【エイクス・アゴニィ・アンド・エクスタシー】

SUMIYU @SUMIYU1987

--- SUMIYU WORKS --- #smytxt

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（当テキストプログラムはニンジャスレイヤー二次創作作品です。本編との関連はなく、オリジナル設定・改変等ありますのでおうちのかたがきをつけてね） #smytxt

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【エイクス・アゴニィ・アンド・エクスタシー】 #smytxt

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ブーンッ！ビンビ！ブーンッ！ビンビ！ブーンッ！ビンビ！ブンビンビヨビヨ！。 ブーンッ！ビンビ！ブーンッ！ビンビ！ブーンッ！ビンビ！ブンビンビヨビヨ！ 「イヨォーッ！イヨォーーョョョョョ……」 フロアを圧する壁めいた重低音と狂言ラップ。レーザービーム。 1 #smytxt

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非合法地下退廃クラブ「オタワムレ」は今夜もよどんだ熱狂に包まれていた。麻薬中毒者、ヨタモノ、サイバーゴス、特殊嗜好者たち。社会のレールを外れた者たちの溜まり場であり、フックアップ目当ての色情狂や興味本位の無防備な学生などもまじる。 2 #smytxt

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どす黒く色あせたネオサイタマの闇。その闇の最深部でどぎつく輝く、ここは快楽のネハンだ。だれもが日常と我を忘れ、奔放で無軌道な衝動に身を任せる。狂言ラッパーがマシンガンめいて過激なリリックを紡ぎ出す。ストーリー・オブ・ゲンジに着想を得た退廃セックスと暴力。 3 #smytxt

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煩悩ブッダデーモンの降臨を思わせるレーザービーム照明がフロアの四方を射る。沈殿したインセンス空気の中をゆっくりと這う紫煙。ZBR煙草の煙が配管むき出しの天井へと細くたなびく。フロアの片隅、照明も届かぬ薄汚れた壁際で、男たちは汚いソファにゆったりと腰かけていた。 4 #smytxt

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「実際どうですか」「上々。じきに反対派もほとんど握りつぶせる」純白ヤクザスーツに身を包んだ屈強な男が不敵な笑みを作って見せる。「モノヤマ＝サンのおかげだ。スゴク助かる。あと２人ほど処理すればだいたい片付きます」ごつい金の指輪をはめた手がグラスを寄せる。 5 #smytxt

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「それはよかった。兵隊いりますか」対する背の高い、異様に痩せた男が長い指を組み、舌なめずりしながら尋ねた。モノヤマと呼ばれたその男もストライプのヤクザスーツをまとい、足元はリザード革のヤクザシューズだ。だが彼の姿を最も印象付けるものはそれではない。 6 #smytxt

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男の顔は（耳、鼻、唇、とにかくあちこち）沢山のピアスで埋まり、頭髪のない頭蓋には攻撃的なイレズミが縦横に走る。一目で裏社会の住人とわかるおそろしい外見である。常人であれば直視することも憚るだろう。このマッポーめいた地下クラブにおいても異彩を放っている。 7 #smytxt

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「兵隊は大丈夫。ただ、正直申し上げて追加の融資が欲しいところ」純白スーツヤクザの鋭い目がモノヤマを射る。「なるほど…対処はオハダ＝サンご自身でする、と。いいでしょう…これくらいで？」モノヤマが指を三本立てると、オハダは深くうなづいた。 8 #smytxt

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「ありがたい」「実際この案件は我々にも大きな利益。ぜひ成功させてほしいです。支援は惜しみませんよ…ただ…」モノヤマは渋面を作る。「金にたかる薄汚いハゲタカ野郎はつきもの？」「そうです…」オハダの答えにモノヤマは邪悪な笑みを作る。ヘビめいて割れた舌先が動いた。 9 #smytxt

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「そろそろかなハゲタカは」ユーレイゴス・ウェイトレスからイワシカクテルのグラスを受け取りながらオハダがつぶやくのとほぼ同時、フロアの群衆をかき分けて艶々したブラックスーツのヤクザが近づいてきた。酷薄そうな顔は自信にあふれ、のしのしと二人に歩み寄る。「ヨー」 10 #smytxt

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「お二人さん、調子はいいかね！」三人目のヤクザは手近の椅子を引き寄せると、すすけたチャブを挟んで二人と向かい合った。「ドーモ、タキ＝サン」「お前さんも調子はどうだ」ソファの二人は、ブラックスーツのタキにアイサツしつつ一瞬視線を合わせる。 11 #smytxt

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「俺の方はもう準備バッチリよ。あとはお二人さんがしっかり…」「タキ＝サン」モノヤマが真顔で手招きする。「ちょうどいい話がね…」タキは促されるままにソファに腰かけモノヤマの真横ににじり寄った。オハダはイワシカクテルを差し出す。タキは感謝の身振り。グラスを掴む。 12 #smytxt

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（実は…）モノヤマが笑顔で囁きかける。タキは耳を寄せる。（死体がもう一つ増えることになったよ…このクズ野郎）モノヤマが囁くのと、タキが顔をこわばらせるのと、オハダがタキの手をナイフでチャブに縫い留めるのと、モノヤマがタキの首を絞めるのとが、ほぼ同時であった。 13 #smytxt

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（ウグッ…！ウッ！グ…！）目を見開いて抵抗するタキ！　彼の身体は体格に恵まれパワーもあったが、モノヤマの細長い腕はマンリキめいて首を掴みビクともしない。　暴れるタキの腹にオハダの痛烈な蹴りが入り、哀れな裏切り者は膝から崩れ落ちた。 14 #smytxt

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（ウグッ…）モノヤマはうつ伏せで顔に脂汗をにじませるタキに素早く覆いかぶさると、首に注射器を刺した。オハダとモノヤマに押さえつけられながら大きく痙攣し、ブラックスーツのヤクザは静かに目を閉じた。１分にも満たぬ間の処刑。執行人たちは辺りを見回す。 15 #smytxt

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周囲の誰も、ヤクザたちの慈悲なき制裁に目を留めはしない。脈絡なき暴力やサツバツはチャメシ・インシデントであり、そもそもこのフロアは幻想だ。快楽によって見る甘美な夢。「卑劣な裏切者はこうなる。ソンケイは大事ですね？」モノヤマが真顔で問うた。 16 #smytxt

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「そうです。ユウジョウ」オハダは背筋に冷たいものを感じながらも不敵な笑みを作って右手を差し出す。彼とてソンケイを失えば…。「ユウジョウ」モノヤマはオハダの手を取り、握った。「よろしくお願いしますよ…」イレズミだらけのスキンヘッドを深々と下げる。 17 #smytxt

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オハダが退出するとモノヤマはソファに深く身を沈め、ZBR煙草をゆっくりとふかしながら目をつぶった。ドンドンドンツク！ドンドンドンツク！　フロアは変わらず群衆を陶酔に呑み込む。ステージではトップレスのサイバーゴスが背中を突き通すフックによって宙を舞っていた。 18 #smytxt

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哀れな裏切り者の亡骸は若い手下たちがしめやかに処理し、今頃は溶かされているだろう。モノヤマはあらゆる非合法ビジネスと暴力に手を染めるグレーターヤクザであり、小規模なヤクザクランを束ねて、ネオサイタマの暗部に根付いた麻薬の流通やセックスビズに関与していた。 19 #smytxt

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ありとあらゆる娯楽、性、暴力を味わった。他人を傷つけ、自分を傷つけた。しかし彼の心を潤し刺激するものはもはやほとんどなかった。快楽と共に感じる吐き気を催すような虚無。モノヤマは死を願った。壮絶な痛みと死を。死によって生きたかった。だが彼を殺す者はいない。 20 #smytxt

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彼はあまりに強力な存在になったのだ。ソウカイ・シンジケートの恐るべき刺客。彼は死を願いつつ殺す。痛みを感じ、痛みを与える。その時だけ、彼はちっぽけな陶酔を得ることができる。虚しい恍惚。このフロアにたむろする逃避者たちと同じだ。彼はこういう場所が好きだった。 21 #smytxt

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モノヤマはソファに身を沈めながら、IRC端末で今夜の任務を再確認した。ジアゲ…ライブハウスを襲撃し脅す…小虫を踏みつぶすかのようなくだらぬ案件。せめてできる限り、ビズを楽しむしかない。決行まで数時間。彼は重い頭を振って立ち上がると、部下にオイランを呼ばせた。 22 #smytxt