提督代行　加賀：番外　未成の魂　其の弐

猫を愛でる加賀@猫航戦 @love_cat_Kaga

#未成の魂　其の二

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出航予定より早めに支度を済ませ、ツェッペリンは基地の港湾部に入った。同伴するという二人の事が気になり、居ても立ってもいられなかった。 #未成の魂

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それもそのはずで、空母なら誰しも一目置くのが日本の一航戦。その赤城と加賀については、建造に至るまでの経緯や緒戦の活躍、壮絶なる最後に至るまで話題に事欠かない。そして、その栄光の陰に消えたのが戦艦時代の姉妹艦の、天城と土佐だった。 #未成の魂

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「数奇なる運命に翻弄された姉妹……と言えば聞こえがいいが、状況は私のそれよりも深刻だな」 昨夜のうちに再確認した事柄を思い起こす。本人に直接尋ねる事はないが、知らぬ振りも出来ない。この手の話題は慎重になった方がいいだろうと考えた。 #未成の魂

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港湾部側と内部を仕切る隔壁が稼働している。 二人のうち、どちらかが入ってくるのだろう。 二人については昨夜のうちに写真を含めた概略資料に目を通していて、他の二人も恐らく同じなのだろう。 ツェッペリンは開いた扉に向けて敬礼し、現れた戦艦を見据えた。 #未成の魂

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「グラーフ・ツェッペリン級航空母艦一番艦、グラーフ・ツェッペリンだ。宜しく頼む」 「はい、加賀型戦艦二番艦、土佐です。こちらこそ、宜しくお願い致します」 華奢で一見少女とも言える容姿の戦艦は、不慣れな様子で身体を縮めるようにして敬礼を返した。 #未成の魂

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短めの黒髪で小柄な様だけを見ると、軽巡のようでもあるなとツェッペリンは思った。しかし、その装束は間違いなく長門型を基本とした様式のもので、所々に濃い青の装飾が施されていた。 #未成の魂

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長門型を凌駕する戦艦とはにわかに信じがたいが、見た目だけで判断するのも愚かしい事なので、彼女の力に期待する事にした。 「ツェッペリンさんは、空母さん……なんですよね」 「あぁ、そうだが」 そう言うと土佐が嬉しそうに微笑むので、ツェッペリンは首をかしげた。 #未成の魂

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「いえ、その……初めて一緒に出撃する艦隊に空母さんが居るのが、なんだか嬉しくて」 資料通りであれば、土佐はツェッペリン同様、他の艦娘との接触自体が今回初めての筈だった。それ故に、第一戦を駆ける姉と同じ正規空母の艦娘に想いを馳せていたのだろう。 #未成の魂

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「そうか。一番艦のカガの事は聞いている。早く逢えるといいな」 「はい、今から楽しみです。えへへ」 屈託なく笑う姿を見てツェッペリンは穏やかな気持ちになった。 #未成の魂

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もし、土佐が艦艇としての記憶を持っていたならば、どれほど寂しい思いをしていただろうか。資料で確認した重たいものを感じながら、そうでない事を静かに祈った。 #未成の魂