著作隣接権について 昔の現場を思い出しながら
たくさん売れれば良いけど、ebookJAPANでも5桁動く本は稀。ほとんどは3桁の売り上げなんで、ロイヤリティ収入で数万円くらいかな。でもデータを作る一冊当たりの人件費は同じ。
2012-03-17 14:56:15強い作品を盾にして、値上げ交渉もしてるけど、結局配信が赤字スレスレなんで、ロイヤリティも上がりにくい。なので出版社がダイレクトに出せるようにしたいと思ってる。それがここんとこ数年の流れ。
2012-03-17 14:58:43出版社の手詰まり感は否めないし、データ管理をおろそかにしたために守れるものがないという現状はお寒いけど、日本の電子書籍事情は配信する会社やデータの作り手など、裏方さんは全く儲かってないし、評価されてないのが実情。
2012-03-17 15:01:48まぁ、これじゃぁタダの愚痴だな(笑) 出版社の何もせずにぼろ儲けは許したくないけど、電子書籍はやる気のある裏方さんは、死にそうになってると思います。ホントに。
2012-03-17 15:04:07よく「電子出版なんてデータを右から左に移動するだけでしょ?」と言われるけど、全く違っていて、基本DTPになってからも出版社に制作データが残っていないことがほとんど。
このあたりは出版社が中身の制作を下請けや印刷所に依存しきっていて、現在の制作~印刷システムを良く理解しないままに来ている点にも悪い部分はあると思っている。
電子コミックの製作過程としては
1)印刷所や下請けより当該冊子のデジタルデータを請求する。
この段階で印刷所や下請けにデータが残っていないこともある。また、中間生成物の権利はどこにあるか未だにトラブルに成ることが多く、印刷所が権利を主張して出版社が手に入れられないことも多い。もともと「版面権」というのはフィルム製版時代に刷版前の下版フィルムは印刷所のものか出版社のものかで揉めた際に出来たもので、著者と出版社の話じゃなかったりする。
2)データを確認して不足分のデータを修正したり、加工したりする。
白抜き加工やタイトルロゴなど、原画データをそのまま加工して1枚絵にしてしまっている場合も多い。当然誤植も残っている。コミックス化で原画修正があったりすると、そのデータがDTPデータでなく版のデータに直接反映され、DTPデータになってないこともある。このあたりをすべてチェックして、過不足無く揃える。
3)フライトチェック、文字フォントのチェック、其の後にPDF加工する
4)PDF加工したものを1枚絵に吐き出す
5)配信用のサイズにリサイズする
配信する端末に応じて最適な大きさにリサイズする。単純なリサイズでなく、段階を追って縮小することでモワレを軽減させたり、トーン部分だけブラーをかけてノイズを無くしたりする。
6)表紙ページなどの作成
カバー画像をトリミングして表紙画像を作成したり、奥付を再作成。特に奥付は、各配信元ごとのフォーマットがあったり、著作者の権利が変わっていたり(原作の方など著作権が移動したり、表記が変わったりすることがある)があるのでその数分作ることも。JASRACなど別の権利関係者がいる場合はそちらの処理も必要。
7)書誌情報の作成
電子書籍にはJANコードのような統一コードが無いので(現在は統一できるよう団体ができている)、各配信元用に紹介文ほか、WEB用のデータ、帳票用の販売データなどを書類にまとめて処理する。
ここまでやってようやくデータ完成、納品できます。
個々の作家さんが配信する場合は、こんなことは求められないと思うけれど、出版社はこれを全部やっても掛け率は別に高くはなりません。そのぶん多くのタイトルをお願いして、売り場を確保する感じなのかな。
himagine_no9 さんとのやりとり
.@sarnin 端的に、「著作隣接権」という言葉をつかうべきではなかった、というのに尽きます。前にsarninとやりとりした内容なら「版面に対する報酬請求権」がそのものズバリの内容になりますし、許諾権だとしても話の焦点は「なぜ出版権の定義変更ではなく報酬請求権なのか」ですから。
2012-03-17 15:14:55.@himagine_no9 契約の簡素化の上で隣接権を持ち出す流れは、さっき反芻して納得しました?ただまぁ、どうやっても著作物にちょっかいは出せないので、誤認識がヒステリックな部分に結びつかないといいなぁ…と思っております。
2012-03-17 15:24:24@sarnin あ、すみません。文中で「さん」付けを忘れてました。 m(_ _)m
2012-03-17 15:26:48@himagine_no9 (笑) 隣接権が認められると、出版という言葉のなかにネット配信が含まれる…というだけの事だと思いますね。契約書が一通で済む。
2012-03-17 15:31:08@sarnin そこが分からないんですよね。既存の出版契約について、自動公衆送信の許諾も得ていたことにしろという話なんでしょうか?
2012-03-17 15:56:39@himagine_no9 契約は遡れないんじゃないですかね。ただ出版と電子書籍の権利を分けたい業者も多いのでそれに対する措置も入っていると思います。今のまだとanazonとの交渉の席にもつけないですしね。
2012-03-17 16:01:03@sarnin 遡れないと私も思います。となると、話はこれからの出版契約の話になるんですが、私個人としては、出版権同様に著作者の自動公衆送信権を一時的に出版社へ移転すれば足りると思ってるんです。それらを一度に契約できるようにすべき、と。(版面の権利の話はひとまず置いておきます)
2012-03-17 16:05:46@himagine_no9 ネット配信の権利はそうですね。もともと複製権はあるので、それで事足ります。というかそれ以上、隣接権自体にも出版に対応するものがないですしね。やはり言葉遊びの感はありますね。
2012-03-17 16:10:39@himagine_no9 版面権は私は単純に紳士協定が崩れ去っているのと、フォントを含む様々な権利のことを無視する人が多過ぎるのを危惧しているだけなので、自分としても別問題と理解しております。
2012-03-17 16:13:02版面権については、出版社の制作対価の問題もあるけれど、さまざまな権利関係が絡んでいるので、それを個々の作家さんがクリアできるのかな…という印象もある。
フォントについてはオフィシャルパッケージを持っていないと再配布できない契約になっているし、上に出てきたけれど題名そのものは問題なくても、ロゴタイプが商標登録されている場合は使用できないだろう。キャラクター自体がアニメ化などで共同のものになってしまっている場合も同様。福本伸行さんの作品で「カイジ」なんかは、アニメとコミックの権利関係が別になっているので、それぞれをまたいだ利用はできない。アニメオリジナルのキャラをコミックに戻した場合や、映画化前提で作品が始まった場合など、作品の(C)に途中から違うタイプのものが追加されることも多々あるし。原作者と作家の方の仲違いによって、電子書籍化が見送られたり、亡くなられたことで著作権者がわからなくなるだけでなく、複数の人が著作権を主張しているなんてこともある。
JASRACについては4年くらい前に電子書籍における使用のガイドラインがようやく決まったところ。PDFの販売はパッケージ販売で、通常の書籍と同じなのだけれど、携帯コミックなどストリーミング配信のものもあったり、クラウドのものもあったりで、全体の%がなかなか決まらなかった。
版面データについては、最近は有償譲渡している場合は多いのではないだろうか。絶版になったものが他社から発売なんてことは多々あるし。自社で出せないものを譲らない…なんて嫌がらせをしている暇と金は、今の出版社には無いと思うし。
版面権については、赤松さんとやりとりをしたことがあるので、そちらもメモしておく。