【イビル・ハーミット・コボリー・ジャージ】

キャヴァリーチャージの紛い物とゾンビーとゴシップミルと。
0
不幸鳥 @hukurou_nayuta

少女が歩いている。夜道にたった一人、たどたどしい足取りで歩いている。背には信じがたいことに、大きな尻尾が生えている。それを引きずり、ずるずると歩く。掠れた鼻唄を歌いながら。彼女はご機嫌そのものだが、見る人が見れば悲鳴をあげ、逃げ出してしまうことだろう。だが、人の気配はない。1

2016-07-16 20:20:12
不幸鳥 @hukurou_nayuta

と、思いきや。彼女も前方の人影に気が付いたようだ。たった一人。佇む影には見覚えがあった。あれは、確か。「キャヴァリーチャージ!キャヴァリーチャージ=サンでし?」少女…ロトンテイルは無邪気に駆け出し、その影に抱き付いた。男は振り向く。「…おやおや?君は…」言い、彼女の頭を撫でる。2

2016-07-16 20:23:14
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「キャヴァリーチャージ=サン…?なんかちょっといつもと違うでし…」見た目は彼とさして変わりはない。だが、その服はよく見ればジャージである。「いつもと違う?私はいつも通りだよ」「違う!違うでし!キャヴァリーチャージ=サンは私なんて言わない!」ロトンテイルは素早く離れた。男は笑う。3

2016-07-16 20:28:03
不幸鳥 @hukurou_nayuta

邪悪に口許を歪め。「そうでしょうなァ。だって私、キャヴァリーチャージではありませんからねェ」彼の右手に、何か薄く光るものが現れた。ロトンテイルはそれを恐れた。あとずさる。「ああ、申し遅れました。ドーモ、私…」瞬時に間合いを詰める。「コボリージャージです」彼女の視界が黒くなった。4

2016-07-16 20:31:13
不幸鳥 @hukurou_nayuta

そのままロトンテイルは崩れ落ちた。「エエ、エエ。いい死体が手に入った……これは、そう簡単には壊れたりしませんなァ」コボリージャージがなにか一言呟き、肩を叩いた。するとロトンテイルはゆっくりと起き上がり、両手を前に突き出し、歩き出した。「アバー…」力ない呻き。その額には、御札。5

2016-07-16 20:35:05
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「さあ、行きましょう。ユーゲン・ドーシたちよ……」コボリージャージは振り返り、大袈裟に両手を広げる。気づけば辺りは、御札を額に貼り付けたゾンビーだらけだ!ナムサン!「ここからはおまえたちの時間ですよ」ジャセン・ニンジャ憑依者の男は、不気味な笑みをたたえ、語りかけた。6

2016-07-16 20:38:34
不幸鳥 @hukurou_nayuta

【イビル・ハーミット・コボリー・ジャージ】

2016-07-16 20:41:01
不幸鳥 @hukurou_nayuta

無数のしもべと、ジャージの主。腐臭漂う夜が始まる。7

2016-07-16 20:43:14
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ゴシップミルは寝ている。昨日の飲み過ぎがたたり、昼下がりまで爆睡している。外で。「……」そのすぐ傍にあるとてつもない存在にも気付かず眠りこけている。「すぴーっ」「……」彼女は全く気付いてないが、6m近くあろう巨大な…六本足のドラゴンめいた生物がゴシップミルを覗きこんでいるのだ。9

2016-07-16 20:47:19
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「……」その生物は、彼女が顔に被せていた羽根付き帽子をくわえ、興味深そうに弄んでいる。「帽子!!」ゴシップミルは飛び起きた。「アイエエ!」そして情けない悲鳴をあげた。無理もない。起きたら傍に巨大な何かがいたのだから。ふと地面を見ると、ひどく不恰好な魔方陣。彼女は記憶を遡る。10

2016-07-16 20:50:58
不幸鳥 @hukurou_nayuta

……ダメだ、思い出せない。「あのう」その生物の空虚な目を見ながら語りかける。正確には目などない。それらしきところを見ている。微かに、鬼火が燃えている。「もしかしてボキがあんたを呼んじゃったのかい」「GRr…」目のないドラゴンは唸り、帽子を持ち主の頭に被せた。「…そうか」11

2016-07-16 20:55:20
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「サイバネに溢れたこの世界で、アタシ喚んだかどうかを精確に定義するのは難しいもんな…」「……?」ドラゴンは首をかしげる。ゴシップミルは一人でこくこくと頷く。「これも何かの縁か、名前あるかい?」「フー…ル……ウィル…ム」 腐った竜は言った。フールウィルム。それが名前らしい。12

2016-07-16 20:58:45
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「そうかそうか!おっと、アイサツが遅れたな。ドーモ。ゴシップミルです。よろしくな」「GRR…!」ゴシップミルが芝居がかったオジギをし、フールウィルムは喉を鳴らす。あまり会話は噛み合っていないものの、何かが通じあっているようだった。「さ、行こうか!」さも当然のように呼び掛ける。13

2016-07-16 21:02:19
不幸鳥 @hukurou_nayuta

フールウィルムも姿勢を低くし、ゴシップミルを背に乗せた。「ははっ!」「GRRRrr!」二人は何処かへ消えてった。ゾンビードラゴンと奇妙な召喚士の邂逅であった。14

2016-07-16 21:06:54
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「なあ、ゴッドファーザー。コボリージャージって奴、知っているか」ザイバツ紋の入った装束を着た少年は、神父姿の男に詰め寄った。彼はコーヒーを啜り、ちらりと少年を見た。「コボリージャージ、ですか」「そうだ」少年…キャヴァリーチャージは急かす。しかし神父は悠長にコーヒーを飲む。16

2016-07-16 21:11:09
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「オイ!!」「端的に言うと知りません」ゴッドファーザーは簡潔に述べた。キャヴァリーチャージは面食らってしまった。「…知らない、だと」「ハイ。そんな、おかしな名前のニンジャは心当たりありません、名付けた覚えも」彼の傍でメイドがコーヒーを注ぎ足した。「重ねて言います。知りません」17

2016-07-16 21:14:41
不幸鳥 @hukurou_nayuta

キャヴァリーチャージは苛立たしげに頭を掻いた。「ンなふざけた名前だから、あんたが関わってるものかと思ってたが、知らねェんだな」ゴッドファーザーは頷き、コーヒーを含んだ。「アッッッツ!!」「スミマセン、ゴッドファーザー!!」急にバタバタしてきた。…帰ろ。「あ、お待ちを」18

2016-07-16 21:18:07
不幸鳥 @hukurou_nayuta

彼を呼び止めたのはメイド…エーデルヴァイスだ。「何だ」「私は知っています、その…コボリージャージ、という方」神父とその周辺に飛散したコーヒーを丁寧に拭きながらエーデルヴァイスが言う。「貴方にとてもそっくりで…ですが貴方よりも遥かに邪悪な、ジャージ姿のニンジャです」19

2016-07-16 21:22:03
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「そうかよ。いや、何だ。俺によく似た者が、或いは俺が夜な夜な悪さをして回ってるっつう噂が立っていた。それはそのコボリージャージって野郎の仕業と考えて間違いねえな」キャヴァリーチャージは目を細める。その目元に険がある。落とし前を付けにいかねば。「…お気をつけてくださいまし」20

2016-07-16 21:26:56
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「コボリージャージの噂、こんなものも耳にしております」エーデルヴァイスはシリアスな声色で告げる。「札。御札を用い、死者を……ゾンビーをしもべとし、操る…危険なジツを持っています」「フン…俺のバトル・ジョルリに比べれば脆いものだぜ、キョンシー軍団なんざな……」21

2016-07-16 21:30:02
1 ・・ 4 次へ