鳥に纏わる掌編・籠屋・曳舟荘～空想の街にて／氷涼祭2016

こみや@空想の街 @Ne2_co

鳥籠の持ち手の具合を確かめる。覆い布の具合を確かめる。 ――やれやれ、やっと商売ができるときたもんだ。 羽音もささやかに舞い降りてきた影が、その肩に留まった。 ――お前も楽しみ……いッ、こら！耳を噛むな！ #空想の街 #鳥に纏わる掌編

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「さてさて、準備完了ッときたもんだ！」 いつもより少し早く準備を終えて、掌をぱんっと打ち鳴らし。背後の影へと振り向いて、 「……だーいじょうぶだってえ、ちゃーんといいお土産、持って帰ってくるからさ！」 #籠屋 #空想の街

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控え目な音を、ひとつ、ふたつ。控え目な声も、ひとつ、ふたつ。 ――短夜じゃとて闇路を帰る、 つ、と手が止まってその瞳を軽く伏せて。 ――せめて持たんせ、花の枝。 #空想の街 #曳舟荘

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【設定】 #鳥に纏わる掌編 ・鳥屋…小さな少年の姿をした〈鳥〉を売る壮年。今年も黒地の絽の単に鳥打帽。今回の鳥籠、大きめですね？ #空想の街

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【設定】 #鳥に纏わる掌編 ・ちどり…〈鳥〉の少年。小学校中学年くらいには見えるかもしれない。おとなしい。 ・めじろ…〈鳥〉の少年。こちらはまだ小学年くらい。だいぶ言葉が流暢になりました。活発。 #空想の街

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【設定】#籠屋 ・籠屋…鳥籠を売る棒手振りの中年。鳥籠モチーフ小物も各種取り揃えております。鳥籠型の風鈴が季節商品として入荷中。（夏場なので花の販売は今回おやすみです） #空想の街

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【設定】#曳舟荘 ・曳舟荘の大家…人呼んでヒキフネさん。雄の三毛猫かつ化け猫。曳舟荘は南区、蓮根橋森側にあるアパート。現在ちどりとめじろ、#赤風車 の一文字君、 #時計坂の占い師 の幸也君が入居中。空き部屋あります。 #空想の街

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何処にもない､何処にでもある街｡空想の街｡時計塔の街での３日間｡はじめましての貴方も､おかえりなさいの貴方も､街は全てを受け入れます｡どうぞ､お楽しみください｡　#空想の街

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「ね、楽しみだね」 ちどりが小さくわらって言った。 うつぶせになって、まくらをかかえこんで、足をぷらぷらさせている。 「ん」 めじろはちどりを見つめかえしてうなづいた。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

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「ぼくらのゆかた、少し大きくなおしてくれるって、言ってたね」 「ん」 「楽しみだねー」 「ん」 「もう、めじろったらねむいのー？」 ちょっかいを出すようにのびてきた手を逆につかんでおしたりひっぱったり。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

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くすくす、笑い声がかさなる。 そしてどちらからともなく、しー、と指を立てて、にこ、と笑って、しずかになる。 「……ね、ちどり」 めじろはきいてみることにした。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

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「ひょうりょうさい、って、しんだひとがもどってくるんだよね？」 「うん」 「もどってきてほしい、っておねがいしたら、もどってきてくれるんだよね？」 うん、とこたえて少しちどりはふしぎそうなかおになる。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

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「それがどうかしたの？」 「んー……」 めじろはまくらにかおをうずめた。 「……おおやさん、もどってきてほしいひと、いないのかな」 それを聞いてちどりはにがわらいになる。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

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「おおやさん、長生きだもんね。きっと会いたいひとはいるけど、すなおに会いにくかったりするのかもよ？」 「うむー、むずかしいなあー」 「ねー」 ちょっとまた笑いあったあと、めじろがふとまがおになる。 「……ちどりは？」 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

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「……ぼく？」 「……ちどりには、いる？ いまはもういない、あいたいひと」 ――少しだけまをおいて、ちどりはくびをふった。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

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「ぼくは鳥屋さんや、かご屋さんがあそびにきてくれたら、それでいいよ」 ちどりはそういってほほえんだ。 めじろはそんなちどりのかおを見つめかえして――ん、とみじかく答えた。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

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――ちどりのねいきがきこえる。 めじろはぱち、と目をあけた。 そしてごろりとねがえりをうって――ちどりにせなかをむけたまま、目をとじた。 #空想の街 #鳥に纏わる掌編

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猫とは概ね水を嫌うものだ。が、ひとに交じってこうも長く経ってしまうと、寝ざめの水が快くも思えてくる。冷水で顔を洗って目を覚ました曳舟荘の大家は――何の気なしに廊下へと出る。 #空想の街 #曳舟荘 と、押し殺した足音が降りてくるのに行きあたった。とん、と壁に背を預けて待ち受ける。