2016空想の街氷涼祭(氷門旅館)

空想の街2016年7月。氷涼祭。 資料:http://www4.atwiki.jp/fancytwon/
1
前へ 1 2 3 ・・ 7 次へ
nonHrk @Non_Haruki

人工飛行機が空に飛んでも手を振ってくれる #ウロコヤ さんに、旋回をして答える。配達先の #氷門旅館 は、西区の森の奥。迷わないよう、一度時計塔まで北上してから左に旋回。西区の上空を通過していく。 @to_yo_yo_n #ウロコヤ #なごみ茶屋 #天真少年 #空想の街

2016-07-02 19:58:50
nonHrk @Non_Haruki

西区の森の奥へ入る道を見つけた。その道を上空から辿りながら、目的地と思われる古びた洋館を見つけた。建物の少し手前に着地して、正面入り口を見ると、#氷門旅館 を書かれた看板があった。「ごめんくださーい!お届けものでーす!」 @na74ho #天真少年 #ウロコヤ #空想の街

2016-07-02 20:08:34
nonHrk @Non_Haruki

洋館の扉が開く。中から出てきたのは、背が高くて眼鏡をかけた男だった。「こんにちは! #ウロコヤ さんから、こちらにいる呂色さんへお届け物です」リュックサックに入れてきた、願い事が叶う紙の入った箱を渡す。配達完了! @na74ho #氷門旅館 #天真少年 #ウロコヤ #空想の街

2016-07-02 20:41:42
ろっか @rokkarium

手渡された箱は見かけよりずっと重たい。箱をテーブルに置くと呂色は、「少々お待ちください」と言い残し一度扉を閉めた。そろそろ出来上がるはずだ。#氷門旅館 #天真少年 #ウロコヤ #空想の街 @Non_Haruki

2016-07-02 22:37:51
ろっか @rokkarium

闇牛チーズで作った黒いレアチーズケーキ、仕上げに金箔をふりかけまるまるワンホール箱に詰める。手慣れた所作でリボンをかけると扉を閉めてから約3分。「こちらをあなたに」恭しくお辞儀をし呂色は扉を閉めた。 #氷門旅館 #天真少年 #ウロコヤ #空想の街 @Non_Haruki

2016-07-02 22:41:22
nonHrk @Non_Haruki

「ありがとうございます!」とお礼の声は聞こえたのかどうか。洋館の中に入ってはいけないぞオーラが半端ない。でも呂色さんは良い人っぽかった。紙の箱よりも軽い、リボン付きの箱を、リュックサックに詰め込んだ。 @na74ho #氷門旅館 #天真少年 #空想の街 #ウロコヤ

2016-07-02 23:20:32
nonHrk @Non_Haruki

人工飛行機に跨り、再び空へ。まだ日は高く、良い天気だ。来た時と同じ航路を辿り、再びウロコ屋さんへ。無事に #氷門旅館 に届けたことを報告。それと呂色さんから頂いた箱の中身(黒いチーズケーキ!!)を半分、置いていった。 #ウロコヤ #なごみ茶屋 #天真少年 #空想の街

2016-07-02 23:39:01
ろっか @rokkarium

#氷門旅館 #天真少年 #ウロコヤ #空想の街 「命のにおいがする。それもとびきりいいにおい」目をこすりながらしどけない格好で階段を降りてくる銀子の白い足が目に入らぬように、呂色は視線をそらす。「お届け物でした」箱の中には風船につけてとばすと願いが叶うという紙。

2016-07-02 22:57:15
ろっか @rokkarium

#氷門旅館 #天真少年 #ウロコヤ #空想の街 「願い事を書いて飛ばす。そうならばお客様にお配りしてさしあげて」呂色は見逃さない。銀子が一枚そっと羽織の内側に隠したこと。見逃さず気づかないふりをしていた。主人の思惑などわかるはずもないが、願いがあるなら叶えばいいと思う。

2016-07-02 23:00:13
ろっか @rokkarium

結局昨日は随分長いこと飲み続け、銀子が目を覚ましたのは昼過ぎ。出て行ったお客様がもしもお戻りになられたらと気が気ではなかったが、戻ることはなかった。朝一番の鳥のさえずりを聞いたあとで眠りについた銀子。夢も見ずに眠った。朝食の支度は全て呂色が済ませてくれた。 #氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 00:53:09
ろっか @rokkarium

旅館の性質上、今日チェックアウトされる方はほとんどいない。皆さんが明日。今日は銀子と同じように遅くまで睡眠を貪っている方もいれば、早々に街へ繰り出している方もいる。銀子は呂色のこしらえた朝食を食べ終えると、「会うべき人に会ってくる」 と伝えた。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 07:18:32
ろっか @rokkarium

「会うべき人、ですか」訝しげな呂色に気づき、「心配はいらない相手は仕立屋だ」と付け加える。今年のお礼と来年のお願い。この旅館の主として当然の勤めを果たすつもりでいた。「呂色は少し心配しすぎだ」幼い頃からの主従関係は死んだところで変わることはない。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 07:25:17
ろっか @rokkarium

「使いがあればする。だから」いつの間にか差し出されていた氷涼茶に口をつけ息を吐く。「だからお前も時間を見つけて会いたい人に会ってきておくれ」答えを聞きもせず銀子は立ち上げる。もうずいぶん高く昇った太陽がロビーの床に縫い付けるステンドグラスの花々を踏みつけて。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 07:35:22
ろっか @rokkarium

仕立屋は中央区、塔の近くにある。この時期和服注文の駆け込み客で忙しいということを重々承知していながらも、今しか地上にいられない死者の立場。やむを得ず扉を開く。カランカラン。カタカタと気持ちのいいミシンの音。この店にはいつも「生」が溢れている。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 07:50:51
ろっか @rokkarium

ミシンは不思議だ。針を通り抜けた布から生きていく。自分にはできない営みをぼんやり眺めていると、「あ、いらっしゃい」仕立屋が気づいた。まだ1年もう1年。去年の氷涼祭以来の再会。帰ってきた。二日目にしてようやく頭ではなく心がそう理解したことに気づき苦笑する。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 09:43:32
ろっか @rokkarium

「来年のご注文?」「そうだその前にこれを」呂色に持たされた包みを渡す。「これはもしや」「多分ケーキだ」呂色の黒いチーズケーキを仕立屋は愛している。「嬉しい。準備がどんなに大変だって頑張れるわ。来年どうします?」しれっと苦情を言われたことなど銀子は気づかない。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 09:56:23
ろっか @rokkarium

内装のこと。着物のこと。風船のこと。事務的な段取りを整える。けれどこうして年に一度言葉を交わすこと自体が何より大切であることを二人はそれぞれに自覚していた。年の差はあれど、住む場所は違えど、生死の違いはあれど、大切な友人であるには変わりない。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 10:04:12
ろっか @rokkarium

数年前仕立屋が動けなくなった頃のことを思い出す。連れ合いを完全に失ってしまった彼女に旅館の準備を頼むことなど現実的にも心情的にもできず、その時は違うツテをたどった。あのまま関係は途切れるかと思っていたのにこうしてまた再び共に過ごせる幸福に感謝する。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 10:17:38
ろっか @rokkarium

「銀子様聞いてる?」「ん?ああすまない。昔のことなど考えていた」「昔のこと?」「数年前のことだ」「ああ、その節はご迷惑を」「迷惑なんかなかった」「私はもっと前のこと考えてた」「もっと前?」「そう。出会った頃のこと」仕立屋と銀子が出会ったのは数十年も前のこと。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 10:23:33
ろっか @rokkarium

その頃の銀子はぞくに言う深窓の令嬢で、屋敷の外など知らずに育った。触れあう人間は限られていてそのうちの一人が仕立屋の師匠。修行中の身である幼い仕立屋は、師匠に伴われ屋敷に出入りしていた。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 10:31:19
ろっか @rokkarium

「そうそう銀子様、お嫁にいくところだったのよね」「意に添うとか添わぬとかそんなことすら考えられなかった。あの頃の私はあまりに愚かで無知だった」#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 14:39:47
ろっか @rokkarium

嫁ぎ先が決まるるとすぐに先代仕立屋は嫁入りの衣装作りに追われた。他にもたくさんの職人たちが出入りするその部屋で銀子は他人事のようにその景色をみていた。幼い頃から付き従ってくれている呂色がお茶を取り替える。美味しいはずのお茶には味などなかったことを覚えている。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 14:46:12
ろっか @rokkarium

「今でもよく解らないんだけど銀子様はあの結婚ってどうだったの?」「どうっていうと?」「会ったこともない人と結婚するって嫌じゃない?」「嫌という選択肢がそもそもない」「お嬢だなあ。でも好きな人とかいたでしょう?」「すきなひと……そうだな。うん。それは辛かった」#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 15:04:05
ろっか @rokkarium

好きな人がいて辛かった。けれどそれは時を経てようやく解ったこと。あの頃は気づいてすらいなかった。気づくことすらできなかった。結婚を是としながら、美しい着物や宝石になんの喜びも感じられないことをそういうものだと、理由などないと思っていた。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 15:08:10
ろっか @rokkarium

その頃、婚姻の準備を整えていたのは銀子だけではなかった。呂色もまた、規模は違えど結婚の準備をはじめていた。幼い頃から銀子に仕える呂色。もちろん銀子の嫁ぎ先にも共に向かう手はずで、そんな彼への餞として銀子の父は彼に花嫁を準備した。#氷門旅館 #空想の街

2016-07-03 15:24:49
前へ 1 2 3 ・・ 7 次へ