あなたとVR 今すぐ没入体験

聴覚を用いた、純粋に没入型なVR技術の提案。半分くらい開発者向け。 VRデバイスで遊んでいる人の様子についてのツイートを契機に、VR空間がどんどん生まれてきそうなこの時代にとって、重要な示唆を与えてくれそうな幾つかの発想が@qothrに現れてきたので、まとめておきます。
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多くの空想家やゲーマーにとって、VRコンテンツの最も大きな魅力は、全く新しいファンタジー世界の中に自分の身を置くことができるということだろう。HMDによって、自分がその世界に囲まれていることを実感し、あるいはさまざまなセンサによって、現実世界にいるあなたの身体の動きをVR世界にいるあなたの身体に反映し、あなたはVR世界を体験することができる。

しかし、立体視や3D音響だけでほんとうに満足か? あなたのVR恋人の髪の匂いを感じたくはないか? VR恋人の身体を、あなたのねらねらとうねるたくさんの触手でまさぐっているのを実際に感じたくはないか? あなたはそれを実現することができる。

これから説明するのは単なる発想にすぎない。おそらくまだだれも実現していないだろうが、現代の技術レベルで特に難しいことは一つもなく、逆に難しいのはあなた自身の発想の転換だろう。あなたはそれを実現することができる。

事の発端

VR体験をしている人は、自分の身体についてどう捉えているのだろう?

朝倉涼 / Ryo Asakura @seventhgraphics

アダルトVR、体験してる本人は最高に夢のような世界を体感できる反面、体験してる人を外からみると地獄絵図みたいな格好(ヘッドセット+乳首デバイス+オナホ?デバイス)になる感じ、人として大切なものを失わないと真の桃源郷にはたどり着けない感じある

2016-06-12 15:30:33
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ でもHMDって目開けてないといけないし、まだまだ身体的には没入できてないんだよな

2016-06-13 21:24:04

身体的な没入感

問題提起。昨今のHMD方式のVRデバイスでは、視覚についての没入をもたらすのみで、身体的な没入感、すなわち体性感覚などは既存の肉体から引き継がれてしまうだろう。VRコンテンツやシステムの開発者らがこれについて意識的か無意識的かはわからないが、これがある限り、VR空間への没入は程遠いのではないか。人間の環世界は視覚だけではない。

怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ VR空間では、自分の体がどうなっているのかを視覚のみによって把握しなければならない

2016-06-13 21:27:33

この状況は、身体感覚と視覚世界との乖離をもたらす。VR体験者がもっとも忌み嫌うはずの、没入感の欠如である。振動覚や圧覚デバイスなどを併用することでこれを解決しようとする向きもあるが、より根本的な問題が見え隠れする。

視覚の意味

現在VRデバイスと呼ばれている立体視HMDは、その仕組み上、視覚のみを使って空間把握することをあなたに強いる。実際、そのことはあなたにとってどのような意味を持つだろうか。

怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 目を開ける必要があるということは、瞬きと視覚的空間把握と、場合によっては注視とを強いられるということだ

2016-06-13 21:26:27

このことから、視覚による把握は、他の感覚に比べて能動性が高いと考えられる。後ろの方にあるものを見ようとして頭を動かしたり、遠くのものを見ようとして焦点を合わせたりする必要があるからだ。

没入とは何か

さて、本来「没入」とは、受動的であることが求められるのではないだろうか。あなたは積極的にゲームなどにのめり込むことができるが、ゲームにのめり込んでいる間――没入している間――あなたは無意識的にゲーム世界に浸っていることだろう。

怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 目で見ることによっては、焦点が生まれてしまい、また隠れたものの裏側を把握できない。全方向から見た図像を同時に提示することも不可能ではないが、そのような図像は、一点から一点を覗くことに慣れすぎた人間には敷居が高い

2016-06-13 21:51:02

このように、視覚の問題点は、自分の身体の中身や裏側を見ることができないと思われていることだ。「透視」のようなUIを提示すれば、半分ほどは解決できるだろう。しかし視覚に慣れた人間には、それは「本来は見えないもの」「特殊な能力」であるというような観念を生んでしまうはずだ。視覚によっては自分の身体の没入をカバーするには不十分だ。

これらの観点からは、視覚というものは没入と相反する性質のものと言える。より「没入的」な体性感覚を得るために、聴覚をVR空間の認識に使えないだろうか

人間がもし、VR空間への没入ために聴覚に比重を置くようになったら、どういうことが起こるだろう。

怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 音のみの感覚によってさらに詳細な空間把握ができるようになると、受動的に、かつ自分の身体の形状にほとんど依存しない純粋なVR空間を体験できる

2016-06-13 21:34:36
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 音によっても、焦点にあたるもの――耳を済ませることや、カクテルパーティー効果のようなもの――はあるだろう。しかし、目と違って「全方向から、障害物の向こう側の情報までを得られる」と思われていること重要なのだ

2016-06-13 21:54:13
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ さっきのVR関連の一連のツイートで音って言ったのは、人間の身体で知覚できる形式に変換する必要があるからで、例えば物質の放つ赤外線を音に変換して知覚するとかそういう話です

2016-06-14 00:27:17
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ VRコンテンツならば、物質はそれ固有の電磁波なりカ@囑-ウ波なりを発するなどと自由に設定することができるし、それを音に変換して聴かせればいいだけだ

2016-06-14 00:41:11

あなたのVRコンテンツの世界に、「障害物を透過する波動」や「温度によって性質の変化する波動」などといった何らかの透過的な波動現象を設定できれば、人間がそれを音として知覚することによって、VR空間、ひいては自分の身体にあたる空間を没入的に把握することができる。これこそが体性感覚に繋がる。今回の提案だ。

具体的には、VR体験中、自分の身体を「意味する」音を常に流しておく、ということだ。この音が複雑に変化することによって、あなたは自分の身体が変化していることを実感する。

なぜ光ではなく音の方がいいのかは、既に述べられているように人間は視覚に慣れすぎているからだ。自分の顔の裏側や断面図など見せられたくはないだろう。また、細かな電気信号を直接知覚することも、侵襲なしに実現するのは難しい。

入力――自分の身体を動かすこと

ここまで、空間を把握することに関して述べられてきた。では、没入的なゲームに必要な、没入的な入力とは、どのようなものになるだろうか。

怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 例えば、筋電図などによる入力プロトコルを組み合わせると、左腕を時計回りに捻ることで「頭の後ろにある、右から二番目の尻尾 (自分の目で見ることができない類の代物)動かす」という操作に割り当てることができる

2016-06-13 21:37:33
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ そのような空間では、いままでの身体の扱いから離れ、全く新しい身体として生きることもできるだろう

2016-06-13 21:39:08
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 「左腕を捻ること」や「左腕が捻れたときの体性感覚」からは逃れられないのでは、と思うかもしれない。しかし、脳はかわりにそれらを、それぞれ「尻尾を動かすこと」「尻尾が動いたときの体性感覚」であると認識するようになるだろう

2016-06-13 21:45:31
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ どの感覚がどの意味にあたるのかを結びつけるものこそ空間把握なのだ

2016-06-13 21:46:26

入力デバイスにおいて「ボタン」は没入的ではない。ゲーム空間がボタンのみで構成されているのであればいいが、本来的にアナログな動きをボタンで誘発するのは、VR時代のやり方ではない。かといって、没入感のために自分の肉体に電極を挿入する人は、そう多くはないだろう。

例えば、非侵襲の筋電図入力デバイスとして、Myo Armband が挙げられる。これは腕の筋肉に流れる電流を読み取って入力に用いるものだ。このようなアナログ入力デバイスはVRゲームにとってかなり有用だ。

また、ヒトが身体を動かすとき、単純に脳から各部へ電気信号を下すことのみによって身体を動かしているのではない、ということは既に知られている通りだ。身体の動きを補正して正しくしなやかな動きをするためには、体性感覚によるフィードバックが必要不可欠である。VR世界における身体でこれを実現するには、まさに上で述べられたような聴覚によるフィードバックが有用だろう。

そして聴覚によるVR展開の何よりの利点は、何らかのまったく新しいハードウェアを必要としないことだ。高額なHMDとヘッドトラッカーではなく、あなたの慣れ親しんだイヤホンやヘッドフォンをそのまま用いることができる。ただしより理想的には、周波数特性のフラットなモニタリング用のものを使うべきだろう。

まったく新しい身体

VRというものは、コンテンツによっては、その中にまで自分の肉体を引き継ぐことなく、そこでのまったく新しい身体を持つことができる可能性を秘めている。ここまで述べてきたような工夫を行えば、これは現代の技術でもじゅうぶん実現可能だ。