デビルサマナー 葛葉あきつ丸vs吸血極道 #6(完結)

事実上のシド・デイビス 5:https://togetter.com/li/996720
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2016-07-08 21:01:20
劉度 @arther456

【デビルサマナー 葛葉あきつ丸vs吸血極道】#6

2016-07-08 21:02:19
劉度 @arther456

「すんません、ロクな見送りができなくて」「ええよええよ。元々、ウチらが頼んだ案内やし」天堂邸の玄関で、浦風とサブは別れの挨拶を交わしていた。提督は返して貰ったリボルバー拳銃を点検している。「親分には俺から言っときますんで。今度来る時は、ちゃんとおもてなししますよ」1

2016-07-08 21:03:04
劉度 @arther456

「ほな、元気でなー!」「お世話になりました」一礼して二人は屋敷を出た。「次来た時は、もっといい手土産を持ってくるか」「大丈夫じゃて。今日はタイミングが悪いだけだったんや。テンドウも次は話を聞いてくれるけん」そんな話をしながら、2人は駅へ向かって歩き始める。2

2016-07-08 21:06:12
劉度 @arther456

その後ろ、屋敷の塀の影から、血塗れの人影が姿を見せた。「ぐぅぅ……」アキラたちによって最上階から突き落とされたテンドウだった。悪魔といえども転落死は免れない高さだったが、彼の生への執念はまだ体を休ませない。「血を……生き血を……!」そして執念は生け贄を求めていた。3

2016-07-08 21:09:05
劉度 @arther456

彼が狙いを定めているのは、前方を歩く浦風の首筋だ。浦風が昔、テンドウが広島にいた頃に可愛がっていた同僚の娘であることなど、今の彼には思い出せない。ただその若い血を奪い取る為だけに、テンドウは踏み出した。「そこまでだ」背後からの声に、テンドウは素早く振り向いた。4

2016-07-08 21:12:04
劉度 @arther456

日を遮る塀の影の中に、女の形をしたものがいた。黒い外套を羽織り、赤い帯の巻かれた制帽を被ったその姿は、先程までテンドウが戦っていた葛葉あきつ丸と同じものだ。だが、違う。その身から湧き出る気配が違う。人間の、いや、この世のものではない瘴気が、彼女の体から湧いている。5

2016-07-08 21:15:07
劉度 @arther456

テンドウは、その女の名前を知っていた。彼女が彼をヤクザヴァンパイアにしたからだ。「加藤……おどれ、何しに来よった」無意識のうちに、テンドウは拳を構えていた。加藤に協力し、その見返りにヤクザヴァンパイアになった。しかし彼は彼女を信用していない。6

2016-07-08 21:18:02
劉度 @arther456

「テンドウ。貴様の仕事はもう終わりだ」案の定、彼女の口から吐き出されたのは、手切れの言葉だった。「ほざけ……ワシゃあまだまだ戦えるぞ」「子分を使って地上げをし、建設会社に東京の地脈を守る祠や神社を壊したのはいい。だが、この横須賀で騒ぎを起こすことまでは求めていない」7

2016-07-08 21:21:01
劉度 @arther456

「バカかテメェはっ!ワシは貴様のために組を動かしたんじゃあない!ワシの為じゃ!異界と通じて、悪魔の子分を増やし、関東にワシの王国を作り上げる!その為に、ワシはヤクザヴァンパイアになったんじゃ!」「野心は買っていたが、ここまでの愚か者だったとはな」加藤は舌打ちした。8

2016-07-08 21:24:05
劉度 @arther456

「血だ、戦うのに血が足りねえ……血を、ヨコセェェェッ!」テンドウが加藤に跳びかかった!加藤は素早く印を切り、呪文を唱える!「シンドゥーラ!」加藤が召喚したのは、鳥の頭と人の体を持ち、鎧を身に纏った悪魔、十二神将の内の1体であった。シンドゥーラは、テンドウに向け武器を構える。9

2016-07-08 21:27:01
劉度 @arther456

「シャアッ!」テンドウが繰り出した拳は、シンドゥーラが手に持った独鈷杵で受け止めた。だが、テンドウは間髪入れずにシンドゥーラの腹に膝蹴りを入れる!「ゲェッ!?」鎧が凹むほどの一撃に、式神は呻き声を上げる。その頬骨を、追撃の右フックが砕く。シンドゥーラが崩れ落ちた。10

2016-07-08 21:30:10
劉度 @arther456

白刃が煌めいた。「なっ……!?」テンドウの右拳が宙を舞う。シンドゥーラに気を取られた一瞬、加藤が踏み込み、マントの下に隠れていた刀で居合を放ったのだ。葛葉の退魔の刃すら弾き返したテンドウの体だったが、血の欠乏で弱り切っては、加藤の腕前を止めることはできなかった。11

2016-07-08 21:33:07
劉度 @arther456

「おどれぁっ!」テンドウに残ったのは執念のみ。加藤の顎を砕かんと、蹴りを放つ。だが、葛葉あきつ丸たちとの激闘のダメージが、彼の動きを鈍らせていた。加藤は蹴りを躱し、刀を上段に構え、テンドウに向け踏み込む!「てえええいっ!」破邪の刃が、テンドウの体を袈裟懸けに分断した。12

2016-07-08 21:36:04
劉度 @arther456

加藤は後ろを向き、テンドウが切り伏せられているのを確かめた。それから血を浴びた刀身を黒いマントの裾で拭い、鞘に収め、その場を後にした。「ア……アガッ……」テンドウにトドメを刺す必要はない。彼の霊力が急速に失われていくのを、加藤は肌で感じていたからだ。13

2016-07-08 21:39:02
劉度 @arther456

「これで、死ぬんか……」冷たくなっていく自分の体を知覚しながら、テンドウは呟いた。ヤクザヴァンパイアとなった彼の体は、土に還ることなく、ただ灰となって風に流されていく。後には何も遺らない。彼が築き上げ、誰にも渡せなかったスカイシュライン・ヤクザクランのように。14

2016-07-08 21:42:04
劉度 @arther456

組は彼の人生だった。若い頃から続けてきた極道、その証明をこの世に残すため、悪魔に魂を売ってでも組の地盤を確固たるものにしたかったというのに。「くそっ、ワシは奴らに踊らされた挙句、死ぬんか……」その呟きを最後に、天堂天山の痕跡は、この世から消え去った。15

2016-07-08 21:45:03
劉度 @arther456

あきつ丸たちが見ている前で、天堂天山邸を覆っていた異界が薄まり、そして消えた。「ギリギリだったな……」呟くゴウトの声色には、珍しく安堵の色が混じっていた。「うむ。この地を覆っていた、悪しき気も消えた」関羽が赤兎馬の上で、髭を撫でながら言った。17

2016-07-08 21:48:05
劉度 @arther456

「あの、そろそろ降ろして欲しいのであります」「俺もだ」その横では、あきつ丸とアキラが、未だ関平と周倉に抱えられていた。「おお、すまぬ、関平、周倉、もういいぞ」解放された二人は、地面に足をつけ、改めて天堂邸を見やる。「これで終わりか」「ええ、もう異界が現れることはないでしょう」18

2016-07-08 21:51:04
劉度 @arther456

「ふむ。ならば某が、この世に留まる必要はあるまい」関羽がそう呟くと、彼の体が淡い光に包まれた。隣に控える関平や周倉、赤兎馬も同じだ。「良き戦でござった、アキラ殿。某の弟を思い出した」「お、おう?褒められてんのか?」「うむ。お主も万夫不当の強者よ」19

2016-07-08 21:51:04
劉度 @arther456

それから関羽はあきつ丸に向き直った。「主殿。某を呼び出してくれて感謝する。こうしてまた、義を示す戦に赴くことが出来た」「いえ。こちらこそ、召喚に応じていただき、感謝であります」「某の力が必要な時が来たら、しかるべき手段で呼び出してくだされ」20

2016-07-08 21:54:06
劉度 @arther456

関羽の体が、光の粒子となって消えていく。周りの従者たちは既に天へ昇っていた。「では、さらばだ、戦友よ」そして関羽も光となり、消えた。彼が昇っていった青空を、あきつ丸とアキラは自然と見上げていた。21

2016-07-08 21:57:01
劉度 @arther456

「バタバタした仇討ちだったなあ、全く……ま、テンドウの奴は倒せたから、いいけどよ」アキラは感慨深げに呟く。「これからどうするのでありますか?」「ん?そうだな、オヤジの墓参りに行って、仇は討ったって伝えて……それから、組の立て直しだな」22

2016-07-08 22:00:17