空想の街・氷涼祭'16 一日日 #赤風車

#空想の街 氷涼祭の一日目(16/07/01) #赤風車 纏め。 過去本編などはこちら→http://nowhere7.sakura.ne.jp ※文章や画像の無断転載及び複製・自作発言等の行為はご遠慮ください。 公式様参加者様、お疲れ様でした。コラボしてくださったかたがた、有難うございました。 皆様のまとめを随時おすすめ設定させて頂く予定です。何か御座いましたらご一報頂けますと幸いです。
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不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

ここで腹ごしらえをさせてもらうのがいいだろう。徒華はそう決め、透明な風船を手首に巻いた後で思い切って茶屋の奥へと声をかける。 「すみません、旅の者です。お願いしても宜しいでしょうか」 @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 12:22:07
nonHrk @Non_Haruki

@nowhere_7 「はい、只今」椿木は洗い物をしていた手を拭いて、草履を履くといそいそとお客さんの元へ。 「いらっしゃいませ、何のご入り用でしょう?」 草木染めの着物の上に割烹着姿の椿木が、はんなりと笑う。 @nowhere_7 #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 12:32:53
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

姿を見せた女性に徒華は一瞬言葉をなくしてしまった。自分で決めてきたことだが、理由もわからぬ男装をしている己がますます惨めになってきたのだ。 「お忙しいところすみません――今日はお天気がいいですね。何か御馳走になりたくて」 @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 12:35:46
nonHrk @Non_Haruki

「本当に、良いお天気ですね。冷たいお茶がよろしいですかね?かき氷や、冷やしぜんざいもありますよ」 軒先の腰掛けにお客さんを案内して、和紙に書かれたお品書きを見せる。 「詰め痛い物が苦手でしたら、温かいものもありますよ」 @nowhere_7 #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 12:47:08
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

すきっ腹にとんだ贅沢だ、徒華は目を輝かせてお品書きへ飛びついてしまう。甘いものは好きだが、あまり自分のためには作れない身であるせいもあり、一際高級に映った。「目移りします…、では冷えたものを是非。お抹茶と蕨餅で」 @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 12:53:08
nonHrk @Non_Haruki

「かしこまりました、お待ちくださいね」注文をきいた椿木は、店の奥の冷蔵庫を開けた。予め切り分けておいたわらび餅に、きな粉をまぶして器に載せる。注ぎ口のついた小さな器には、黒蜜を。そして抹茶を立てると、盆に乗せて運んだ。 @nowhere_7 #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 12:59:00
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

出してもらうのが待ち切れず、徒華はうずうずしながら店の長椅子から立ち上がって盆を受け取る。「わざわざ有難うございます。頂きますね」 手を合わせ、疑問を舌に載せた。「もしかして、お一人で切り盛りされていらっしゃるんですか」 @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 13:03:03
nonHrk @Non_Haruki

「お待ちどうさまでした、ごゆっくり召し上がってください」お辞儀をする椿木。「いえ、主人もおりますが、今は娘のお守りをしていて」そう言ってか言わずか、店の奥から瑞恵の泣く声が響いてきた。「あらあら、すみません」 @nowhere_7 #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 13:09:42
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

――小さな子がいる、のだろうか。奥を気にしている背筋のいい着物姿の女性を見、徒華は冷たく震える蕨餅を頂く。美味しい。夏はこれが一番だ。 「ご家族でされてるんですね。お子さん、もしかしてお母様を呼んでいらっしゃるのでは」 @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 13:14:15
nonHrk @Non_Haruki

「ええ、そろそろ起きて、お腹を空かせている頃ですね。申し訳ございませんが、少しよろしいでしょうか?何かございましたら、主人が来るように致しますので」椿木は申し訳なさそうにお辞儀して、店の奥から繋がる住居の娘の元へ急いだ。 @nowhere_7 #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 13:18:14
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

「ええ勿論です。娘さんが幼い内は、ご両親ともに必要でしょうから」こちらは平気ですよ、と、徒華は女性を見送る。 きちっと上げている髪がまばゆかった。自分もあんな姿勢で宿をやれるだろうか、…いや、姉夫婦もああなるのだろうか。 @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 13:22:13
nonHrk @Non_Haruki

椿木と入れ替わり、茶屋の主人の巌が奥から現れた。坊主頭に黒縁眼鏡、作務衣に雪駄という、愛想と説法の無い修行僧みたいな風貌。「いらっしゃい」しかし、お客さんには愛想良く、と妻の椿木に常日頃いわれているので、挨拶だけでも。 @nowhere_7 #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 13:26:26
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

のんびりした昼下がり、冷えた抹茶で喉を潤した徒華の前に、今度は店主と思しき男性がやってきた。まるで僧のようだ、と思うだけに留め、徒華は会釈する。「お邪魔しております。お店、ご家族でされてるんですね…、楽しそうで羨ましい」 @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 13:31:54
nonHrk @Non_Haruki

「ええ、まあ」楽しそう。羨ましい。巌自身に対してはあまり聞き覚えのない言葉だが、椿木と瑞恵を含めた『家族』に対してかかる言葉なら、そうなのであろう。「おかわりは、よろしいですか?」家族を褒められ、自然と愛想が良くなる。 @nowhere_7 #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 13:36:57
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

「お代わり頂きます」ついつい嬉しくなって匙が進んだ徒華はお願いする。「奥様も、きっと私とそんなに年も変わらないでしょうに――しっかりされていてお美しくて。うちも故郷で宿をやっているんですけど、私も頑張ってご飯作らないと」 @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 13:49:42
nonHrk @Non_Haruki

「妻の実家は、家業が民宿でした。そちらも大変でしょう」しっかり者、昔から椿木はそう言われる。親が仕事に忙しく、気を張って生きるのが今でも癖なのだろう。「おかわり、どうぞ」わらび餅と、玉露。玉露なら、巌も急須で淹れられる。 @nowhere_7 #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 13:59:09
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

どうやらあの夫人とは共通点が多いらしい。「玉露まで…有難うございます」ゆっくりと飲み、店先に広がる陽だまりを眺めて息をつく。――姉夫婦に子が出来たとして、自分は素直に応援できるだろうか。狼狽えずに台所をやれるだろうか。→ @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 14:09:30
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

「あ、すみません、居心地がいいものでつい長居を」結構な量を食べてしまった。自分の食欲に恥ずかしくなり、徒華はからになった皿を盆ごと出す。「本当に美味しかったです。御馳走になりました、奥様やお子様とお元気でいらして下さい」 @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 14:14:00
nonHrk @Non_Haruki

「ありがとうございます。またいつでも」盆を受け取った巌は、先ほどの彼女の言葉を思い出す。「あまり、気を張らずに」頑張らないと、という人間は、椿木も含め、頑張りすぎるところがある。それを好んでいるのかも、しれないが。 @nowhere_7 #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 14:23:21
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

支払いながら徒華は目をまたたかせた。「…そうですね。でもほら、明日は氷涼祭の本祭でしょう、私はゆっくり羽を伸ばすつもりです。大丈夫ですよ。お気遣い有難うございます」心優しい主人に、御馳走様でした、と言い、茶屋を後にする。 @Non_Haruki #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 14:29:24
nonHrk @Non_Haruki

「お気をつけて」去っていく彼女の後ろ姿を見届けて、下げた盆の後片付けをする。住居を覗くと、お腹を満たして眠りかけている娘と、寝かしつけているから、と唇に指をあてる妻。巌は店の外の腰掛けに座ると、煙管に火を入れ吸い始めた。 @nowhere_7 #なごみ茶屋 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 14:48:19
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

この街には随分と色んな店がある、と徒華は改めて思う。何度も来るのが楽しいのだ、前に会った人にも会えるし、もしも会えなくてもまた新たな出会いがある。 向こうの町もそんな風にしてみたい。宿が再興したら、姉夫婦を支えていこう。負けずに料理をしよう。 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 14:52:41
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

「にしてももし姉さんたちに子ができたら――私が子守をすることになるのかな」子をあやすことは厭ではないのだ、あの姉夫婦の子を楽しみにしている節は徒華にもある。 ただ、なんとなく、今はまだ、受け止められるかわからなかった。「おめでとうって、素直に言えるだろうか」 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 14:56:18
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

いや、未来のことは未来のことだ。今はまだそんな話は欠片もないのだし、それよりも向こうの町には問題が山とある。それに、優先したいものは矢張り弟の件だった。 茶屋の主人に言ったことに偽りはない。この氷涼祭はきっと、徒華にとって大切な三日になる。 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 14:58:55
不可村天晴/ネプリ配信中 @nowhere_7

「ひとつひとつ、見極めていかないといけないな」 ここまで糸を繋いでくれた相手を、徒華は青空に浮かべ、慣れない下駄でまた街を歩きだしていった。 #赤風車 #空想の街

2016-07-01 15:00:08
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