夢幻宿せし真珠の調 ○☆ 三日目 現世 →◎
【藍の淵に銀の泡】夢と漣は、とっても『仲良し』
──《仔》&アイズ・サブスティーア
過ぎ去りし事象は過去へと変わります。 思いを馳せる瞼の裏には情景が浮かびます。 『 』 幾度目かの感謝を伝った言葉は、空白に紛れて泡と消えておりました。
2015-06-26 10:11:10――夢は《仔》を抱いていました。同様の銀のぬくもりもなく、2人きりの空間で抱えていました。夢は揺り篭であり、箱庭であり、楽園であり、胎のように安らかな心地を与えて抱いておりました。 「――ねぇ、お嬢さん」 泡の跳ねる音と共に、夢の子は撫でながら話しかけました。
2015-06-26 10:12:59「なあに?」 ∟__応えは腕の中から在った。 ∟__二度目の光景が《夢》の前に在った。 ∟__寝台の上に横たえられた《娘》が居た。 「なあに。アイズ?」 ∟__《仔》は変わらず《夢》の腕の中に存在った。
2015-06-26 19:13:29「――私はあなたと共にある。お嬢さんの傍にいること。あなたが私を認識できなくなるまで、いつも傍にいてくれることが、願いを叶える条件」 それは少し前に話したことだった。自分をそばにおいてくれることが条件であると。 「けれど――そうだね。私はずっとずっと考えていたんだけど」
2015-06-26 22:03:00「あなたは突然歩けなくなった。あなたはずっと、ここにいる。あなたは――ママと私さえいれば良いといった」 ――水を染み渡らせるように穏やかな声でした。あなたの髪を撫でながら言葉を重ねます。 「私はもう少し"考えて"みた。私も考えてみたいと思った。皆と同じように悩んでみようと思った」
2015-06-26 22:03:44「ねぇ、お嬢さん。あらゆる世界を回るための足を欲しいとは思わない? もう1度様々な色を見てみたいとは思わない? 酸いも甘いを感知できる鼻を、口を――心を、その身体を」 さわ さわ ―――、 「ほしいとは思わない?」
2015-06-26 22:06:01「……アイズ?」 ∟__《仔》は《夢》の手を疑わない。 ∟__《仔》は《夢》に撫でられる心地を拒絶しない。 「アイズの。おねがいごと。ちゃんと。ちゃんと。するわ」 ∟__それであっても。 ∟__声音に浮かべたのは“焦燥”か。
2015-06-27 12:48:42「いろんなところ。いきたい。たくさんのいろも」 ∟__《仔》は訴う。 ∟__《娘》の横倒しの肉は鼓動以外に動かない。 ∟__精神と肉体の差は目のまま。 「でも。でもアイズが。いないのは。いや。ママがいないのも。いや」 ∟__胸元を握り思うのは恐れか。
2015-06-27 12:48:51「大丈夫――」 焦燥を抱えるなら、解きほぐしてあげないといけない。 甘やかすようあなたを撫でました。 それは、心の内に夢の子もまた抱えていたものですが。 ――幸せの定義は人それぞれ。《仔》の幸せがあれば、他の幸せもある。 けれどそれでも、もう少し欲張らせて欲しいのです。
2015-06-27 13:37:07肉は規則正しく動く音が聞こえる。身じろぐ挙動は見えません。 アイズ・サブスティーアはあなたという存在にもう一度触れてもらいたいと願う。傍にいてお話を聞くだけではない、もっとあなたと触れあいたい。 「大丈夫だよ、お嬢さん。私がママに会わせてあげる。私はずっとずっと傍にいてあげる」
2015-06-27 13:38:56「でもひとつ約束があってね。お嬢さんが眠るときにしか会わせられないの。ずっと傍にいてもママが眠れなくなるから、そしたら風邪を引いてしまうかもしれない」 だからあなたはママを"忘れないで"欲しい。そうすればずっと傍にいられるから。優しい言葉をかけてくれるし、お話もしてくれるのだから
2015-06-27 13:42:48「ほんとう?」 ∟__《仔》の手は《夢》の胸元を握っている。 「ほんとうに。だいじょうぶ?」 ∟__“焦燥”の気配は緩くなっていく。 ∟__消えはしないままではあったとしても。 ∟__何を“感じ取っている”のか。
2015-06-29 21:08:41「やくそく。アイズが。ママに。あわせてくれるなら。なんだって。するわ。できるわ」 ∟__《夢》の暖かさは変わらない。 ∟__《太陽》から享けた暖かさが内にある事も《仔》は理解っていた。 ∟__それでも《夢》を手放さない《仔》の手は欲かあるいは。
2015-06-29 21:08:48「ねむるときだけ。でも。ママにあえる。なら。でも。あえないのは。あっても。わすれちゃう。のは。いや。ゆめを。わすれるのは。いや」 ∟__《仔》は訴う。 「アイズ。アイズ。《うみ》は。どうしたら。いい? ちゃんと。ちゃんと。やくそく。まもる。から」
2015-06-29 21:08:55「本当に――。私を信じて」 夢は嘘を突けない。夢はすべてを映してしまう。答えられたことにも正直に答えなければなりません。 ただ、あなたがその奥で何を想うのかまでは、映せないのですが。
2015-06-30 00:20:17「うん、あなたは偉い子。あなたは良い子。聡明で素直で、純粋で。だからこそ愛おしい」 掴まれておりましたその手を握り返しました。暖かな色を映して、ほっと和らぐ心地。 あなたを包む胎《楽園》は、どこへと連れて行くのでしょうか
2015-06-30 00:20:52「あなたがただそう強く願うといい。あなたはこの場にいる。何かの行動を起こせるとは限らない」 何にせよ、夢が求めることは行動ではない。アイズ・サブスティーアという夢があなたのありのままを映せればそれで良い。 「あなたはただそう信じて眠りにつくといい。私にあなたの意思を教えて欲しい」
2015-06-30 00:21:33「ほんとう。ほんとうね?」 ∟__《夢》が手を重ねた手。 ∟__共の言葉とそのどちらにかあるいは両共にか。 ∟__浮いた安堵に《仔》の力は弛緩む。 「アイズが。アイズが。いうなら。しんじる。しんじるわ」 ∟__ほうと一息。 ∟__そうして笑む。
2015-06-30 15:52:55「なくなっちゃうのは。いやなのよ。たくさん。こんなに。おはなししたの。アイズが。はじめてだから」 ∟__赤子のままの精神[- 仔 -]は触れ合いを知らなかった。 ∟__“母”の“在る”眠りがそうだと信じて疑わない為に。 「たからね。もっと。もっと。いっしょにいたいの」
2015-06-30 15:53:03「だから。いっしょに。《行く》のよ」 ∟__藍色が緩慢細くなる。 ∟__弧を描いて笑みを象り伏せられる。 「きっと。たのしみ。って。いうのだわ」 ∟__何の歪みも疑念も無く。 ∟__《仔》の“内”に浮かび上がるのは。
2015-06-30 15:53:10“ 《仔》は草を知らない。 《仔》は花を知らない。 《仔》は雨を知らない。 《仔》は風を知らない。 天に雷撃が迸る事も氷が地面を穿つことも知りもしない。 ただ知るのは《夢》の中の風景だけ。 青く蒼く高く雲の沸き立つ透き通るような空の下____ ”
2015-06-30 15:53:17“ 己の脚で立ち両手を伸ばせば。 己の顔を上げ高いそこを見上げれば。 きっと遠い《太陽》にも近付く事が出来るだろうか。 ____《仔》は笑み念い冀う。 ”
2015-06-30 15:53:26「私もそう。こうして"長い時間"付き合うのは初めてだよ」 夢は自分というものが無かった。借り物の姿を映して、思い描かれた妄想を具現して。 この海へと訪れてから、僅かたりとも変わるものが確かにあった。 海にたゆたう《海》の子はなおも懇願した。
2015-06-30 19:37:33