デビルサマナー　葛葉あきつ丸vs吸血極道　＃５

劉度 @arther456

「ぐうっ……！」刀を頭上に掲げてガードするが、一撃の重みがあきつ丸に膝をつかせた。「主殿！」関羽が駆け寄り、偃月刀を振り下ろす！テンドウはこれを片手で受け止める！「っらあ！」更にもう片方の手で柄を跳ね上げ、偃月刀を弾き返す！「貰ったあ！」その隙に懐に飛び込む！21

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「ぬうんっ！」「うごっ！？」肉薄したテンドウを待っていたのは、関羽の繰り出した蹴りだった。思わぬ反撃にテンドウの体が吹き飛ばされる！「ハァァ……」関羽は気を練りながら、ゆっくりと偃月刀を振り上げた。周囲の空気が竜巻のようにかき回され、刃に寄り集まっていく！22

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「トアアァァッ！」気合一閃、振り下ろした刃は爆風を生み出した！「ぬおおおおっ！？」風は畳を吹き飛ばし、テンドウを打つ！テンドウは耐えたものの、その後ろの壁は風圧に耐え切れず、外側へと爆ぜ飛んだ。空いた穴から、大広間の中に篭った熱気が抜け出し始める。23

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その風に乗って、黒い獣がテンドウに跳びかかった。「オッラアアッ！」アキラの拳がテンドウのガードを弾き飛ばした！「なっ！？」「落ちろっ！」アキラが２発目の拳を放つ！だが、体勢を崩しながらもテンドウはこれを弾いた。「何っ！？」前のめりになりすぎたアキラの腹に、膝蹴りが突き刺さる！24

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「ガハッ……」「アァッ！」続いて、アキラの顎にアッパーが打ち込まれた。アキラの体が宙に浮き、そして畳の上に倒れこんだ。「アキラ殿！」あきつ丸が刀を構え突進！テンドウの喉めがけ、鋭い突きを繰り出す！刃はテンドウの鋼の筋肉を貫き、左肩に突き刺さった！25

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「なっ……！？」だが、驚愕したのはあきつ丸だった。刀が抜けない。「ぬううぅぅ……！」テンドウがヤクザヴァンパイアの筋肉で刀を押さえ込んでいるのだ！刃は傷から痛みを送り、退魔の力を注ぎ込んでいる。にもかかわらず、テンドウはそれを筋力でねじ伏せている！26

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そしてあきつ丸は刀にこだわりすぎた。「ハッ！」気付いた時にはもう遅い。顔面に拳を受け、あきつ丸の体が吹き飛ばされた。「主殿！」関羽があきつ丸を受け止める。「う、うぐッ……」あきつ丸の白い顔が、吹き出した鼻血に染まっていた。致命傷ではないが、意識が朦朧としている。27

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「おのれえっ！」関羽は偃月刀をテンドウめがけ振り下ろした！テンドウはこれをバックステップで回避、そして偃月刀の柄に乗ってジャンプ、関羽の頭上を取る。必殺の踵落としの体勢だ！「ぬんっ！」関羽は手を伸ばした。掴んだのは、テンドウの軸足。「何ィ！？」28

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関羽は力任せに腕を振り下ろした。凄まじい音を立てて、テンドウの体が床に叩きつけられた！「アバッ……！」遂にテンドウが血を吐いた。関羽は再び腕を振り上げ、テンドウを叩きつけようとする。だが、その手が縄に引かれたように止まった。「なんと！？」29

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テンドウは関羽の長い髭を掴んでいた。床に叩きつけようにも髭がロープ代わりになり、振り回せない。テンドウは更に髭を手繰り寄せ、関羽の顔を引き寄せる！「無駄に長い髭が……」テンドウは髭を掴んだまま、拳を振りかぶった。「命取りじゃあ！」そして、関羽の頬を殴り飛ばす！30

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「ぐうっ！」流石の関羽もこれには怯み、テンドウの足を放した。着地したテンドウは、未だ左肩に刺さっていたあきつ丸の刀を引き抜いた。血が吹き出すのも構わず、関羽の腹にそれを突き立てる！「ぐお……ッ！」退魔の刃は、呼びだされた悪魔である関羽にも絶大な威力があった。31

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流石の関羽も、腹を刃で貫かれては膝をつくしかなかった。一方、テンドウも無事ではなく、体のあちこちから血を流している。「ぐうっ……血が足りんか……！」フラフラと、大広間の祭壇に向かって歩く。「血を……子分どもに集めさせた血をためた黄金像を……」32

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テンドウが足を止めた。前に誰かが立ち塞がったわけではない。彼を振り向かせたのは、思わず足を止めてしまう威圧感。そこにはアキラが立っていた。「おい。どこ行く気だよ」テンドウ以上に満身創痍、しかしその目に宿った闘志は、尽きるどころがますます激しく燃え上がっている。33

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「クソガキが……」テンドウは右手を握りしめた。アキラも応えるように拳を握る。そして、２人は同時に前に向かって踏み出した。「「オラアアアッ！」」何の小細工もない渾身のパンチ。互いの頬に食い込み、後ろによろける。だが、２人とも足を踏ん張り、もう一度相手に殴りかかる！34

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「「オラアアアッ！」」再びクロスカウンター。相手の攻撃も避けられない瀕死の状態。それでも２人のヤクザヴァンパイアは、意地だけを燃料に体を動かす！「「オオ……ラァッ！」」既に顔は鼻血とも涎ともつかない、粘ついた液体まみれになっている。しかし、その中に涙はない！35

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「なんと……」「これは……」稚拙な、しかし壮絶な殴り合いに、あきつ丸も関羽も声が出なかった。「「ウオゥルァッ！」」吹き出した汗が、２人の背中の刺青を輝かせていた。そこには、彼らの生き様が刻まれている。「「……ッ、エアァッ！」」ヤクザ者は、背負ったモノに嘘をついてはいけない。36

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「オラアアアッ！」アキラが一際高い雄叫びを上げて殴りかかった。テンドウの拳は、指一本分届かなかった。「アガッ……！」テンドウはのけぞるが、まだ倒れようとしない。「ドラアッ！」更にアキラは拳を放つ。テンドウが足を引いた。一度深く深く息を吸ってから、アキラは連打を放つ！37

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「オラァッ！」仇討ちの覚悟があった。「ゼアッ！」仲間たちへの追悼があった。「んだらぁっ！」理不尽への怒りがあった。「アアアアッ！」強敵への反抗心があった。「……ッ、エアァ！」ヤクザヴァンパイアの意地があった。「ガッ、ガキィ……」テンドウは、既にそれら全てを裏切っていた。38

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「……ウリャアアアアッ！」最後の一撃が、テンドウの顔面を真正面から砕いた。殴り飛ばされたテンドウが踏む地面はもう無かった。「なっ……」関羽の一撃で開いた壁の穴。そこに、テンドウは身を投げ出していた。「うおおおおっ！？」叫び声が、はるか地面へと落ちていく。39

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アキラは床に仰向けに倒れた。立ち上がることはおろか、指一本動かすこともできなかった。「勝った……」勝利を噛みしめるのが精一杯だった。「おい、お前たち！ゆっくりしている場合じゃないぞ！」しかし、それを遮る声。お目付け役の黒猫、ゴウトだ。「異界が崩れ始めた！」40

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空間の主であるテンドウが倒されたことによって、天堂天山邸の空間の歪みは正されつつあった。このままここにいれば、屋敷ごと魔界に飛ばされてしまうだろう。あきつ丸もアキラも起き上がろうとするが、激戦のダメージが二人を地面に縛り付けている。41

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「クソが……！」ここまでか、とアキラが諦めかけた時、その体が軽々と持ち上がった。「おうっ？」誰かがアキラの体を担いでいる。鉄板のような胸板の、縮れ髭の男が、いつの間にか彼の側にいた。「……誰だお前」「周倉です」「誰だお前！？」聞いたことのない名前だった。42

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「私の部下だ」関羽がいった。いつの間にか、彼は赤毛の馬に乗っていた。「平、主殿は任せるぞ」「かしこまりました、父上！」あきつ丸を抱えた、馬に乗った中華風の若武者が返事をする。「ちょ、俺だけ馬じゃねえのかよ！？」「安心しろ、俺は馬並みに早く走れるからな！」43

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「先の戦での不覚、ここで取り替えさせてもらおう。ゆくぞ、赤兎よ！」呼び声に応え、虚空から赤毛の馬が躍り出た。関羽はその馬の背に跨ると、階下に向かって走りだした。その後をあきつ丸を抱えた関平の馬が、そしてアキラを抱えた周倉が追いかけていった。44

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【デビルサマナー　葛葉あきつ丸vs吸血極道】＃５おわり＃６へ続く