- tasobussharima1
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昔々、遠い昔。 まだ、『It(それ)』が生まれてすらいない時。 ------------ 世界が人のものとなるよりも前。この星がまだフロンティアだった時代。この世にまだ、暖かな眼差しが残されていた時代に。彼女は、生まれた。 少女は、ただの漁師の娘だった。
2016-06-14 21:04:05少女はごく平凡に生まれ、幸運にも、当時は余りに有触れていた病や死の手を逃れ。すくすくと大きくなった。 村の男の元へ嫁ぎ、子供を産み、育てた。豊かだったわけでも、とりたてて幸せだったわけでもなかったが、当たり前がそこにはあった。 十年が過ぎ。二十年が過ぎて。
2016-06-14 21:08:06子供は大きくなり、夫は海で死んだ。 その時になっても、彼女は若さを保っていた。 それから更に、二十年が過ぎた。彼女の子供もまた、海で死んだ。彼女は若いままだった。だが、当たり前は、もうそこには無かった。 彼女は不死だった。平凡だった娘には、唯一つ、不滅の因果が宿っていた。
2016-06-14 21:12:10今のマロ氏とはまた違った形の不死。むしろ不老か。いや、今のマロ氏がちゃんと歳をとるのか知らないけど #徳パンク
2016-06-14 21:13:33何故。 それは、彼女が最も知りたいと望んだことだった。老いて死ぬ。ただそれだけのことが、何故自分には出来ないのか。 人は無い物ねだりをする生き物だ。だから、彼女は老いと死を求めた。そして人々はそれと同じか、それ以上に、彼女の不死を求めた。
2016-06-14 21:16:03限りない人の欲を彼女は見続けてきた。余りに多くの、畏怖と怨嗟の声を聴き続けてきた。重みに耐えかね、彼女は出家し、入定した。 永い時を繰り返し、幾度も生を重ね。それでもまだ、その先があった。 だから、彼女は平穏を願った。普通の人々の小さな幸せこそが、真に見つめるに値するものだと。
2016-06-14 21:20:02幾度も生を繰り返せば、当然の結論へと収束するのは道理だっのかもしれない。それでも、彼女は願い続けた。 それが、彼の始まりだった。 しかしそもそも何故、不死などというものがこの世界に在るのか。否、何故、不滅となって尚、この世界に留まり続けるのか。その痕跡を世界に残し続けるのか。
2016-06-14 21:24:04その答えを、彼(『マロ』)となった彼女は未だ得られぬまま、黄昏の闇は暮れて行く。滅びは再び加速する。その先にある、黒闇を目掛けて。 ----------
2016-06-14 21:28:03