どうして「科学者」を自称する人がこれを読んで「年1mSvの被曝を浴び続けると白血病になるリスクが増大する」とか断言できるのか謎!
通称 ”いだっちゃ”、とか呼ばれる方へのご指摘かな?
本編ここから…
KendallらのLeukemiaに掲載された論文についてなんだけどねえ…http://t.co/TknhLaVIYS どうして「科学者」を自称する人これを読んで「年1mSvの被曝を浴び続けると白血病になるリスクが増大する」とか断言できるのか謎。
2013-09-16 18:56:53これは、先のツイートでも言及したように、被曝線量評価に残る曖昧さでも、サンプルサイズの問題でもない。 https://t.co/W677Rikh7H
2013-09-16 18:57:25まず、この論文の研究デザインが症例対照研究であるということ。これは、平たく言えば「白血病になった子供」と「白血病に罹患していない子供」の被曝線量を比較して、前者の方が高かった、という結果を得たということ。
2013-09-16 18:58:04研究デザインから決まってしまうエビデンスのレベルという意味では、同じ様に綿密に計画されたコホート研究には劣る。こちらは、同じ様に簡単に言えば「被曝量の多い群」と「被曝量の少ない群」で白血病の発生が前者の方が多い、ということを示すタイプ。
2013-09-16 18:58:41ただ、小児白血病の罹患者数がそもそも少ないので、コホート研究ができない、という限界はあるので、別にそこにいちゃもんをつけるつもりはないけれど、研究デザインの面からどうしても「言えること」には限界がある。
2013-09-16 19:00:13コホート研究なら、きちんとした研究デザインがなされていればリスク因子の曝露量の多寡と疾患の発生の間の関係を直接論じることができるけど、症例対照研究は、疾患を発していた群が(結果として)リスク因子の曝露量が高かったという結果から、逆の因果関係を推論するわけ。
2013-09-16 19:00:57つまり、知りたいことは「AならばB」であるとき、コホート研究はそれをダイレクトにAと非Aを比較して、AのときにBであることを示すのに対して、症例対照研究はBと非Bを比較して、BのときはAであることを示す。つまり、得られる結果は「BならばA」ということ。
2013-09-16 19:01:27ただ、常識的に考えて「BならばA」であるということは考えにくく、得られた結果はそうであっても起きていることの実体は「AならばB」であろう、と推測することによって症例対照研究の妥当性は担保されている。
2013-09-16 19:02:29つまり、「白血病になったから被曝量が多くなった」という結論は常識的にありえないから、この結果は「被曝量が多かったから白血病が多く発生した」と考える方が現実的にはより妥当であろう、ということ。形式論理的には無理のある推論過程。
2013-09-16 19:03:04ただ、症例対照研究ではそれで結論をミスリードしてしまうこともしばしばあって、それはいわゆる交絡因子とかバイアスの影響。勿論、この論文ではこれまでに疫学的に知られている交絡因子については調整をして、その影響を除去するように解析はしている。
2013-09-16 19:03:23この論文は、そういった年齢、性別、社会経済的状況といった交絡因子を調整して相対リスクの近似値として条件付ロジスティック解析によってオッズ比を算出している。
2013-09-16 19:03:57ちなみに、相対リスクの近似値としてオッズ比を算出することはSupplementary appendix1に記載されている。http://t.co/PR79UbBwUI
2013-09-16 19:04:23ただ、「今まであることが知られているものについては念入りに排除するようにした」ということであって、交絡やバイアスを完全に除去できているということは必ずしも言えない。被曝とは無関係な隠れた因子の所為でがあるからというつもりは俺はないし、この方法で論文として十分に妥当と思う。
2013-09-16 19:05:37でも、この論文の本質的な限界は、研究デザインではなく同じバックグラウンドで比較したとき、つまり「同じ年齢、性別、社会経済的状況であれば」その時点での被曝量が高いほうがリスクが高いという結果そのものにある。
2013-09-16 19:05:58これが症例対照研究の最大の限界。つまり、「調整した交絡因子などの背景因子の影響については症例対照研究では評価できない」ということ。
2013-09-16 19:06:21これは、異なるバックグラウンドを有する人の間でリスクの大小を論じることはできない、ということ。つまり、性別、社会経済的状況が同じであったとしても5歳の子供と7歳の被曝量の異なる子供のリスクの大小については一般には論じることはできないことを意味する。
2013-09-16 19:06:51ただ、この論文の特徴として、1980~2006年に生まれた人口の小児白血病の「ほぼ全数」を症例として採用しているということ。つまり、各年齢の発症者の数は、各年齢の罹患率にほぼ比例すると考えてよいということ。
2013-09-16 19:07:11で、発症者の年齢ごとの分布を示しているSupplementary Table S7を見てみる。http://t.co/PR79UbBwUI 2歳をピークに発症者は減少している。
2013-09-16 19:08:00もし、「年間1mSvを被曝し続けたらリスクが上昇する」のであれば、2歳よりもより累積被曝線量が高い5歳の方が罹患率(≒発症者に比例)は高いはずだがそうなっていない。
2013-09-16 19:08:14