スープが前菜だったとは…仏公認シェフが教える本場ブイヤベースの食べ方が目からウロコ

分かってはいても無限にスープをおかわりしそう…
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南フランスの港町・マルセイユの代表的な魚介料理「ブイヤベース」の本場での食べ方が、Twitterで投稿され反響を呼んでいる。

これが正しいブイヤベース…!

投稿したのは、南仏で「Maître Restaurateur(※)」の称号を冠したレストランを経営する日本人シェフのTakayuki KAMIYA(@Taka09KMY)さん。

マルセイユの高級レストランLa Calanque bleue(ラ・カランク・ブルー)とのランチコラボで作った本格的なブイヤベースについて、順を追って解説している。

※フランス政府が認定する高品質なフランス料理を提供するレストランに対して与えられる称号

1.まず地魚をプレゼンテーションする

氷の上に乗せられた地元の魚介類の数々を見せてくれる

2.魚を煮たスープにルイユ(ニンニクやサフラン入りのマヨネーズ)を添えたクルトンを浮かべ、スープを吸わせて食べる。おかわり自由で冷めたら替えてくれる

クルトンに熱々スープを吸わせて食べる

3.煮えた魚を見せた後にさばいてくれたものを、ジャガイモと一緒に食べる。スープもまだある。

スープの中で煮込まれ、味が染みこんだ魚介類

Twitterユーザーからは「ブイヤベースのお作法、知らんかった!」「この前菜スープのところで絶対食べすぎる自分の姿が見えます」などの声が上がっている。

マルセイユでは「ブイヤベース憲章」なるものが制定されており、KAMIYAさんによると次のような決まりがあるという。

・カサゴ、アンコウ、ホウボウ、マトウダイ、足長ガニなど憲章に記載された魚のうち4種類以上の具材を使う

・ジャガイモを入れて塩、コショウ、サフラン、フェンネルなどの調味料で味付けする

・伊勢エビなども入れてよいが、貝類や鯛、ヒラメ、オマール海老、タコ、イカは入れない

ブイヤベース憲章が作られた経緯や地元の南仏料理について、KAMIYAさんに詳しく聞いてみた。

偽物を作る店が乱立したため、ブイヤベース憲章が作られた

憲章に定められた食材はマルセイユでは常時手に入るものなのでしょうか?

基本的にマルセイユ近辺で常時手に入る食材です。むしろブイヤベースが有名になって、マルセイユ近辺で獲れない偽物の魚を入れる店が乱立したため「マルセイユで獲れる魚を使え」という目的で憲章が作られたのです。

地元の方たちは、ブイヤベースを全部食べ切れているのでしょうか?

まず磯の小魚を煮て漉したスープを前菜として食べます。ニンニクをこすりつけたクルトンにルイユをつけたものをスープに浮かべて、染み込ませて食べる感じです。おかわりし放題です。

そしてメインとしてスープで煮た魚とジャガイモに、さらにスープをかけて食べるというイメージです。 この2回サーブがブイヤベースの基本です。

このスープがルイユで味変できるので激うま無限状態となりますが、ここで飛ばすと後悔先に立たずで、メインの魚はおろかジャガイモなんてマジで入らなくなります。

たっぷりと鍋に入ったブイヤベースのスープ

キッチンから見ていましたが、食べきれてるおじいちゃん、おばあちゃんが結構いたので世界は広いです。僕はいつもデザート代わりにジャガイモを食べますが、一口食べた瞬間に限界が来ます。

ブイヤベースを出すレストランは、なぜかミルフィーユとかリンゴのタルトをデザートとして置いていることが多いのですが、マジで食べられません。それより散歩した方が良いです。

他にも日本人のイメージと異なる南仏料理はありますか?

日本で知られている料理で言えば「ニース風サラダ」ですね。 これは、フランス国内でもニース近辺以外は間違って作られています。

南仏人以外が知っているニース風サラダは、茹でたインゲンとジャガイモが入ってますが本物は入れません。主な材料は、ツナ、ゆで卵、アーティチョーク、ネギ(重要)、ラディッシュ、生そら豆(重要)、オリーブ、バジル、アンチョビ、トマトなどです。野菜は全て生で、これも重要です。

本場のニース風サラダ

ちょっとでも有名なシェフが、ジャガイモを入れたニース風サラダを作ろうものならSNSで吊し上げられます。 これも偽物が出回ってるため、ニース料理を守るアソシエーションと「ここは本物ですよ」という看板があります。

日本でも和食という文化を未来に残すため、ユネスコ無形文化財にするという活動がありましたが、ブイヤベースも本物を食べられるレストランが減っているという危機感から世界に向け動き出しています。

KAMIYAさんのTwitterアカウントでは、ご自身のレストランで作られた本格フランス料理などを日々ツイートしている。またブイヤベースの名店「ラ・カランク・ブルー」ともコラボし、日本でのプロモーションも行われることもあるそう。本場の味が気になる人は、ぜひフォローしてみては。

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