憲法公布70年

今年は日本国憲法が公布されて70年。帝国議会に憲法草案が提出された1946年6月20日から、議場ではどんな議論が交わされ、世の中では何が起きていたのか。当時を振り返っています。
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谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月26日 「国民主権」を前文で宣言することに小委員会で異論が出た。芦田委員長は速記を止めさせ、GHQとの折衝を明かす。速記再開。自由党議員が後押した。「国際情勢に鑑みて、国民主権という言葉をはっきり出さぬと具合悪いのだ。御了解を求めるわけにいかぬでしょうか」

2016-07-26 09:20:57
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月25日 憲法草案をどう修正するか。議論の舞台は、この日第1回の会合があった小委員会に移った。通称「芦田小委員会」。与野党の14人からなる秘密会。その速記録が公開されたのは、じつに1995年。それまでは、米公文書館が持つ「速記録の英約」を和訳した資料しかなかった。

2016-07-25 10:19:51
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月24日 特別委での審議が終わり、各政党の修正案が出そろったと朝日新聞は報じる。自由党と進歩党の共同修正案は6項目。国民の「納税の義務」を加える一方、国会議員などの「憲法尊重擁護義務」や憲法の「最高法規性」などを定めた章をまるごと削除するとの内容だった。

2016-07-24 11:25:55
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月23日 特別委での質疑がすべて終わったこの日、金森担当相らはGHQのケーディス民政局次長らと再び会談した。求められたのはやはり「主権在民」の明記だった。前文や第1条の具体的な箇所まで指摘されるに至って、「修正の必要はない」と抗していた金森氏らもついに折れた。

2016-07-23 13:56:49
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月22日 憲法改正の発議はなぜ両院3分の2の賛成が必要とされ、衆院の優越性がないのか。金森徳次郎担当相は言う。「法律は急ぐ。早く執行に付したいという立場から衆議院に重点を置きますけれど、憲法は急ぐということよりもむしろ、慎重ということに重きを置かなければならぬ」

2016-07-22 08:52:47
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月21日 朝日新聞はこの日「二院制採用に疑問」との社説を掲げた。参院は地方・職能の代表に、との政府方針に疑問を投げ、「国民の最高意思は衆議院に一元的に表明せられるのが、正しい民主政治の建設の途である」と主張している。さて70年を経て、「正しい途」はどうなったか。

2016-07-21 09:56:22
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月20日 芦田均委員長は「またしても重複した的ぼけの質問が続いてイライラする」と日記でぼやく。とは言え、現代から見ると驚きだが、「行政権は内閣がこれを行う」(草案61条)など条文について全く質問のない場面も多く、逐条審議はこの日だけで一気に30条以上をこなした。

2016-07-20 09:04:34
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月19日 貴族院にかわって設ける参議院は、多数党の暴走を防ぐための抑制機関であるという金森徳次郎担当相の答弁に、原健三郎議員は疑問を投げる。「二院制度の議会においても、軽率なる立法は容易にかつしばしば行われております。それは結果からみて明らかなる事実であります」

2016-07-19 10:24:47
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月18日 GHQ民政局のビッソンは、新憲法公布で改められるはずの法律を「厳重に監視しつづけること」が重要だと記した。枢密院や官僚組織などの巻き返しで「新憲法が国民に保障している権利を弱め、これを覆す傾向を持つ条文を盛り込ませないようにすることが必要である」

2016-07-18 11:41:09
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月17日 新憲法下でも国体は変わりない、という議会説明は憲法の根本目的を誤らせるものだ――GHQのケーディス民政局次長は首相官邸で、金森徳次郎担当相に釘を刺す。「天皇を除去せよとの(外からの)要求を斥ける唯一の方法は(略)国民の意思が主権であるということである」

2016-07-17 14:41:41
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月16日 「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」そして「集会、結社及び言論出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」。この日の逐条審議では、これらについて質問がなく、議論を交わすことなく終わった。根源的な決まりだから? 根源的な決まりなのに?

2016-07-16 11:11:45
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月15日 逐条審議はいよいよ9~11条に。草案9条が保持を禁じる戦力とは何かという話になった。金森徳次郎担当相は答える。「国内治安維持の為の警察力という言葉を借りて、陸海空軍の戦力そのものに匹敵するようなものを考えまするならば、やはりこの憲法9条違反となります」

2016-07-15 10:07:18
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月14日 憲法審議は東京裁判と並行で行われていた。奇しくも東京裁判の開廷は、のちに憲法記念日となる5月3日。法廷は、満州事変の立証に入っていたが、ウェッブ裁判長はあまりの暑さに11~15日の休廷を宣言。この日、巣鴨プリズンで木戸幸一内大臣はトランプゲームに興じた。

2016-07-14 10:01:26
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月13日 40年後に衆院議長となる原健三郎議員は、憲法草案の英語版は「非常に流暢で意味がよく分かる。けだし名文であります」と称賛する。「しかるにこの日本文のいわゆる憲法草案はまことにお粗末で、中学生の英文和訳のごとき感のある箇所が随所にあるのであります」

2016-07-13 09:47:52
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月12日 逐条審議1~5条。不敬罪はどうなるのか、と問われた金森徳次郎担当相は答える。「(国の象徴である天皇が)最も貴ばるべきであることは当然でございまして(略)天皇の御地位に対する名誉その他の毀損が重く罰せられることが当然であろう」。特に反論もなく議事は進む。

2016-07-12 18:32:36
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月11日 委員会は条文の審議へ。まずは前文。この憲法でも国体は戦前と変わらぬという政府答弁を、及川規議員(社会党)は批判する。「天皇が主権者である、これが日本の国体だという観念は、政府が植え付けたのでありまして(略)いつの間にか政府は自分の国体観念を変更している」

2016-07-11 11:27:52
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月10日 議会審議の報告でGHQを訪ねた入江俊郎法制局長官らに、ケーディス民政局次長は草案94条への疑問を呈する。草案94条「この憲法並びにこれに基づいて制定された法律及び条約は、国の最高法規とし……」。憲法は法律よりも上位に、という形に、のちに修正される。

2016-07-10 17:50:38
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月9日 総括質疑で芦田均委員長は、外圧による憲法改正との見方を批判する。「動機はもっと深い所にあると思う。この議事堂の窓から眼に映るものは何であるか。蕭条たる焼け野原、そこに横たわっていた数十万の死体(略)その中から新しき日本の憲章は生まれ出づべき運命にあった」

2016-07-09 15:00:13
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月8日 「質問答弁も聞き飽きたり」。反軍演説の斎藤隆夫大臣は、早くもこんな感想を日記に残す。憲法草案をめぐる委員会審議はこの日、午前10時19分に始まり、午後4時1分までみっちりと。しかし、いまだ総括審議にとどまり、各条文ごとの審議は手つかずだった。

2016-07-08 10:56:36
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月7日 当時の朝日新聞は全2頁。「黒ドレス姿でやや早口」と初の女性議員、加藤シズエ氏の前日の登壇を記事にしている。加藤氏は、憲法が「両性の本質的平等」を説くなら、夫が貞操を破った場合も離婚を認めるべきと迫った。「これは中々重大な……」。答弁は笑い半分だったとある。

2016-07-07 13:15:32
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月6日 米英仏ソなど11カ国からなる極東委員会が決めた「日本の新憲法についての基本原則」がマッカーサーに伝えられた。「日本国憲法は、主権が国民(people)にあることを認めなければならない」「天皇制の廃止か、より民主的な線にそって改めるよう奨励されねばならぬ」

2016-07-06 10:41:29
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月5日 国会は「唯一の」立法機関である、と強調している訳を尋ねられ、金森徳次郎担当相は答える。明治憲法は、緊急勅令や独立命令によっても立法でき「弊害の根源になっております。今度は何が何でも実質的の立法をどこかに集中してしまう。こういうふうに大原則を立てました」

2016-07-05 12:32:59
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月4日 主権は天皇を含めた国民全体にある――玉虫色の政府答弁に林平馬議員は疑問を投げる。天皇も国民のうちと言うならば「選挙権も当然有せられるでしょう。いずれの政党に入党せられることも御自由でなければならぬ」。金森担当相は否定する。「天皇は不偏不党、公正無私」

2016-07-04 16:53:07
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月3日 強大な権能を持つ国会で多数党が暴走したら、と杉本勝次議員(社会党)は案じる。「お尋ねは、数の力の濫用でかえってデモクラシーを破壊しないか、何かの考慮はないのかという趣旨と考えます」と金森徳次郎担当相が応じる。「参議院を設けた趣旨がそのひとつであります」

2016-07-03 14:06:35
谷津憲郎 @yatsu_n

【日本国憲法】7月2日 その説明がよほど胸に刺さったのか、昭和天皇の侍従だった徳川義寛氏は日記に、天皇の地位をめぐる金森徳次郎担当相の前日の弁を書き写した。「天皇はわれわれのあこがれの中心であり、心の奥深く根を張っているところの繫がりの中心である」。アコガレがはやり言葉になった。

2016-07-02 13:14:59
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