モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Spring X~

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IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ええそうですわよ、妹さん。  もっとも、大きな会社といえるほどではありませんけれど。二輪のパーツを開発したり、ささやかですけれどレース活動をしたり。よくあるパターンですわね」 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:09:59
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「へぇ……すごいなあ。ねっ、おにいちゃん」 「ああ……そうかもな」 「まあ、近い将来は志智の家になるかもしれませんけれどね」 「好きに言ってろ」  片目をつむって亞璃須は言う。志智は子供が拗ねるように顔をそむける。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:10:14
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あ、あはは……」  ティックは何かを言いかけたように口を開いたが、ただ愛想笑い。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:10:23
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「志智ったら、素直じゃないんですから」 「え、えっと、そのぅ……亞璃須さん、将来のことってまだ決められないと思うんですよ、おにいちゃんも」 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:10:35
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「なるべく早いうちから生涯の伴侶を見定めておくのは、男にとっても女にとっても重要なことですわ」 「そ、それはそうですけどぉ」 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:10:42
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「妹さんにはいませんの、そういう方は?  彼氏とはいえなくても……これから仲良くしていきたい男の子とか。さもなくば、好みのタイプとか」 「えっ」 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:10:57
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 その質問は三鳥栖千歳(みとす ちとせ)にとっては予想外のものだった。  びくん、と大きく体が震え、そして物体の固有振動によって増幅された分だけ二つの空冷シリンダーヘッドも揺れる。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:11:20
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「わわっ」 「おい……」  何かを期待するようなティックの声と、抗議の意志を込めた志智のうめき。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:11:52
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「そ、そんなの……あの、わたしはまだ……」 「ふふふ、かわいらしい嘘をおっしゃいますのね。  別に詮索するつもりはありませんけれど、なにしろあなたは志智の妹さんですし。  好みのタイプがどんな男性かくらい、聞いておきたいですわね」 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:12:54
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「そ、それは……あの……えっと」  困ったように手を振りながら、千歳は助け船を求めるように志智を見た。  兄はそれに応じて、攻撃的な視線を亞璃須にむける。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:13:09
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(ふっ)  しかし、長い金髪からきらめく光が、まるで見えないバリヤーでも張っているかのように、日原院亞璃須(にっぱらいん ありす)は志智の視線を黙殺した。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:14:12
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「………………」  隣には、期待に胸を高鳴らせて、拳を握りしめている彼女の弟。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:14:35
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「まず、身長はどのくらいがいいですか?」 「えっと……その……ひ、ひゃくはちじゅっせんちと少しくらい……がいいです」 「ふむ」 「俺を見てどうする」 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:14:51
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「志智がちょうどそのくらいでしょう」  亞璃須は身長184cmの志智を「なるほど、このくらいか」と納得するように見つめた。 「えっ……」  ティックの顔色には青いものが混じる。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:16:32
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「やっぱり男はそこそこ背丈がほしいですものね。  性格はどんな感じが好みです?」 「んっと、あの……優しい人がいいです。ちょっと危ないこともするけど、とっても優しくて……わたしのこと大切にしてくれて……いつも見守ってくれていて……」 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:16:47
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ふむふむ」 「だから俺を見るな」 「ええっ……」  ティックの頬と背筋と額と脇の下には、焦燥という熱による汗がどっと噴き出る。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:17:53
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「じゃあ最後に、年上がいいですか、年下がいいですか? それとも同年代?」 「と、年上っ。何歳か年上がいいです……うううっ、言っちゃった……秘密にしてたのにぃ……」 「ふむふむふむふむ」 「お前な、俺の顔に何かついているのか?」 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:18:58
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あ……ああ……ああああ……」  そして哀れな少年の瞳からは希望という光が消えていく。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:19:08
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「まあ……一般的な事項ですわね。  ありがとう千歳さん、よーくわかりましたわ。好みの男性と出会えるといいですわね」 「は、はい……」 「ふん」  顔を真っ赤にしてうつむく千歳の隣で、不満げに息をつく志智。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:19:22
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「う……う゛う゛う゛……え゛う゛う゛う゛……」  そして、やれやれと呆れるように肩をすくめる亞璃須の隣では、日原院ティックがさめざめと涙を流していた。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:21:26
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

~~~~~~Motorcycle Diary~~~~~~ #mor_cy_dar

2013-06-17 07:21:32
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 それから十日ほど経った週末のこと。 「やっと晴れたよなあ! いやー、乗れたの一月ぶりだぜ。休日出勤ばっか多くなあ……ヨ」 「おやっさんと走るのも久しぶりだもんなあ。  ZRX、湿気でいろいろ錆び付いてたりするんじゃない?」 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:21:54
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「おいおい、やめてくれよ。カワサキはシャレにならないんだ……ヨ。  錆は鉄をちゃんと使ってる証拠、オイルが漏れるのは入ってる証拠ってな……ヨ」 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:22:13
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 日曜日の大多磨周遊道路。  梅雨の合間に顔を出した太陽を崇拝するかのように、あつまってきた川野駐車場にならぶモーターサイクルの数は、今年一番ではないかと思えるほどである。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:22:43
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(俺自身、なんだか久しぶりだよな……)  先週の土日は雨。そして、昨日も雨とあっては、志智にとってもおよそ半月ぶりになる計算だった。 #mor_cy_dar

2013-06-17 07:22:55