【ガイズ・ゴー・クレイジー ～ロックンロール・アンド・ドトン】

不幸鳥 @hukurou_nayuta

【ガイズ・ゴー・クレイジー ～ロックンロール・アンド・ドトン】

不幸鳥 @hukurou_nayuta

事情を説明しようと思う。まず、事情を説明しようと思っている俺の名はハスカール。傭兵だ。雇い主と商談をしていた。今まさに、前金を受け取り商談成立…というところで、しかし、それは突然に起こった。正直、説明している俺にも訳がわからない。取り敢えず、ありのままを話す。今、目の前で、1

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雇い主が蹴り飛ばされた。近くにいたボディーガードも巻き添えを喰らい吹っ飛んだ。給事の女の開いた口が塞がっていない。ちなみに俺の口も間抜けに開いちまっていた。…閉じよう。雇い主は蹴り飛ばされた、というよりも…信じがたいが、突然頭上に出来た魔方陣から出てきた女の落下にやられたんだ。2

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何故魔方陣が。この奇妙な女はなんだ。…マズイ。「ダイカン=サン！目を覚ませ！ボディーガードのあんたは主と給事連れて逃げろ！」「アイエエ…ハスカール=サンは」「俺はいい。後は俺に任せろ」3人を逃がし…ここにはニンジャだけが残った。俺と…そこに転がる女ニンジャだけ。3

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「ドーモ。ハスカールです。どっかの回し者か？…にしちゃあマヌケ極まるな」どんな相手にだろうとアイサツはするものだ。古事記にもなんたらだ。女はつぎはぎのマントに絡まってもがいている。「ア！？ニンジャか！？ドーモ、ゴシップミルです、ちょっ、これどうなってんだ」…頭を抱えたくなる。4

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「斬ってやるから動くんじゃねえぞ…イヤーッ！」俺は躊躇なく斧をその女ニンジャに降り下ろした。「！？あぶねェ！」マントをほどけたそいつは直前で転がり回避した。惜しい。「なんて男だ…乱暴にすぎるぞ、初対面の人に」ゴシップミルとか言ったそいつは床に落ちた帽子を拾い上げながらぼやく。5

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「初対面だろうが親友だろうが家族だろうが恋人だろうが関係ない。何故なら、俺のビズの邪魔をしたからだ」奴は困った様子で頭なんか掻いてやがる。こちらがせっかくやる気になってるってのに、どうも緊張感のない奴だ。「それは…加減出来なかった俺が悪い。すまん。だが位置調整が」「イヤーッ！」6

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「グワーッ！？人が喋ってる途中に物騒な斧とか振り回しちゃダメって習わなかったのか！ヤメロー！」「モンド・ムヨー！イヤーッ！」聞く耳を持ってはならん。さすれば、奴のペースに呑まれる。というかもう既にやる気失せそう。「喰らえ！ドトン・ジツ！」「エ？この室内で？」7

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その通り、ここは室内。更にもっと言えばビルの3階。少々キツイがやれぬことはない。「は？オイオイ冗談じゃな…窓に！窓に！！」その通り、窓の外には砂嵐が吹き荒れているはずだ。「砂の瀑布激流に飲まれな！」「グワーッ和解しよう、チョット、話せばわかる！！！グワーッ！」8

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豪華な応接間は砂やら硝子片やらで滅茶苦茶になった。すまんなダイカン=サン。「さて？まだ生きているだろう。しぶといな…」背後に語りかける。目をやると、砂のアート彫像のようになっている奴がいた。「ケホッ、ケホッ…現代アートみたいにしやがって…」「似合ってるぞ」「うるせ！話聞け！」9

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「話だ？俺は話すことは」「こっちが！あるっつってんだ！！！さっきから遮りやがって！あんたにも耳よりな話なんだよ！」…耳より？確かに、思い返せばこいつの言いたげだったことはただの命乞いにしては…「何だ。一応聞かせろ」向き直り、砂の拘束を解いてやると、そいつは笑った。10

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「へへ、ありがとうな。エート、ダイカン=サンっているでしょ？あんたの契約相手」「ああ。もう逃げたがな」それを告げると、そいつは都合の悪そうな顔をした。「逃げちゃったか…まずいぞ、ハスカール=サン」「何か問題が？」すると、ゴシップミルは語りだした。ダイカン=サンに纏わる黒い噂。11

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ダイカン・アクノ。契約相手の名だが、こいつに雇われた傭兵は、ただの一人として生還してないという。気に入らぬ者を消すよう持ちかける。消させる。その後、傭兵を始末する。を繰り返しているとのことだ。「ただの一人も？」言うと、ゴシップミル=サンは頷いた。「あんたもそうなるかもしれん」12

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そしてつけ加える。「このまま契約を続ければだけど」「………」信用は出来ん。だが、契約相手のことも信用してはいない。だって悪の代官だもん。「私はぶっとばしてくるよ」言いながら、奴は魔方陣を描き始めた。大理石の床に。極太の油性マジックで。アー、アー。13

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ゴシップミル=サンは呪文を唱え出した。奇妙な手振りと共に。……？あれは…！？「まさかクジ・ゴシンボーか！？」唱え終えたそいつは笑顔で言った。「いや？こうやると、ニンジャっぽくてかっこいいじゃない」……こいつ、ぶん殴る。などとしている間に、魔方陣から光が溢れた。「何…が……」14

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「黙って見てなって。アタシにも何が出てくるかわからないんだ」「なんだと！」無責任な！と言おうとしたがその先は声にならなかった。光が強まる。この神秘的な光景に、言葉を奪われたのだ。それはやがて人型になり……「ハァーイ！アタシを呼び出したのは誰？」出てきたのは…何ということだ。15

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輝くブロンドヘアー、はっきりとした可愛らしい顔立ち。メリハリのある白く豊満なボディ。ビキニ。おお……女神か。「アッ！ゴシップミルちゃん！」「ぶ、ブロンディちゃん！久しぶりな」目の前で再会の抱擁を交わす女たち。俺にもしてくれ。「ン？この人は？」美女が俺を見る。「ハスカールです」16

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「ふーん、そっか！ヨロシクね、パスカール=サン！」眩しい。笑顔と豊満が眩しい。あとパスカールじゃなくてハスカールです。「うーん、でも流石にブロンディちゃんを戦わせるわけにはいかない」「えー！アタシ戦えるよ！」頬を膨らませ抗議するブロンディ=サン。豊満が揺れる。アーイイ。17

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「俺も賛成しない。貴女のような可憐なお嬢さんを危険なイクサに巻き込むなど」「なんだと！アタシをなめるな！」するとブロンディ=サンはマウントを取り、俺を殴り始めた。「グワーッ！？」「イヤーッ！」右！「グワーッ！」「イヤーッ！」左！「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」18

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ブロンディ=サンは俺を殴り続ける。「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！豊満グワーッ！グワーッほうま、アリガトゴザイマスグワーーッ！！」と、ゴシップミル=サンが一瞬視界に入った。とても残念な者を見るような目で俺を見ている。違う。豊満に殴られて嬉しいとかそんな 19

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整理しよう。そこのブロンディ嬢が強いことがわかった。止めても聞かなそうだし連れていくことにした。「任せて！アタシの武器は他にもあるんだから！」これを聞いて豊満に目をやってしまったのはナイショだ。「ブロンディちゃん強いからね…でも何かあっちゃあコトだ。俺が護るよ」21

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「俺だっている。というかそこのゴシップミル=サンよりも役に立つ。ブロンディ=サンは俺が護る」「何言ってンだ。ボキはねぇ、あんたからもブロンディちゃんを護るんだい」生意気な…俺の豊満に何を！「ゴシップミルちゃんとハスカール=サンって何してる人なの？」何って…え？今？それ聞くの？22

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「よ、傭兵。傭兵でニンジャ」「ニンジャ？ジャパニーズ・ニンジャ！？」興味津々に顔を近づける。豊満も近い。そして無邪気に付け足す。「アハハ、全然ニンジャっぽくない！」ごめんよ。おじさんバイキング風なんだ。でもそこの奴よりもニンジャしてるよ。「私？私は売れないバンドマンさ」23

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言ったのは奴だ。ゴシップミル。嘘おっしゃい。「バンドマン！？嘘！素敵！アタシもー！」「知ってる知ってる」ブロンディ=サン、嘘だって。ニンジャだって。「私が弾いてブロンディちゃんが歌う…ロックンロールパワーだ」「うん、これなら勝てそう！」盛り上がる二人には悪いがわけわからん。 24