具も味も違うのに全部美味しい!日本のお雑煮5種を食べ比べ&お雑煮トークを聞いてきた

全然違うのに全部美味しい!
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「茅乃舎だし」等の和風調味料を販売する久原本家グループでは、2023年11月24日の「和食の日」に、お雑煮をテーマとした特設Webコンテンツ「お雑煮という奇跡」を公開。同日、お雑煮について語るトークライブとお雑煮の食べ比べ会が開かれた。

お雑煮といえば正月の定番料理だが、地域によってだし汁や具材、お餅の形にも違いがある。茅乃舎ではそんなお雑煮が和食を象徴する“奇跡の料理”と呼ぶにふさわしいと考えてこのコンテンツを作ったという。

お雑煮という奇跡」Webサイトより

関東・関西・博多など、5つの地域のお雑煮を食べ比べ

今回「お雑煮食べ比べ会」では関東・関西・博多・島根・新潟の5つの地域のお雑煮が用意された。それぞれ、お餅が入っている以外は具材もだし汁もまったく違う。メディア向けに用意された5種類のお雑煮がこちら。

(奥)出雲雑煮、関西雑煮(手前左から)鮭雑煮、博多雑煮、関東風雑煮

思えば、他の地域のお雑煮を食べられるなんて機会はめったにないのでありがたくいただくことにした。

5種類のお雑煮がそろった

まずは関東風雑煮から。東京出身の筆者は汁を飲んだ瞬間「ああ、一番よく知っている味だ」と感じた。中身は鶏肉や小松菜。家のお雑煮はこれに加えて筋子を入れていた。こういう小さなマイナーチェンジが発生するのもお雑煮ならではだ。

「関東風雑煮」かつおだしを使ったすまし汁に、なると、鶏肉と小松菜が具材

次に関西風雑煮。具材は人参と里芋。白味噌の甘さがたまらない。丸餅になっているのも新鮮味がある。東京に住んでいるとなかなか食べられない味だ。

白味噌はリピートしたくなる甘さ

「新潟風雑煮」は鮭といくらが具材。だしは煮干し。東日本では正月のお祝いに鮭が使われてきた。新巻鮭が新年の贈り物になっていることを思い出した。塩気が抜けた鮭がやたら美味しく、いくらの味が汁に残っているのもいいアクセントになっていた。

「出雲雑煮」は島根のもの。島根県出雲市の十六島周辺でとれる岩海苔が入っているのが大きな特徴。「すまし汁」とはこのことを言うのではと思うほどスッキリした味わいだった。

博多雑煮はあごだしを使った汁に、ブリとかつお菜と干し椎茸が入っている。これらがセットになっているからこその味わいで、どれも欠かせない具材だと思った。

右が博多雑煮
だしに使われているあごの干物と、干し椎茸
福岡の伝統野菜「かつお菜」。シャキっとした食感

この5種類の中でどれが一番美味しいか、などと言うのは野暮だろう。具材にはそれぞれの土地の特徴も現れているので、食べているだけでその土地に訪れたような気分が味わえた。

地域と家の味が現れるお雑煮

トークライブでは、お雑煮研究家の粕屋浩子さん、フードライターの白央篤司さん、料理家の長谷川あかりさんが登場。お雑煮の歴史の話、それぞれのお気に入りのお雑煮やオリジナルのお雑煮、日常の食事にお雑煮を取り入れることなどが語られた。

左から粕屋さん、白央さん、長谷川さん。右端は久原本家 茅乃舎の斎藤さん

粕屋さんはお雑煮の情報収集をするために住まいを移し、各地で聞き取り調査をする生活を送っている。現在の住まいは山形。そんな粕屋さんのお気に入り雑煮はあおさの入った「香川雑煮」、子供の頃から一番食べていたという、丸餅と牡蠣の入った「広島雑煮」だそう。

粕屋さんお気に入りのお雑煮。香川雑煮は餅の中に餡が入っている

粕屋さんが集落に行って聞き込みをしたところ、滋賀県米原市の七曲峠のところできれいに切り餅と丸餅とで分かれていた、という逸話も披露された。

長谷川あかりさんのお気に入り雑煮は何と「牛肉の雑煮」。長谷川さんの義理実家の祖母が作っていた完全にオリジナルのレシピで、牛肉以外の肉が食べられない家族のために作ったのが由来。最後に炙った牛肉をトッピングして食べるという。「家族の好みで変わっていくのがお雑煮の面白さなんですよね」と長谷川さん。

ありそうでなかった「牛肉」入りのお雑煮にトークゲストの皆さんも驚き顔

白央篤司さんが好きなのは、母方のルーツである新潟で食べていた「くるみ雑煮」。根菜などの入った汁にすり鉢ですり下ろしてペースト状になったくるみをかけて食べる。くるみはコクのある味だそうで、今でも毎年作っているという。

白いのがくるみのペースト

ちなみに白央さんは毎年1月1日にX(Twitter)で「みなさんのお雑煮を見せてくださいませんか」と投稿しており、「#わが家のお雑煮」とついた投稿をたどると、日本全国のお雑煮の情報がわかる。同じ地域でも具材が少しずつ違っていて興味深い。

そんな中「母や祖母が作ったお雑煮が好きだったけど、亡くなって作ってもらえなくなったので作り方を習っておけばよかった」という声もあるという。「作っているところを1回でもいいから見ておいて欲しい。お雑煮には親や祖父母を思い出させる力がある」と話していた。

お雑煮は具沢山で食べる地域もあれば、具材はなくお餅だけ、葉物だけというところもあるという。さらには家庭ごとのアレンジも存在しており、大きな違いがあるのに、名は「お雑煮」で統一されているという不思議な食べ物。あらためてお雑煮という料理の幅の広さを感じられたイベントだった。

茅乃舎では12月上旬から「お雑煮の出しとつゆ」などお正月の限定商品を発売する。また、年末年始の期間、全国の茅乃舎の店舗で関東風雑煮と博多雑煮の試食がふるまわれる。実施日時や店舗についての詳細は茅乃舎のWebサイトを確認して欲しい。