【エイクス・アゴニィ・アンド・エクスタシー】

ニンジャスレイヤー二次創作テキスト短編です。
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SUMIYU @SUMIYU1987

ブブーン…ブブーン…ブブーン…ブーン… ブブーン…ブブーン…ブブーン…ブーン… フロアから響くくぐもった重低音が部屋の壁を揺らす。「ン…ンアア!ア…」薄暗い間接照明の中で、全身から大粒の汗を流し横たわるオイランが、狂ったように目を見開き、うめく。 23 #smytxt

2016-07-08 22:03:46
SUMIYU @SUMIYU1987

オイランは酸素を求めるバイオキンギョめいて口を開け、数度嗚咽を漏らすと、嘔吐した。彼女の額にべっとりと貼り付いた黒髪をモノヤマの細い指がかき上げる。彼も目の焦点が合っていない。よだれを垂らし、汗を流し、手負いの獣のように吼える。過剰な薬物摂取の影響だ。 24 #smytxt

2016-07-08 22:06:10
SUMIYU @SUMIYU1987

オイランに覆いかぶさる彼の裸体には隙間なくイレズミが彫られている。そして、そのイレズミのマッポー絵図をズタズタに切り裂くかのように身体のあちこちに真新しい傷が口を開け、どす黒い血を垂れ流していた。「オオオ!」モノヤマは大きく唸り女の首に注射器を刺した。 25 #smytxt

2016-07-08 22:08:33
SUMIYU @SUMIYU1987

ブブーン…ブブーン…ブブーン…ブブーン… モノヤマはベッドの端に腰かけ、魂の抜けたようなうつろな顔でZBR煙草をくゆらせる。オイランは血と汗と吐瀉物の中でこと切れていた。彼はもう女を見ることもしない。ふたたび虚無と倦怠感が彼を支配する。 26 #smytxt

2016-07-08 22:12:45
SUMIYU @SUMIYU1987

すべてはこの粗悪な薬物のようだ。何を見ても何を吸っても、誰を抱いても誰を殺しても、すべては一瞬で、虚しい。彼は死を願った。壮絶な痛みと死によって生きたかった。モノヤマは室内のコケシ時計を一瞥すると、ボストンバッグを無造作に掴み取り、中身をあらためた。 27 #smytxt

2016-07-08 22:15:33
SUMIYU @SUMIYU1987

細長い指で黒いラバーの感触を確かめる。彼は装束を取り出し、まだ血の滲むイレズミ裸体をラバーで包んだ。そしてタタミ針を装束の上から一本一本、丁寧に、全身に刺してゆく。針が皮膚を破るたび、電流のような刺激が走る。かすかな快感に打ち震える身体をラバーが締め付ける。 28 #smytxt

2016-07-08 22:20:11
SUMIYU @SUMIYU1987

「アー…イイ…」彼は喉を震わせながら吐息を漏らす。痛み。だが、まだまだだ。今夜も殺す。なぶり、殺し、死のオブジェを作る。傷つき、傷つける。だが、すべては一瞬で、虚しい。「ア…」針を刺す手を止め、IRC端末を覗き込む。着信だ。依頼人のタメジマとかいう男。 29 #smytxt

2016-07-08 22:27:10
SUMIYU @SUMIYU1987

モノヤマは小刻みに震える手で端末を取った。 「モシモシ。ドーモ、アゴニィです…」 30 #smytxt

2016-07-08 22:29:35
SUMIYU @SUMIYU1987

【エイクス・アゴニィ・アンド・エクスタシー】 終わり #smytxt

2016-07-08 22:30:24
SUMIYU @SUMIYU1987

ありがとうございました

2016-07-08 22:40:00