アームヘッド五章その３「ヤング幼女先輩」

マキータ @makitateriz

アームヘッド最終反乱のあと台頭した三つの組織、レインディアーズ、ヒリングデーモン、グランジは2035年第二の最終反乱と呼ばれるファイティングポーズによる第二から第七移民船団襲撃事件の後壊滅した。それによってヘブンは秩序なき世界へとまた近づいていった。

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その首謀者たるシェイプシフターは連邦政府を影から操り世界を支配することを目論んだが首魁アンラッキーがファイティングポーズの暴走により死亡、瓦解した。ヘブンからは善も悪も喪われ混沌の時代への回帰を起こしていた。それでもなお文明が飛びだったその地に残るものたちがいた。

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「ヤング幼女先輩」

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リズ大陸南部、アイサ大陸と五大湖を挟んで接続される地方。かつては二大国の戦闘が激しく続いた場所だがもはや、それは遠い記憶でそれらが滅び去ってから四半世紀以上過ぎた。多くのリズ市民やプラント臣民は宇宙にある母星への旅に出てもはや戻るまい。そんな寂れた場所に姫岸はいた。

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この地に、レインディアーズの吸血鬼がいる。彼女はそれを追っている。レインディアーズの吸血鬼は血塗れの殺人狂であり、アームヘッドでの戦闘で必要以上の血(アームヘッド疑似体液のことだ)を流す戦闘を好む。彼は徒に野良ファントムを刺激しファントムと人類の友好にヒビを入れている。

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「許せないわね」姫岸は呟いた。「そうですね」彼は長内、白い髪を長く伸ばした中性的な男だ。レインディアーズの残党で今は傭兵をやっている。彼にしてみればレインディアーズの吸血鬼は裏切り者だ。ファントム(知性ある無人アームヘッド)と人類の友好を謳うレインディアーズとして許されない。

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長内は謎の多い男だ。レインディアーズの吸血鬼を追うなかで彼と出会い、護衛として雇った。彼は時折私を見るのだがどうも首筋ばかりを見ているような気がする。そういう趣味なのだろうか。「君はどこまで知っていますか？」唐突に長内が言った。「吸血鬼がパイロットということくらいかしら」

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「そうか、ならそれ以上は知らない方がいいよ。これ以上は底無し沼だからね」彼は私の目を見るのをやめ、首筋に目を移した。「・・・レインディアーズは滅びたの？」「違うよ。司令もかなたさんもまだやる気さ。ヒリングデーモンもグランジもお兄ちゃんたちが頑張っている」「シェイプシフターは？」

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「・・・ティガーお兄ちゃん」「？」「シェイプシフターには触れない方がいいよ」長内が忠告する。危険・・・。すなわちカネになるのでは？「でもシェイプシフターは滅んだんじゃないの？」「シェイプシフターにとって滅びもまた形態の一部に過ぎない」・・・？「喋りすぎたね、来たみたいだよ」

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ここはファントムの居住地帯に近い、そこで何度かレインディアーズの吸血鬼の目撃情報がある。「くっ来たわね、約束通り乗せてよね」ここの情報を手にいれたのは私だ。長内はそれを入手するため、私に接触してきたようだ。「・・・仕方ないなあ・・・。もう」「邪魔はしないからね！」

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長内のシュヴァリエが湖の岸辺を走る。ファントムの居住地帯が見えてくる。彼らは既に文明に近しいものをもちリズ原生林の大樹を用いて雨避けを作っている。それが燃えている。グリントランサーだ。レインディアーズの代名詞と呼べるそのアームヘッドはファントムの血で染まっている。

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レインディアーズの吸血鬼だ。「・・・なんてもったいない」「うん？今なにか言った？」「・・・なんでもないよ」私の背にいる長内はそれ以上は言わなかった。「なんてひどい」グリントランサーがファントムの死体(といっていいかはわからないが)を槍でつつき血を抜いている。死体は８機近くだ。

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吸血鬼がこちらに気づいた。「ほほう、これはレインディアーズの吸血鬼殿ではございませんか」えっ？お前がレインディアーズの吸血鬼じゃないの？「ショクシュマン、君は優秀なパイロットだった。なぜこんなことを・・・」「楽しいからさあ！アームヘッドを殺すのもお前の名を落とすのも！」

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「どっどういうこと？」「私が・・・いや僕、長内幽輝がほんとうのレインディアーズの吸血鬼さ。彼ショクシュマンは優秀なパイロットだったが嫉妬で狂ってしまった」「その通り！お前の美貌が俺を狂わせた！お前を欲しさ故にタイムスリップ様に忠誠！俺がこの時代を支配するぞ！」もはや発狂している！

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「ブラックデザイア！」ショクシュマンのグリントランサーから大量の触手が出現！一機のグリントランサーで多数のファントムを相手に出来た秘密はこれか！「女連れとは余裕だな！」触手が迫る！「気をつけて！」シュヴァリエが大きく揺れる！背中のソードで原生林を切断！触手がそれを飲み込む！

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原生林が溶ける！腐食性の触手！「ふふふ、縛りプレイといこうか？」原生林を踏み越え迫る触手の群れ！「・・・レインディアーズ時代よりも強力になっている！」シュヴァリエは触手を捌きながら後退する。「麺神の加護なり！逃げていては勝てぬぞ！それともドーナツジャンキーに助けを乞うかい？」

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「司令をも侮辱するか！」シュヴァリエが転進！触手の海へ進む！だがっ！「バカめ！」腐食性の触手なのだ！先程まで触手を捌いていた銃剣は腐食に耐えきれず折れる！触手の怒涛！「・・・ごめんね」長内はそう言うと私の首筋に噛みついた。「え？」血を吸われている。長内の姿が変化する！幼い娘だ！

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「アイアンワークス！」シュヴァリエの両手に赤い刃！「せめて公正の刃に裁かれるが良い」触手が切断！「な！調和だと！」「僕が手の内を全部君に見せていたと思っていたのかい」触手を切断されたショクシュマンのグリントランサーにシュヴァリエは左手の武器を向けた。「それは噛ませケルベロスの！」

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「メガバイターだよ。おじちゃんの似たのをアイリーンお姉ちゃんが作ってくれた」メガバイターがグリントランサーを噛む！「君が無駄にした血を友好活用させてもらうよ」メガバイターに血を吸われ、生気を喪うグリントランサー。「わ、私は血を吸うために？」「ごめんね、こいつがそこまでやるとは」

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「・・・良いわ」私をコクピットに乗せたのは保険だったというわけだ。「代わりと言ってはなんだけどね、こいつは多分知っているよ」長内は私に写真を見せた。写真には背中に龍の刺青をした女の人が写っていた。「お前はシェイプシフターと内通していたな？」「・・・そうタイムスリップ様の・・・」

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「それはいいよ、その人に紹介してもらったんでしょ？ミザリーを」「・・・その通り。奴を利用し俺がタイムスリップ様の・・・」「新全領域支配皇についてどこまで知っているの？」「・・・ミザリーは眠れる龍だ。奴こそがシェイプシフターの真の首領」「・・・やはり、じゃあ林檎については？」

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「シェイプシフターはユニヴァース、アビススカージ、ファイティングポーズの三つの切り札を喪った際の最終戦力を求めていた。それが旧リズ連邦が開発したアームコア精製工場惑星型アームヘッド、パープルアップル。それを制御するため古代のセブンシスターズ級アームコアから産まれたのが奴！」

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「アンラッキーの後継者というわけだね」「然り、そしてミザリーこそが・・・」「眠れる龍ミゼリックスの化身という訳ですわよ」突如しわしわのグリントランサーを一本の槍が貫いた！「わたくしがミザリーですわ」槍が変形する。「調和能力キメラ、シェイプシフターとはわたくしのことですわ」

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「変身能力・・・」変身出来る故に身を隠し続けてきたというわけか。「その通りですわ。わたくしはもう少し身を潜めます。時期が来たならばわたくしの使命を果たしますわ」「使命とは？」「アンラッキーの世界への復讐、すなわち終世という救世ですわ、楽しみにしてくださって結構ですよ」

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「このまま見逃すとも？」メガバイターがミザリーを包む！「見逃す？おかしなことを言いますわね。わたくしに自力で逃げる余地が無いとでも？」ミザリーはキメラで液状に変化！メガバイターの歯の間からこぼれ落ちる！「わたくしがわざわざ出てきたのは予告ですわ。あなたからお父様に報告して」