【アドベンチャー・オブ・マンゴー・トレーニング】

ゴシップミルが他のすみゆ忍を巻き込んでマンゴー研修に行きます。
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不幸鳥 @hukurou_nayuta

「ンアーッ!!」エーデルヴァイスの悲鳴。二人は即座に反応する。だが、おお、なんということか!バトル・ジョルリはそこにある。が、エーデルヴァイスの姿だけが、ないのだ!「エーデルヴァイス=サン!?」「バカな…彼女だけが消えただと!?」ゴシップミルは名を呼ぶ。返事はない。25

2016-07-04 23:43:07
不幸鳥 @hukurou_nayuta

残された二人は、互いに視線を交わす。「…彼女を助けねえと」「ああ…アタシも何か喚ぶ…」キャヴァリーチャージはバトル・ジョルリをもう一体出した。ゴシップミルは、ろう石で地面に魔方陣を描こうとした。しかし、それをすることはなかった。「グワーッ!?」26

2016-07-04 23:46:40
不幸鳥 @hukurou_nayuta

叫んだのはキャヴァリーチャージだ。その足元が、突如として抜けた。直径130cmほどの、深い深い穴。「キャヴァリーチャージ=サン!」ゴシップミルは吼える。消えたエーデルヴァイス。キャヴァリーチャージの危機。3人は無事に研修を終えられるのだろうか。迷宮は、彼らを生きて返すのか。27

2016-07-04 23:50:11
不幸鳥 @hukurou_nayuta

キャヴァリーチャージは訝しんだ。自分は確かに深い深い穴に落下した。だが、落ちていない。手に伝わるこの熱は何だ。…これは。「何してんだ…ゴシップミル=サン」そうだ。ゴシップミルが、今まさに落ちんとする彼の手を掴んでいる。無茶だ。彼女はニンジャとはいえ、かなり非力な部類だ!1

2016-07-09 20:21:07
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「ぐぎぎぎ…アッ、これダメだ!ダメかもしれない!」ゴシップミルは穴に落ちるギリギリで留まっている。淵を捉えた方の手は震え、今にも…「グワッ…!」外れた。ゴシップミルとキャヴァリーチャージは今度こそ穴に…落ちていない!否、落ちたものの、召喚師は両足を側面に掛け、耐えている。2

2016-07-09 20:25:00
不幸鳥 @hukurou_nayuta

しかし、この状態がそう保つはずがない。「お前バカか!俺はどこを見ればいいんだ!!」「ショートパンツ履いてるから上見てもいいがお前は下見てろ!」キャヴァリーチャージのなんかは守られた。「痛い痛い、股が割ける、足が折れる!」「んな無茶するからだ、非力の癖によ!何故こんな真似を!」3

2016-07-09 20:28:28
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「何故だァ!?お前、手ェ離してもいいのか!」ゴシップミルは二人分の体重を足で支えたまま、彼に向け叫んだ。僅かにずり落ちる。「それ、は」「落ちたいのかって聞いてんだ!」「嫌だ!!落ちたくない!死にたくねェ!」キャヴァリーチャージも叫ぶ。「だろうな!それだけだ、理由なんざ!」4

2016-07-09 20:32:09
不幸鳥 @hukurou_nayuta

彼女は単純だ。複雑な理由はいらない。救えようものなら救ってみたいのだ。自分がこんなざまになろうとも。にしても、ひどいざまである。「かっこつかねェぞ、ゴシップミル=サン」キャヴァリーチャージは呆れた。そうして、下に意識を向ける。「ウワッ!?」彼が小さく悲鳴をあげる。「何だ?」5

2016-07-09 20:35:41
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ゴシップミルは軽く視線を下げ、彼を見た。彼は少し青ざめた様相で告げた。「底。……何かいる」「何て?」そのまま注意深く、更に下方を見る。少し落ちる。そして、彼女は確かに見た。暗闇に光る何かを。不穏な音を。「…でかくねえ?」「ここの主かよ…」二人は震え声だ。落ちるわけにはいかない。6

2016-07-09 20:38:56
不幸鳥 @hukurou_nayuta

聞こえる。嫌な物音が。巨大な、鋏を擦れる音が。聞こえてしまう。なにかを咀嚼する不快な音が。絶望の足音が。「キャヴァリーチャージ=サン…どうにか出来んのか」「あんたこそさっき魔方陣描いてたろ、いけるだろ…」「途中で落ちたじゃんか、ア、ア、落ち…」そろそろゴシップミルの足がマズい。7

2016-07-09 20:41:25
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「アァ!?待て、そんで頑張れ、俺も手伝えばいいのか!?」「アアアヤメロ!力を加えた瞬間落ちるぞ、あと少しだけアタシ頑張るからヤメローッ!」二人は喚く!大のニンジャがかなりみっともない!あのプロフェッショナル傭兵にこれを見せたら何と言うだろうか?あのピンクのニンジャが見たら?8

2016-07-09 20:44:17
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ニンジャ二人はゆっくりとずり落ちていく。必死に抗うが、限界はすぐそこだ。底に近付くにつれ、「それ」が見えてきた。それは…「巨大バイオカニ…!」その呟きに反応し、バイオカニはギョロリとこちらを見た。あと数メートル落ちれば、鋏が届いてしまう。万事休すか…?「「アイエエエ!」」9

2016-07-09 20:48:07
不幸鳥 @hukurou_nayuta

彼らは悲鳴を上げた。その時だった。「イイィィィヤアアーーッ!!」カラテシャウト。銃撃の音。斬撃の音。カニが苦しんでいる!何事か!?よく目を凝らしてほしい!巨大なカニに立ち向かう、可憐にして勇敢なメイドの姿が見えるはずだ。エーデルヴァイス!「お二人ともご無事でしょうか!?」10

2016-07-09 20:51:18
不幸鳥 @hukurou_nayuta

カニが怯み、降り立っても支障のない高度にまでずり落ちることができた。3人合流!「エーデルヴァイス=サン、そちらこそ無事か!」キャヴァリーチャージは素早くバトル・ジョルリを再び出した。それらは一糸乱れぬ統率を為し、カニへ斬り込む!「私もどこかへ落ちて…ですが無事です!」11

2016-07-09 20:54:43
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「イヤーッ!」キャヴァリーチャージはバトル・ジョルリを精密に操作しつつ、クナイ・ダートを投げる。その間も、エーデルヴァイスはハルバードでカニを殴り続けている。強い。コワイ!「喜んでください神父!今日の!晩餐は!とびきり豪華ですよ!イヤーッ!」「そりゃあいい!俺も食っていく!」13

2016-07-09 20:58:39
不幸鳥 @hukurou_nayuta

メイドは細身でありながらもあのような得物を振り回す。振り回す!なんたるパワーか。キャヴァリーチャージはバトル・ジョルリ複数体を一体一体操っている。どのような原理かはわからぬがこれもまたカラテである。「ア、アタシ何か出来ることあるかな」「「ない!何もするな!」」圧倒的足手纏い!13

2016-07-09 21:03:55
不幸鳥 @hukurou_nayuta

キャヴァリーチャージとエーデルヴァイスは強かった。巨大カニは二人の手により解体された。ゴシップミルは震え上がりながら、正座でそれを見ていたという。そののち、彼らは迷宮の最奥部にて伝説のマンゴーをちゃっかり手にして帰った。研修は、終わった。ゴシップミルは何もしてなかったが…14

2016-07-09 21:07:33
不幸鳥 @hukurou_nayuta

夜。命名教会にて。良いカニが手に入ったと聞き付けたニンジャたちで賑わっていた。夕飯時である。研修帰りで疲れているはずのエーデルヴァイスは、笑顔のまま料理を作り、運ぶ。たまたま来ていたショートセンテンスと、庭師エボニーアワビがそれを手伝っていた。ゴッドファーザーはご満悦。15

2016-07-09 21:10:17
不幸鳥 @hukurou_nayuta

キャヴァリーチャージは、ハスカールとカニを奪い合っていた。若いって、いいね。片方はもう若くはないが。アマエビを頭に乗せたラッコも、ゾンビー少女と仲良くカニを食べる。メタラー4人も、カニの前では静かであった。ふと、ゴッドファーザーは、ある者の姿がないことに気が付いた。16

2016-07-09 21:14:35
不幸鳥 @hukurou_nayuta

夜風が吹いている。排ガスを含んだ風が静かに、穏やかに吹いている。召喚士は一人、教会の外壁にもたれながらカニをくわえていた。「研修、オツカレサマデス」低い、けれど通る声が彼女の耳に届いた。そちらを見ずに、ゴシップミルは言う。「満足そうで何よりだぜ」「おや、貴方はそうでもないと」17

2016-07-09 21:20:04
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ここで、ようやくゴシップミルはゴッドファーザーを見た。右手にカニ足数本、左手にカニの乗った皿、頭にマンゴーを使った料理を乗せた皿。妙な出で立ちだ。「ヨクバリだな…」「エエ。まだ足りないほどです」ファーザーはカニにかぶり付く。「こりゃ私のお仕置き研修だろ。アタシ何も出来てない」18

2016-07-09 21:23:21
不幸鳥 @hukurou_nayuta

「アタシ足引っ張っただけだぞ。カニ倒したのはあの二人だ。ルマンド美味しかったです、アリガトゴザイマシタ」彼女は帽子を目深に下げる。ゴッドファーザーは不思議そうに片眉を上げる。「いやあ、ですが私もはじめから貴方が何か大層な真似を出来るとは思っていませんでしたし。本当に」無慈悲!19

2016-07-09 21:26:47
不幸鳥 @hukurou_nayuta

ゴシップミルは思わず笑い出す。「容赦ねえ!」ゴッドファーザーも笑う。「はい。少々痛い目に遭って反省して、そうやってまた笑っていなさい。無責任に」二人の召喚士の笑い声が夜に響いた。「カニ食べましょう、カニ。もうそろそろマンゴーの方も出揃ってきている頃合いです」「だな、行こうぜ」20

2016-07-09 21:30:03