第7話 「特務艦隊『鳶』」 パート2

脳内妄想艦これSS
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

___ 人の恐怖の『在り処』とは ___

2016-06-23 21:02:07
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___ 第7話「特務艦隊『鳶』」パート2 ___

2016-06-23 21:02:14
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7-2-1「提督、これより作戦海域に入ります」 五十鈴はインカムに手を添え鎮守府の風見に通信を入れる。 『分かった。作戦内容について再度の確認は要るか?』 「いえ、平気です。皆も大丈夫ね?」 五十鈴は後ろを振り返り、綾波、浜風、扶桑の反応を伺う。 全員が首を縦に動かすのが見えた。

2016-06-23 21:03:47
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7-2-2 彼女らは今、本土に程近い海域まで出ている。五十鈴の編入があった翌日の朝、早速とばかりに『鳶』の出撃命令が下されたのだ。 今朝方、五十鈴、綾波、浜風、扶桑の四人は執務室に招集され、作戦のブリーフィングを受けていた。 「本日、本土近海で輸送作戦が行われる予定だ」

2016-06-23 21:04:21
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7-2-3 風見の発した言葉を受けて、大淀は艦隊に見立てた地図上のマグネットを動かしていく。 「…だが、その輸送艦隊を狙って深海棲艦の機動部隊が接近中との報告が偵察機から寄せられたらしい」 大淀が新たに深海棲艦に見立てたマグネットを追加し、輸送艦隊に向けて進行中の形を作る。

2016-06-23 21:04:55
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7-2-4「すると、その輸送艦隊を護衛するのが今回の任務なのですね」 「いや、そうではないんだ」 風見は浜風の言葉を制止する。 「我々の艦隊は、輸送隊に向けて敵任務部隊が航空攻撃を仕掛けたのを見計らい奇襲…航空戦力の目が輸送隊に向いているのを利用してこれを討ち取ることにある」

2016-06-23 21:05:28
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7-2-5「それって、輸送艦隊側はどうなるんですか…?」 綾波が心配そうに問う。 「其方には其方で護衛は付けられるが、被害は免れないだろうな…言わば我々は輸送物資を隠れ蓑にして確実な掃討を行う立場という事だ」 「聞こえの良い役回りとは言い難いですね」 浜風は少々苦い表情をする。

2016-06-23 21:06:11
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7-2-6「海に消える分の僅かな物資をデコイに、最小限の編成で最大限の戦果を挙げようという腹積もりなワケだ…故に、失敗は許されない上、制限時間も中々厳しいぞ。攻撃を終えて戻ってきてしまった航空機もまとめて相手にしようものなら此方の数では多勢に無勢というものだ」

2016-06-23 21:06:53
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7-2-7「どのみち…我々に作戦を変える発言力も無ければ拒否権も無い」 そう言う風見の顔が一番苦さを帯びている。 「…頼んだぞ」 … 『作戦開始前に敵に見つかれば元も子もない。向こうからの合図があるまでは敵の索敵には十分注意し、背後を取りつつ地形を利用して息を潜めろ』 「了解」

2016-06-23 21:07:31
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7-2-8 風見との通信を切り、送られてくる座標を頼りに目標の機動部隊との距離を注意深く詰めていく。 「…この辺りまで来れば大丈夫。ここで暫く待機しましょう」 作戦地点付近にある小さな島の岩場で五十鈴は艦隊を待機させる。 「合図がきたら後は手筈通りにね。大丈夫、上手くいくわ」

2016-06-23 21:09:12
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7-2-9「艦隊、作戦地点付近に待機中です」 『分かった。作戦のタイムリミットは、輸送船団を襲撃した敵艦載機主力群が母艦へ帰着するまでだ。余計な反撃を受ける前に終わらせるぞ』 「うぅ、こういうのって緊張してきちゃうなぁ…」 作戦開始直前の張った空気に、綾波は落ち着かない様子だ。

2016-06-23 21:09:44
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7-2-10『なに、お前達なら大丈夫だ。仮に失敗したとしても…その時は全身全霊で逃げろ。後の事などは一切考えるな。兎に角自らの明日への命を繋ぐことだ、忘れるな』 『提督、それは寧ろ綾波ちゃんを緊張させている気が…』 …通信の後ろの方に聞こえたのは大淀の声である。ごもっともだ。

2016-06-23 21:10:10
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7-2-11「心配しないでも大丈夫よ、綾波ちゃん。訓練だってちゃんとしてるでしょう?私、いつも頑張ってるのを窓から見てたから」 扶桑は笑顔で綾波に言う。人を安心させる優しい笑顔だ… その時、通信の向こうで高い音が聞こえた。 『…俺の立場が無くなったところで。来たぞ、合図だ』

2016-06-23 21:11:17
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7-2-12『特務艦隊『鳶』、任務開始せよ!』 「了解!」 風見の号令を受け、四人は機動部隊が攻撃を開始したポイントへ速力を上げて向かっていく。そして暫くして…遠目に空母を伴う敵艦隊が見えてきた! 「敵艦を確認!…空母ヲ級2、軽巡ツ級1、駆逐イ級3!」 「オーケー、突撃よ!」

2016-06-23 21:12:03
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7-2-13 距離を詰める間、敵艦隊も自分達が背後を取られていることに気付き、応戦の体勢を作る。ヲ級達も…数は少ないながら艦載機を繰り出してくる! 「雑魚と艦載機は私に任せなさい!扶桑さん、後方支援は頼みます!」 「任せて!」 五十鈴は機銃を構えるとトップスピードで先陣を切る!

2016-06-23 21:12:53
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7-2-14 突っ込んでくる五十鈴に向け、艦載機の軌道が集中。砲撃距離への侵入を図る綾波と浜風へは護衛のツ級とイ級が応戦の構えだ。 「そんな程度で抑えられると思っているのかしら!」 爆撃を試みる敵機へ五十鈴は右手の機銃を掃射!彼女の頭上に届くことなく敵機は消し飛んでいく。

2016-06-23 21:14:50
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7-2-15 その様子を見て慌てたイ級が1隻五十鈴への砲撃を行うが、狙いが甘く、彼女はこれを軽い動きで難なく避け、お返しとばかりに今度は左手で砲撃! 体勢が崩れパニックを起こした艦隊は格好の標的。攻撃の届かない後方から扶桑も主砲による砲撃を開始。敵の至近距離に激しい水柱が上がる。

2016-06-23 21:15:32
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7-2-16『綾波、浜風、聞こえるな』 ヲ級を射程圏内に捉える直前、風見の通信が入る。 『お前達の武器は、空母を落とすのには十分な火力とは言えん。だがそれは『闇雲に振り回した』場合の話だ、分かるな』 「はい。一発一発が戦局を動かすための射撃。そこに無駄な弾などは無い…でしたね」

2016-06-23 21:16:28
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7-2-17『そういう事だ。訓練で教えた事を試してみろ、二人とも!』 「了解!」 風見との通信を切り、射程圏内に突入。二人は新調された連装砲を構え2隻のヲ級を狙う。 「1発で倒せないなら、1発で優位を取る。綾波、トドメは任せます!」 先に飛び込んでいったのは浜風の方だ。

2016-06-23 21:17:37
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7-2-18 浜風の動きを見て、ツ級が即座に妨害に入ろうとする! 「やらせないわよ!」 それを見とめた扶桑はツ級に向けて一斉射!砲弾の内一発はツ級に直撃し、そのままツ級を撃沈する! 続けざまにノーマークになった浜風はヲ級に狙いをつけて砲撃。浜風の狙った先は…ヲ級の発艦機構だ!

2016-06-23 21:19:25
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7-2-19 ズガンッ!鈍い爆発音が連続で響く。砲撃は狙い通りにヲ級を捉え、艦載機を操る力が失われた。 「残りもいつまでも飛び回ってるんじゃないわよ!」 海上に発艦済みの艦載機は五十鈴によって次々に叩き落とされていく。この機に綾波は更に距離を詰め、雷撃ですれ違いざまにイ級を粉砕!

2016-06-23 21:21:01
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7-2-20「そして、1発で倒せるチャンスは逃さない!」 綾波は両の手の連装砲を2隻のヲ級に向けると、隊列の乱れたヲ級達の間を抜けるようにしながら、距離を詰めた鋭い砲撃を放つ。2つの砲撃は正確にヲ級の進路上に合わさり…吸い込まれるようにヲ級への頭部へ…!

2016-06-23 21:22:53
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着弾、2つの爆音…そして一瞬の後に、海上に残るのは静けさのみとなる。 …完全勝利!

2016-06-23 21:24:18
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7-2-21「やりましたっ!敵艦隊、全滅です!」 綾波は連装砲を手にジャンプして喜ぶ。浜風も旨を撫でおろして、安堵の表情だ。 『良くやってくれた。初任務は快勝…鳶という名前では役不足なくらいだろうかな。だが、余韻に浸っている暇は無い。余計な援軍が来る前に離脱するんだ』

2016-06-23 21:24:55