ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ 【5:ダンス・トゥ・ツキ・ヨミ】

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ツキジ・ダンジョンの守りは今なお堅牢で、デッドリーだ。セクトが制圧済の上2階層には、ほぼニンジャ戦力が存在しなかった。各所のアンデッドニンジャも無論厄介だが、守りの要は第3階層のフォーティーナイン、第4階層のカラミティ。そのどちらかを排除すれば、ツキジの守りは一気に崩れるだろう。

2016-07-02 19:09:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、如何にして?ハーヴェスターは愉しげに戦略マップを操作した。「既に第二波を編成した。他にも策はあるが……アルゴス=サンの承認待ちやら何やら、色々複雑でな」「既に第二波を?先ほど南東方面へ向かった戦力が、それですか?」ヴァニティが問う。「左様」「あの程度で、落とせるのですか?」

2016-07-02 19:15:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「不満か?気にするな、言ってみろ」ハーヴェスターは片眉を吊り上げ、見やった。市民監視網の乱れが進行してゆく様に彼女が苛立っているのは明らかであった。だが彼女は過剰とも思えるほどの防衛戦力とともに、ジグラット待機を命じられているのだ。「今すぐにでも私自身で奴らを捻り殺したい程です」

2016-07-02 19:20:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「頼もしい法務官どのだ!じきに活躍の場は訪れよう。ハイデッカーを率い、最前線で思う存分殺して頂きたい。だがツキジではない」「何故です?ネオサイタマの死神が大気圏外にいる現状で、なぜこれほどの戦力をジグラットに残す必要が?総軍とは言いません、せめて半数で、一気にツキジを攻めては?」

2016-07-02 19:28:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「できんな」「合理的理由を」「ジグラットは手薄にできん。それに」老将は葉巻を吹かした。「ツキジのごとき戦場では、どれだけ数を送りこもうと、坑道や隔壁がボトルネックとなって実際先細る。行軍にもたつきイチモ・ダジーンとなる。数が重要なのではない。特殊なジツを持つ少数精鋭が必要なのだ」

2016-07-02 19:39:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「了解です。それでツキジの盤石な守りを崩し、秩序の混乱を防げるのならば」彼女は了解し、ハイデッカー司令部への暴動鎮圧継続命令を再開した。「盤石な守りなど、たわけた幻想よ」ハーヴェスターは戦略マップを操作しながら彼女を見送った。「そんなものは、どこにもない。この地球上のどこにもな」

2016-07-02 19:49:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それよりおよそ半刻後。ツキジ・ダンジョンへと、アマクダリの攻勢第二波が押し寄せた。その大半はシデムシとペイガン。加えて、その戦力の大部分は、第一波の敗北をシンプル極まりない物量作戦と人海戦術によって克服せんとするかのごとく、上層から無謀な突入攻撃を仕掛けてきたのだ。

2016-07-02 19:58:44
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だがツキジに根を張るフォーティーナインの力は、圧倒的であった。彼女はまさに一人も漏らさず、ニンジャもシデムシもハイデッカーも区別なく、阻み、捕え、壮絶に屠り続けたのだ。対して、カラミティとブルーブラッドが守る鍾乳洞では、自律兵器部隊による散発的な攻撃が繰り返されるだけであった。

2016-07-02 20:04:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

このまま第二波は容易く退けられるかに見えた。最初に異常に気付いたのは、フブキの霊体とともにINW内に篭り、戦況を俯瞰していたリー先生であった。

2016-07-02 20:08:17
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「ンンンー、良くないねェー、良くない兆候だ。フブキ君」「何ですの?リー先生?」フブキの霊体が不安げに飛来する。遠く離れた各所で、触手は今も敵を屠り続けている。「顔色が悪い」「あら、スミマセン、さすがに私、少し働きづめで」「送り込まれてるペイガンとハイデッカーの中身、分析したまえ」

2016-07-02 20:12:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「モシモシ、ブルーブラッドです。リー先生、どうしました?エッ?上が…ダメかもしれない?大丈夫です!僕がいます!」鍾乳洞の隔壁前で、ブルーブラッドはINWとの通信を行っていた。直後、複数のニンジャソウルの接近を感じ取った。「スミマセン!ちょっと待っていてください!すぐ片付けます!」

2016-07-02 20:17:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

敵の数はニンジャ5人。これまでで最大の戦力だ。鍾乳洞を一直線に進んでくる。ブルーブラッドはカラミティに命令を飛ばし、自身も色付きの風となって斬りかかった。敵部隊はサクリリージ、ズィーミ、ヴァンブレイス、ホーリードメイン、そして狂信の力によって虐殺から生還した血みどろのビショップ。

2016-07-02 20:25:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブルーブラッドはカラミティが吐き出す火球の爆発を巧みにかいくぐりながら、まず最も鈍重なヴァンブレイスに襲いかかり、すれ違いざまのアンブッシュで、重サイバネニンジャの首を刎ねた。他の敵の攻撃をわずかに食らいながら、ブルーブラッドは着地し、四連続側転で隙を消した。

2016-07-02 20:34:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その間もずっと、ズィーミは深い精神集中に入りながらカラミティだけを睨み続けていた。「サヨナラ!」ヴァンブレイスの爆発四散を合図に、ニンジャたちは流れるようなアイサツとイクサに入った。ズィーミの耳には、その喧騒も聞こえていないようだった。彼を狙う吸血鬼の爪を、部隊が辛うじて防いだ。

2016-07-02 20:41:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サクリリージらが吸血鬼と激しく斬り結び、火達磨になって逃げ惑うホーリードメインがカラミティに踏み潰され爆発四散する中、ズィーミは緑の火の間を夢遊病者めいて歩き、眼から血を流しながら、両手をかざしてカラテシャウトを放った。「イイイヤアアーーーーッ!」恐るべきジツ、ミマカリがために。

2016-07-02 20:45:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャスレイヤー・ネヴァー・ダイズ」より:【5:ダンス・トゥ・ツキ・ヨミ】続き

2016-07-03 22:36:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サクリリージらが吸血鬼と激しく斬り結び、火達磨になって逃げ惑うホーリードメインがカラミティに踏み潰され爆発四散する中、ズィーミは緑の火の間を夢遊病者めいて歩き、眼から血を流しながら、両手をかざしてカラテシャウトを放った。「イイイヤアアーーーーッ!」恐るべきジツ、ミマカリがために。

2016-07-03 22:36:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

地球は既に視界に無い。精密な断続的ブースター噴射の光を放ちながら、ニンジャ専用超高速スペースシャトル「クロフネ」は予定時間通りに月衛星軌道に進入を果たした。黒い立方体群は無言のうちに舟の通過を許可した。それらはかつてユリシーズの探査船を無慈悲に葬り去った正体不明の存在であった。

2016-07-03 22:41:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはチャドー仮死状態から覚醒した。瞬間的にニンジャ握力が増し、しがみついたアンタイ・ニンジャ装甲板がミシリと音を立てた。ナラクの力を用いたとしても、このウルシ塗りめいた最先端テックの結晶たる装甲を破り、破壊する事は不可能であろう。何より彼自身の目的もそれではない。

2016-07-03 22:46:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼の目的は月のアマクダリ・メガトリイ基地へ潜入し、アルゴスを滅ぼし、アガメムノンを葬り去る事だ。地球は隠れた。ニンジャの暴虐によって歪められ果て、ディジタル・ノイズの風と雪に沈んだネオサイタマの影すら、もはや遠く、この舟には届かない。届くのはただニンジャスレイヤーのカラテのみだ。

2016-07-03 22:56:06
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