応募は世界29か国から!理想のゲームが集まる「わたしのファミカセ展」主催者に話を聞いてみた

想像するだけでワクワクが止まらない
1

こちらの『モルック』というタイトルのファミコンカセットを見て欲しい。モルックは、比較的新しいスポーツのひとつだが、ファミコン本体が各家庭で楽しまれていたのは1980年代…一体どういうこと…!?

実はこのファミコンカセット、ラベルを個人がデザインした架空のもの。理想のファミコンゲームのラベルをデザインするというコンセプトの展示会『わたしのファミカセ展』にて、2022年度の人気投票1位に選ばれた作品なのだ。

『わたしのファミカセ展』はゲームグッズの販売や展示空間の提供などを行っている東京・西荻窪の「METEOR」が2005年から主催しており、毎年5月に開催。2023年度で19回目を迎える。2022年度は合計253本もの応募があり、世界29か国から174本、日本から79本の「ファミカセ」が集まったという。

作品エントリーは2023年3月1日から、展示は4月29日~5月30日

出品の際は自身のデザインしたソフトのストーリー・解説を書くことが必須で、展示の際のボディソフトの状態を「きれい・普通・汚い」から選択するなど、ファミコンカセットとしてのバックボーンを作り込むことも求められるという。そうした「ファミカセ」が集まった中から選ばれたのが先ほどの「モルック」(2022年度人気投票で1位)だったのだ。

ちなみに2021年度は、某雑貨店の雰囲気があるこちらのファミカセが1位だった。

応募された「ファミカセ」作品は西荻窪のMETEORにて展示される。また、過去に出品された全作品、人気投票1位の作品は『わたしのファミカセ展 クロニクル』のサイトで閲覧できるほか、図録に収録したものを同店舗で販売している。

過去の応募作品がほぼ原寸大で掲載された本

なぜこんなユニークな展示会を開催するのか。過去に話題となった作品の紹介なども織り交ぜて、主催のMETEOR(@meteor_club)スタッフに話を聞いてみた。

海外からの応募も多数、世界29か国から集まる

『わたしのファミカセ展』の開催までの経緯は?

2005年に友人数名とお店で「展示でもやりたいね」と雑談していました。その流れで偶然目にとまったファミカセが額縁にピッタリなんじゃないかと思いつき、その日のうちに知り合いのクリエイターにメールで声をかけたのが始まりです。

2010年までは一般参加はなく、招待作家のみの作品を展示していました。

ストーリーなど、細部の設定にまでこだわる理由を教えてください。

細部に魂が宿るといいますし、ストーリーもデザインとともにゲームを想像する上で大切な要素だと思っています。

英語のテキストであっても翻訳せず掲載することで、海外で作られたゲームの雰囲気をそのまま体験してもらえるようにしています。

カセットの状態については古いデザインを施した時によりリアリティが出るように選んでいただいています。

人気投票で1位となる作品は、どのような点で人気を集めたのでしょうか。

知名度のあるモチーフの選び方や、ファミコンのデザインフォーマットを巧みに利用している作品が人気になる傾向があります。昨年(2022年)からパロディやサンプリングは非推奨としたので、よりオリジナルな作品に注目が当たるとうれしいです。

2022年は香港とアメリカでも展示会をしましたが、それぞれ人気作品が違うのも面白いです。投票は会場に来た人に上位3作品を選んでいただき、結果を集計しています。

過去の開催で特に反響が大きかった作品を教えてください。

印象に残っているのは、継続してクオリティの高い作品を作ってくだるクリエーターの方々の作品です。

まだそれほど海外からの参加も少ない2014年から毎年参加してくれているチリ在住のJosé Salot(アーティスト名:PEPEGR∆PHI⦅@pepe_salot⦆)さんは、日本人以上に日本のことにとても詳しく、「オリンピックカーリング」や「ヨーグルトレディ」など魅力的な作品を多く残しています。

2015年にはチリからお店に遊びに来てくれました。

地球の裏側・チリから西荻窪へ…!
解説も日本語。2018年の作品
日常風景で既視感のあるヨーグルトレディ、日本文化への理解が深い。2019年の作品

同じく2014年から参加されているアメリカ在住のCory Schmitz(@CorySchmitz)さん。世界中のデザイナーが彼の洗練されたデザインに魅了されて、ファミカセ展に参加するきっかけとなったと感じます。一連のシリーズとして作品を作っているのですが、テーマも自然環境や未来を扱っていたり、デザインも含めて背筋が伸びる思いです。

3400年後の太陽系の物語。2021年の作品
シリーズ続編、世界をきれいに。2022年の作品。

初期の頃で言えばコラムニストとして雑誌「週刊ファミ通」にも連載していたブルボン小林(@bonkoba)さんの作品が印象深いです。ファミカセ展をアートとして世に広めていただいた恩人でもあります。タイトルや言葉選びのセンスがさすがです。また、ご本人がラベルに写真で登場する作品はありそうで少なく貴重です。

ブルボン小林氏、作品群
2コンマイクによるダジャレ入力で戦意を喪失させる…架空ゲームだからこそのトンデモ設定。2009年の作品
毎度の顔出し、いやにリアルな設定のゴルフゲーム。2010年の作品

今年の作品募集は3月1日から始まり、展示期間は4月29日から5月30日。応募作品が250本に達した時点で受付は終了するとのこと。2022年度は募集開始から10日ほどで応募枠が埋まったそうだ。

応募したい人も展示を見たい人も、詳細は「METEOR」が開設している『わたしのファミカセ展 2023』のサイトで情報を確認して欲しい。

記事中の画像付きツイートは許諾を得て使用しています。