた。「清霜=サンはあの程度では死にません!」吹雪は諭すように言った。「ですが、ここに私達が留まって繰り返し爆撃を受ければ、死にかねません!まずは一旦逃げて、爆撃を清霜=サンから逸らさねば!」 21

2016-06-19 22:04:34
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ッ!」霞は歯を食いしばった。ニューロン内で吹雪の案による清霜の生存率の高さと、此処に清霜を置いて行くリスクを天秤にかけた。だが、思案する時間はあまり残されてはいなかった。ガゴン!爆撃が投下される音が響く。「逃げますよ!」吹雪は霞の手を引いて強引に離脱を図った。 22

2016-06-19 22:09:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「クソッ!クソォーッ!」霞は悪態をつき、そして背後を見て叫んだ。「清霜!絶対!絶対生きてなさいよ!直ぐに助けに戻るから!絶対よ!」そして二人の艦娘は最大船速で撤退した。その後を新型艦載機が執拗に追った。海は爆撃に揺れ、時化めいて荒れた。 23

2016-06-19 22:11:35
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ザザーン…ザザーン…不意に、波が砕ける音が耳に入った。「う、うーん…」清霜は頭を振り、起き上った。彼女は口に入った砂を唾と一緒に吐き出し、全身の痛みに耐えながら辺りを見渡した。そこは砂浜であった。傍には半ば程で爆撃で吹き飛ばされたであろう桟橋。振り返れば、爆撃された宿舎。 25

2016-06-19 22:18:28
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ここって…」清霜は壊れた宿舎を見て作戦開始前に聞いた情報を思い出す。オートロ島マーマレード湾には鎮守府の物資集積所が置かれていた。ここが今回深海棲艦によって制圧され、自分たちの奪還目標となった。「敵地のど真ん中…ってこと?」清霜は立ち上がり、拙いカラテを構えた。 26

2016-06-19 22:25:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ははっ…1度ならず2度も遭難ってキチョーな体験だよね…」清霜の脳裏に過るのは嘗ての命懸けの遭難体験だ。あの時は頼もしい仲間がいたが、今は自分一人だ。清霜は己の武装を確かめた。背部の主機艤装は完全に壊れている。魚雷発射管は誘爆を防ぐために爆撃を受ける前に咄嗟に捨てた。 27

2016-06-19 22:30:18
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

残っているのは12.7㎝連装砲のみ。撃てるだろうか?軽く主砲を振る。ちゃぷちゃぷと水音が鳴る。清霜は主砲を放り捨てた。辛うじて、鉄靴が壊れていないことが幸いか。これで清霜に残されているのは、五体とキネシス・ジツのみ。ガサガサッ!砂浜から遠く離れた草むらが揺れた。 28

2016-06-19 22:40:31
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

清霜は草むらに向けてカラテ警戒した。此処は敵地のど真ん中。先程相手にしたワ級の言葉が正しいならば、この地には棲姫級の深海棲艦がいる。勝てるだろうか?清霜の思案を知って知らずか、草陰から影が飛び出した。「へっ」清霜は飛び出した影を見て拍子抜けた。それは赤子めいた小鬼であった。 29

2016-06-19 22:46:40
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